期間限定の関係のはずでは?〜傷心旅行に来たら美形店長に溺愛されてます〜

水無月瑠璃

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15話

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自宅のマンションに案内されると花村はまず、お茶を出してくれると言いコーヒーか紅茶か選択肢を出され、紅茶を選んだ。ちらっとキッチンを覗かせてもらうと喫茶店を経営してる両親が住んでいることもあり、ストックしている茶葉やコーヒーの種類が多いように見える。当たり前だが花村の淹れてくれたアイスティーは絶品であった。本来ならお金を払わないといけないのに、と変なところで罪悪感が芽生える。

しかし、美味しそうに飲む葉月を見て興が乗ったのか別の茶葉でもお茶を淹れてくれたので細いことは気にならなくなった。両親不在中は花村が留守を守っているので、結構好きに茶葉や食材を使っているらしい。飲みながら、花村は前の家にあった自分の私物は1人暮らしをしているマンションに運び込むか、潔く処分してしまったのでこっちの部屋は殺風景なのだと、教えてくれる。

(どんな部屋なんだろう…見たい)

異性の部屋は元彼の部屋しか行ったことがない。男友達も居ない訳ではないが部屋に行く程親しくはないし、ずっと元彼と付き合っていたから友達とはいえ異性の部屋に行くことは憚られたからだ。

(ああ、そういうところも真面目で面白みが無かったのかも…)

と、またネガティブな思考に引っ張られそうになる。いけない、と無理矢理気持ちを切り替えた。

(部屋見たいですって言って良いかな?馴れ馴れしいって引かれない?)

こういう関係が初めてのため、何処まで強請っていいのか線引きが分からない。もし「何だよこいつ彼女気取りかよ」と花村から冷ややかな目で見られたら即逃亡する無駄な自信があった。葉月は妙なところで思い切りが良い。

(いや、優吾さんはそんなことしない…するとしたら元彼あいつの方…)

奴への怒りが葉月の中に再燃する。そしてその怒りが皮肉にも葉月の背中を押してくれた。真面目という自分の分厚い殻を破るのである。一度誘えたのだから、部屋を見たいと強請ることくらい簡単である、と。緊張で乾いた喉をアイスティーを一口飲むと、思い切って口を開く。

「あの優吾さん、お部屋を見せていただくことは…」

「ん?良いけど、本当に何もないですよ。ベッドの下にいかがわしい本も隠してないし」

あっさりと承諾されて拍子抜けすると共に、後半の彼の言葉に思わず笑ってしまった。

「いかっ…!え?隠しているものなんですか、男性って」

葉月は男子がベッドの下にいかがわしい本を隠しているのは都市伝説だと思っていたので、彼の言葉は緊張を和らげてくれる程の衝撃だった。

「大学生くらいまでなら充分あり得ますね。流石に社会人になってからだと少数でしょう。ちなみに俺も人並みにそういう本を所持していた時期はあります…イメージと違いました?」

「いえそんな!なんと言いますか…ギャップはありましたけど新しい一面を知れてラッキーだなって」

自分の返しが適切だったか不安だった葉月は、あはは、と曖昧にはにかんだ。すると花村は徐に立ち上がると葉月の側に来るとその手を取り、立たせる。そのまま無言で葉月の手を引くとリビングを出て行く。訳も分からずついて行くとあるドアの前で止まる。リビングに案内された時通り過ぎたドアだ。

「ここ、俺の部屋です」

ドアを開け、入るよう促されたので小声で「お邪魔します」と告げる。足を踏み入れた彼の部屋は本人の自己申告の通り、ベッド、机にテーブル、壁側に本棚が設置されているくらいで物が余り無く葉月が薄らと想像していた花村の部屋と相違無かった。キョロキョロと部屋を見渡していた時だった。急に身を屈めてきた花村がキスをしてきた。直ぐに舌が入り込んで来て、あっという間に身体から力が抜け甘く痺れていく。 

「んんっ…!あっ…」

口の中にさっき飲んでいたアイスティーの風味が広がる。同じものを飲んだのだから当たり前だけど。ついさっきまでいかがわしい本を隠していたかという、くだらない話をしていたはずなのに。もうそういう雰囲気に変わっている。口付けを交わす2人はそのままベッドにもつれ込み、花村は葉月に覆い被さった。

「…もう少し経ってからにするつもりだったんですけどね、あそこで笑うのは反則ですよ葉月さん」

「はい?」

こちらに非があるような言い方をされ、思い当たる節がなくて首を傾げる。が、そんな些細なことを気にしている余裕は無くなった。花村は一昨日以上に情熱的に迫って来たからだ。

「ここ、ぐっちゃぐちゃですよ、ほら指3本も一気に飲み込んでるの分かります?」

「何故でしょうね、俺ノーマルだったはずなのに葉月さんを抱いていると啼かせたくて仕方なくなるんですよ」

「嫌って言う割に、腰押し付けてますよ?蜜が溢れてビチョビチョなここ、もっと舐めて欲しいってことでしょ。本当素直じゃないのに身体は正直ですね、葉月さん」

「後ろからの方が絞まりますよね、後ろから犯されてた方が好きなんでしょ?…顔が見えないのが嫌だ?…ったく、明日足腰立たなくなっても知らねえからな」

散々言葉でも指でも、舌でも責め立てられた。涙と涎でぐちゃぐちゃになった葉月を後ろから貫いていた花村はひっくり返すと、また心底興奮した様子で腰を打ちつけてくる。グイ、と顔を近づけて来た花村の目はギラついていてた。粗暴な口調と相俟って本当に食べられるのではないか、と錯覚してしまいそうな程迫力があり肌がビリビリと痺れる。それでも、不思議と怖くは無かった。

…葉月の中で「花村ドS疑惑」が確信に変わった瞬間でもあった。

流石にセーブした花村が2で終わらせてくれた後、裸でくっついて彼のベッドで寛いでいる。花村は葉月の髪を指で梳いており、「何か恋人っぽい…!」と葉月は内心興奮していた。そのせいで調子に乗っていた葉月は図々しいお願いを口にしてしまった。

「…あの、優吾さん敬語で話しますよね」

「そうですね。あ、もしかして堅苦しくて落ち着かなかったですか」

「いえ、そうではなく…たまーに砕けた口調で話されるじゃないですか…何か…良いな、と」

たまに、とは当然身体を重ねた時のこと。言っちゃった、と葉月は布団に顔を埋めた。

「…敬語で話していたのは知り合って間もない男に馴れ馴れしくされるのは嫌かと思ったからです。それに、俺割と口悪いんですよ。でも葉月さんが敬語じゃなくて良いのなら、タメ口で話しますよ」

「ぜ、是非」

口の悪い花村が見たいという欲望に突き動かされて、いつにもなく積極的にいけた自分が怖い、と葉月は自分に慄いていた。

「そうだ、折角だから名前。呼び捨てにしても良い?」

さらりと敬語を外してくる花村。そしてナチュラルに名前呼びの許可を求めてきた。

「はい、是非!」

語彙力のない葉月は同じ返ししか出来ない。というか返事のノリが友達とご飯に行くとか、そういった時と同じだった。色気の欠片もない。花村は前のめりで承諾した葉月の頬にそっと触れ、ごつごつした指で優しく撫でる。細められた瞳に見つめられドキン、と心臓が高鳴った。

「じゃあ、葉月…改めて。よろしく」

「…はい」

今日は木曜、帰るのは月曜。今日を除けば後4日しかない。残り少ない日々を心に刻みたい、と葉月は思った。

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