叶わないと思っていたのに〜人見知り令嬢は初恋の公爵令息に溺愛される〜

水無月瑠璃

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後日談…④





無事に終えたヴィオラの手を綺麗に拭くとアルフレッドは「気持ち良かった、ありがとうな」と微笑みながらまたキスしてくれて、我慢出来なくなったヴィオラは彼の首に腕を回して縋りつき、自分から舌を絡めた。譫言のように「アル、好き…」とアルフレッドへの愛しさが溢れ、彼もまた「俺も好きだ」と返してくれる。

くっつきながら、これからのことを少しだけ話した。卒業を機に邸を出て、公爵家所有のアルフレッド名義の小さな邸に引っ越す予定だということ。暫くは引っ越しや出仕の準備で忙しく、会う時間を作るのは難しいが手紙は出すから心配しないで欲しいということ。

「…もっと早くに告っておけば良かった…そしたら学園でもイチャつけたのに」

アルフレッドはヴィオラを後ろから掻き抱く。彼は卒業パーティーまで気持ちを告げなかったことを後悔してるようだった。確かに在学中に恋人になっていれば、学生時代の沢山の思い出を作れただろう。だがヴィオラは「もしもの未来」に未練は無い。

「これから、幾らでも思い出作れるじゃ無いですか」

「…それもそうだな。よし、落ち着いたら旅行にでも行くか」

何処がいいか、いっそ他国に足を伸ばしてみるかと話していると、慣れないことをした疲れていたヴィオラは、喜びに満たされたままゆっくりと眠りの世界へ誘われていった。



「おやすみヴィオラ…俺のこと好きになってくれてありがとう、絶対幸せにするからな」

そんなアルフレッドの呟きはヴィオラの耳には入らなかったけど、良い夢でも見てるのかフニャフニャと笑うヴィオラに寝顔を堪能すると、名残惜しそうに客間から出て行った。




朝目を覚ますと、当然アルフレッドは居らず一瞬夢だったのかとぼんやりするヴィオラ。寝惚けてネグリジェの胸元を引っ張り、そこに残された無数の赤い花弁を見た瞬間寝起きの頭が一気に覚醒し、枕に顔を埋めてうーうー、唸りながら悶える羽目になったのだった。そして身支度を手伝ってくれたメイドに赤い痕を見られ、居た堪れない気持ちのまま食堂に案内された。

そして先に来ていたアルフレッドに挨拶をされるも、「お、おはようございます…」と余所余所しい態度になってしまい、その場に居た公爵夫妻や次期公爵の冷ややかな目がアルフレッドに向けられたのだが、本人は歯牙にも掛けずに飄々としていた。

「貴方はもっと忍耐力がある思ってたわ。発情期の猿の方がまだマシでは無いの?」

朝食後、肩をすくめた公爵夫人の言葉をアルフレッドは涼しい顔で聞き流していて、その態度に夫人のお小言が増えていたようだった。

その後馬車で伯爵邸まで送ってもらい、アルフレッドとはそれ以来会ってないが本人の宣言通り手紙のやり取りを始めている。便箋にびっしりとヴィオラの何処が好きか、どれだけ可愛いかを書き綴るので読むたびにヴィオラが机に突っ伏す羽目になる事は本人しか知らない。




**************



「ヴィオラ、本当に大丈夫?顔真っ赤よ」

「だ、大丈夫大丈夫」

あの日のことを細部まで思い出してしまい、下腹部が疼く。自分の身体がいやらしいものに変わってしまった気がする。そんなヴィオラを見たメアリーは口元に手をやり、考え出す。暫くするとこう切り出した。

「…ハウザー様って絶対淡白だと思ってたけど、寧ろ逆…?いやヴィオラ限定で情熱的なの…」

「黙秘します…」

「それもう答え言ってるわよ。怖いもの見たさでそんなハウザー様見てみたいけど、絶対無理そうよねぇ」



メアリーの願いは思いの外早く叶う事になる。アルフレッドがヴィオラを伴って出席した王城での夜会。氷の貴公子と不名誉な渾名が広まっていたアルフレッドがヴィオラにのみ向ける甘い表情に「誰アレ」「同じ顔の別人?」「頭打った?」と出席した貴族令息達は困惑した。

かつてアルフレッドに突撃し玉砕した令嬢達があまりの変貌ぶりに呆然とし、悔し涙を流したのだがアルフレッドとヴィオラは知る由もなかった。




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