時をかけた、恋泥棒

むらさ樹

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時をかけた

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「───あ、まただ」



休憩を取ろうと、研究室を出てコーヒーを飲みに行こうとした時だ。

ドアノブに、缶コーヒーと一緒に小さなメッセージカードが袋に入れて吊るしてあった。


カードの内容は見なくてもわかる。
だってもう、何度となくもらってきたから。




「やぁ、君も休憩に行くところかい?」

「ぁ、先生」



ちょうど廊下で顔を合わせたのは、この研究所の所長も兼任している先生だ。

私よりひとまわり年上で、知識も経験も長くとても尊敬している。




「おや、君は差し入れがあるのか。
じゃあ俺は、向こうでコーヒーでも淹れてくるかな」

「ま 待ってください!
私もご一緒します」

「ん? だけど……」

「…あぁ、これはいいんです。
ほら、行きましょう先生」



私は缶コーヒーとメッセージカードの入った袋をノブにそのまま吊るしておくと、先生と一緒に給湯室へ向かった。







「研究の方は、進んでるかい?」


熱いコーヒーを口にしながら、先生は私に言った。



「それが……もう少しなんですけど、なかなか成功しなくて」



給湯室には誰もいなくて、いま先生とふたりきり。

他の研究生や生徒たちは、まだ授業や実習の時間かな。




「ふふっ、でも君なら必ず成功させるよ」


「もう先生ったら、根拠のない事を軽々しく言わないで下さいよぉ」


「軽々しくだなんて、俺は本当の事を言ってるんだけど」


「先生、タイムスリップはまだ誰も解明してないんですよ!
……でもあと少しで、時間移動の方法が閃きそうなんだけどなぁ」


「………」



私がここで引き込もって研究してるのは、タイムマシンを造る為。

過去に戻ってやり直したいとか、未来に行って先の自分を見たいとか、誰だってそんな夢があるじゃない?

科学の力で、それができないかなってずっと研究を続けているの。



「……そういえば、さっきの差し入れだけど。
いいのかい? せっかく誰かが用意してくれてただろうに」


「あぁ、あれは…」



いつも私の休憩時間に合わせて、ああやってアピールしてくる生徒がいるのだ。

私よりもひとまわり年下で、まだまだ経験も浅い男の子。

ここには年の近い女の子だっているのに、どうして私みたいな女がいいのかしらね。




「気にしないでください。私は研究か、……先生みたいな人しか興味ないんですから」


男性とのお付き合いもなく、ずっと研究室にこもりっぱなしの毎日。

恋愛なんてする気もないから、どんなにこの男の子がモーションかけたって、気にもしてないんだけどね。



……でも先生の魅力に気付いてからは、胸のドキドキを覚えるようになったの。

私も、いつか先生に認めてもらえるような女になりたい。

だから、まだ誰も解明されてない時間移動を私が────



「……へえ?
俺みたいな男には、興味あるの?」


「あっ、ええと、その……っ///」



まさかそこに食いついてくるとは思わなく、ニタリと顔を覗きこませる先生に言葉が詰まってしまった。

あああ、顔がみるみる熱くなってくるのは、淹れたてのコーヒーのせいじゃない!




「君は、俺のどんなところに興味あるんだい?」


「やっ//
もぉ先生ったら、その話やめましょー!
ほら、コーヒー冷めちゃう///」


「コーヒーなら、もう飲み干しちゃったよ」



まだ私の手の中で湯気の立ち込める熱々のコーヒー。

本当は猫舌だから、コーヒーなんて早く飲めない。
でも先生と一緒にいたいから、わざと飲めるふりしてるだけ。


だから────


「──────ん っ、ふぁ…っ」



急に塞がれた唇に、息も同時に止まった。


何が起きたのかわからなくて目をパチパチさせるのだけど、目の前には先生の顔しか映らないの。




時間と共にようやく息が吸えたのか、先生からコーヒーの香りが伝わった。




「…ふぅん、研究熱心な君から、こんな甘い声を聞けるとは思わなかったな」


「せ 先生…っ///」


「俺も、君にとても興味があるよ。
俺の手で女になっていく、君に───」


「や……ぁっ///」





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