34 / 34
番外編 下僕、出産に立ち会う(挿絵あり)
しおりを挟む
長岡更紗さまから頂いたベスのイラストからのSSです。
作者という、メタ要素ありです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あっちー」
さんさんと日差しが照りつける畑で。ベスはダイコ片手に空を見上げた。雨期も明けての快晴。青い空が目に眩しく、熱を持った太陽光が肌を焼く。
シャツはとっくに脱ぎ捨てた後。面倒臭いので裸の上半身を伝う汗を拭いもしない。どうせ拭いても流れるのだから一緒だ。
「何で夏なのにダイコが穫れんだ?」
本来、ダイコという野菜は冬に穫れる。
「ふん。作者の誕生日だからな」
同じくダイコの収穫をしているサナトから、予想外の答えがきた。
サナトの方はベスと違い、きっちりと農作業用のつなぎを着込み、軍手と長靴、農帽までかぶっている。サナトいわく『農業には正装で臨まねば』とのことで、一度なぜか真冬に脱いだことがあったものの、基本はこのスタイルを崩さない。
「え? 誕生日? 誰の?」
『サクシャ』という聞きなれない名前に、ベスは首をひねった。
イラスト 長岡更紗さま
狭い田舎町である。住んでいる人間の数も戸数も少ない。加えてベスは農具屋のせがれ。半数以上が農家というこの町で、知らない人間はいないが、サクシャという人間は知らない。
「阿呆は深く考えなくてよい。一部だけが知っていることだがな。作者と言えばダイコ。ダイコといえば作者なのだ」
聞き返すと、小馬鹿にしたような冷たい視線が返ってきた。しかもさっぱり意味が分からない。腹立つ。
分からないのはベスがアホだからじゃない。サナトの説明が悪いのだ。
しかし反論はやめておいた。これ以上の口ごたえはヤバい。鉄拳が飛んでくるか、指輪を締められるか、肥溜めに落とされるの三択になる。どれも嫌だ。
決して、サナトの言っていることの半分も理解できない、馬鹿だからじゃない。
「ま、細かいことはどうでもいーや。さっさと収穫しちまおうぜ」
考えても仕方のないことは考えない主義である。ベスは土に埋まるダイコの葉の根元を両手で持つと、スポスポと次々引き抜いていく。
「言われずとも。ダイコの収穫だぞ!? こんな役得があるか。ああ、この青々とした葉と白く真っ直ぐに太ったダイコのなんと美しいことよ」
流れ作業で抜くベスに対して、サナトは一本抜くごとにダイコに見とれ、黒い切れ長の目をキラキラさせている。キショい。
ちなみに畑はベスのものでも、サナトがレンタルしているリベラの畑でもない。東の国から移住してきた夫妻の畑である。
兼業農家の旦那は、急な出張で昨日から隣町に行っている。今日の夕方には戻るのだが、市場には毎日ダイコを卸しているため、今日の分の収穫を旦那に頼まれたのだ。
もちろん、報酬は貰う。そしてその報酬はカジノで有意義に使う予定だ。夫妻の事情から少し多めに報酬を貰えたので、ベスはほくほくである。
「ったく、ちんたらしてんなよぉ。俺が抜いちまうぞ」
早く済ませてカジノに行きたい。ベスは最初に決めていた自分の収穫区画から、サナトの収穫区画にあるダイコに手を伸ばそうとした。途端に。
「触れるでないわ」
「ぐぉおおおおおおっ。痛ぇっ、ギブギブ!」
ベスにはめられた隷属の指輪が締まった。
「いいか。貴重なダイコの収穫は一本たりとも譲らん!」
「へいへい。頑張れよー。じゃ、俺はダイコ洗っとくから」
ビシッと指を突き付けて宣言するサナトに、ベスはひらひらと手を振った。抜いたダイコを用水路に持っていき、洗い始めると、またサナトが騒ぐ。
「何っ!? 待て。それも捨てがたいっ」
「面倒臭ぇな! だったらさっさと収穫しちまえよ!」
これだから畑狂いの変態野郎は。一人より二人の方が早く終わるだろうと、畑仕事ラブのサナトに声をかけたのが、失敗だった。野菜愛が強すぎて面倒臭い。
「待っておれ。秒で片付ける」
流石は魔王あらため、畑魔王。慈しむような視線と手つきながら、高速でダイコを抜いていく。やっぱり変態だ。
「どうだ! 終わらせたぞ! 残りのダイコ洗いは私の仕事だ」
「……あ、そう……好きにしろよ……」
ドン引きのベスなどなんのその。サナトは受け取ったダイコを上機嫌に洗い始める。こうなってしまえばベスの仕事はない。手持ち無沙汰になったベスは、シュタッと手を上げた。
「よしっ、じゃあ後はお前に任せた! 俺はちょっくら別の仕事に行ってくらぁ!」
別の仕事とはもちろんカジノだ。報酬は前払いでもらってある。それを元手に倍以上に増やそう。うん、立派な仕事だ。
「ほどほどにしておくのだぞ」
ベスのいう別の仕事が何かを察したサナトが、黒い瞳を金色に光らせた。震えあがりそうな眼光だが、ギャンブルを前にしたベスには効きはしない。
「ほどほど? てめぇ、サナト。仕事にほどほどもくそもあるかぁ? お前、畑仕事に手を抜けんのかよ?」
「ぬ」
腰に手を当てて指摘すると、逆に気圧されたサナトが口をつぐんだ。
「ということで、お互いベストを尽くそうぜぇ」
サナトを丸め込むことに成功したベスは、へらっとした笑みに戻すと、今度こそカジノに向かった。
のではなく。
「ハルカさん!? 何でいるんすか!」
カジノに向かおうとして、いつの間にかいたハルカに突っ込みを入れていた。
「こんにちは、ベスさん。何でって、ちょっと晩ご飯用のダイコを抜きに来たんだけど」
そう言ったハルカの両手には、既にダイコが一本ずつ握られている。その背には男の子が背負われていた。
「抜きに来たってか、もう抜いてる! いや、そうじゃなくて、あんた臨月っしょ! 重いもん持ったら駄目じゃないっすか!」
そう。それこそ、ハルカの旦那がベスにダイコの収穫を依頼してきた理由。ハルカは身重で、しかもいつ生まれてもおかしくない臨月なのだ。
「えー。ダイコくらい重くないって」
「いや、ダイコも二本だとそれなりに重いけど、背中! 背中の子、何キロっすか?」
騒ぐベスが珍しいらしい。大きなお腹を屈めてにこにこと笑うハルカの背で、息子がくりくりとした目でベスを眺めていた。
ベスの記憶ではこの子はカナタという名で三歳。体重は十キロ以上あるはずだ。
「十三キロ」
「重いじゃないっすか!」
平然と答えるハルカ。やっぱり重い。
「平気平気。ほら、持ってない。おんぶだし」
「そういう問題!? 違うっすよね? いやそもそも臨月でうろうろして、陣痛きたらどうするんっすか」
「まだ予定日より二週間早いし、大丈夫よー」
「あああ。旦那さんがやけに心配してた理由がよく分かったぁ」
くれぐれもハルカを畑に出さないよう、何度も念を押された理由を体感したベスは、思わず脱力した。
「大丈夫?……ッ」
ハルカの背中からカナタに小さな手でポンポンと肩を叩かれ、疲れさせた本人から心配されたのだが。途中でハルカが動きを止めた。
「ハルカさん?」
嫌な予感がする。ベスは恐る恐るハルカの名を呼んだ。
「……陣痛きた」
「うわぁぁぁぁああああっ、やっぱりぃいいいっ!!」
予感的中である。ベスは頭を抱えて悲鳴を上げた。
「何を騒いでおるのだ、この阿呆は。ハルカ殿? どうされた」
「サナト!! 陣痛だ! 陣痛が来ちまった」
ダイコを洗い終わってやってきたサナトに訴える。しかしサナトは蒼白い顔を困惑にゆがめた。
「ぬう。陣痛とは何だ」
そうだった。こいつは魔族で人間のことはさっぱりだ。使えねぇ!
「これから子供が生まれる合図だよ! 腹の中から赤ん坊が出てくるんだっ」
「何ッ! それはどうなるのだ。どうしたらいいのだ」
「分からねぇっ」
「何だと、役立たずめ」
「おめーもだろ!」
男二人、ぎゃあぎゃあと喚くばかりで何も進まない。
「治まった。帰るわ」
突然、ハルカがすたすたと歩き始めた。サナトとベスは顔を見合わせてから、慌ててハルカについていく。
「転移魔法で……いや、瘴気を封じているのだった。ハルカ殿。家まで私が背負おう」
サナトもテンパっているらしい。
いくら速足で歩いているとはいえ、女の足だ。サナトなら余裕でついていけるはずなのに、なぜか駆け足のような恰好でハルカの側をうろうろしている。
「このお腹で背負われたら、お腹の赤ちゃんが潰れちゃいます。大丈夫。陣痛が始まったからってすぐ産まれるわけじゃないです。この調子なら夕方か夜です。陣痛もずっとじゃないですから、来てない時は動けます。それより、産婆さん呼んできてくれません?」
ハルカが足を止めずに早口で説明する。
「産婆だな。分かった。他には?」
「あの、出来れば隣町に行った主人を呼んでもらえないですか?」
「うぬ。お安い御用だ。行ってくる」
鷹揚に頷いた瞬間、サナトの姿が消えた。ように見えた。
実際には高速で走り出したため、視界から一瞬で消えただけ。少し視線をずらせば、農道を物凄い勢いで遠ざかるサナトの後ろ姿があった。
それを見送ってから、ベスははっとなった。そういえばハルカは息子を背負い、ダイコを両手にぶら下げたまま歩いている。
「ちょっとっ、ダイコは置いて行きましょうっすよ」
「駄目よ。今晩のおかずなんだから」
「今からご飯作るつもりなんっすかぁっ!?」
素っ頓狂な声が出たのは仕方ない。どうなってんだ、この人は。
「だからすぐ産まれないって……!」
急にハルカが足を止めた。陣痛がきたらしい。
「せめて俺が持つっす。あとカナタも俺が背負うっす」
ハルカの背中からカナタを抱き上げる。が。
「ヤダ!」
「今お母さん大変なんだって。な? ちょっとだけこっちにこい」
「ヤダヤダヤダヤダッ!」
三歳児のヤダヤダ攻撃に撃沈。引き離そうとすればするほど、ぎゅっとしがみついて離れようとしない。
「治まった」
そうこうしているうちに、ハルカが復活した。またすたすたと歩き始める。
「マジっすかっ。せ、せめてダイコだけは持つっす!」
なんとかダイコだけは引き受け、陣痛で止まってはまた歩くを繰り返し、家までたどり着いた。
ハルカは宣言通り、本当にダイコを料理した。その後カナタと積み木遊びをしている最中、サナトが産婆を連れてきた。
やってきたサナトはハルカの旦那を呼ぶため、すぐにまた出て行った。ベスは産婆の言う通りに湯を沸かし、落ち着かない気持ちでカナタの遊び相手になったりしていた。
しかしハルカは余裕。産婆さんの診察を受け、皆一緒に晩御飯を食べ、カナタと風呂にまで入った。
「色々信じられねぇ」
風呂に入っている間、ベスはぐったりと居間の床に寝そべった。ハルカの家は出身の東の国にならって、タタミというものが敷かれている。そのため土足厳禁なものの、こうやって寝そべることが出来るのだ。
「まだ本番前に部外者のあんたが疲れてどうする」
「そうなんだけどよぉ」
くすくすと笑い混じりに産婆がベスに茶を差し出した。ベスは上半身を少し起こした、だらんとだらけたまま姿勢で受け取っものの、茶が喉を通らない。
妊婦とはもっと大事に大事にするものではないのだろうか。出産とは恐ろしく大変なことではないのか。なのにあの落ち着きよう。こっちが心配になってくる。
「ま、ここまでのんびりとした妊婦も珍しいからね。周りの方が気が気じゃないさね」
「だろ! ほんっと信じられねぇ」
産婆に肯定してもらい、少し気分が楽になったベスはぐいっと茶を流し込んだ。
「こんばんは。手伝いに来たよ」
「ハルカちゃん、生れるんだって?」
そこへ手伝いに近所のおばさんたちもやってきて、人が増えたことにより幾分か気が楽になった。
しかししばらくして、また心配になってきた。
「なんか、遅くないっすか」
「確かに時間がかかってはいるね」
中々風呂から出てこないハルカに産婆とヤキモキしていると、やっと出てきた。しかしちょっと顔が強張っている。額に滲む汗も風呂上りの汗ではなく、脂汗のような。
「大丈夫っすか?」
「……強いやつきた」
「本番だね」
マジかっ。どうする、どうする。
頭の中が真っ白のベスは右往左往。おばさんたちに邪魔だと言われ、産屋にしている寝室から追い出された。
「ハルカ!」
玄関の扉が勢いよく開き、ハルカの旦那が帰ってきた。その後ろからサナトも入ってくる。旦那だけ寝室に入ることを許され、サナトと二人だけ居間に残された。
寝室からはハルカを励ます産婆とおばさんの声。ハルカの唸り声が時々聞こえる。それが何時間も続いたのだが、ベスには何日にも及んだように思えた。
ただただ母子の無事を祈るしか出来ない。それだけの時間。とても座っていられず、ベスはうろうろと歩いていた。普段なら怒るサナトも、黙って腕組みをして突っ立っているだけだ。
やがて力のこもったハルカの叫び声が数回。
わあっという歓声と、歓声に負けない赤子の泣き声。
「う、産まれた……」
すとん、と力が抜けてベスはその場に尻餅を着いた。勝手に溢れた涙が滝のように頬を流れる。ついでに鼻水も盛大に垂れた。
「汚い」
「ぞんなごと言っでもよぉぉ」
短い一言と共にタオルが顔めがけて飛んできた。そのまま顔面で受け止め、チーン! と鼻をかむ。
「本当にありがとうございました。あの、良かったら抱いてやってください」
やっと涙が流れなくなったころ、赤ん坊を抱いた旦那がベスの前にやってきた。
「いいんすか?」
「ぜひ」
布にしっかりとくるまれた赤ん坊を恐る恐る腕に収める。首もすわっていない赤ん坊を抱くのは初めてで怖い。
腕の中の赤ん坊は、赤くてしわくちゃで小さくて頼りない。軽いのに、ずっしりとした、確かな命。
「すげぇ……」
それ以上の言葉が出てこず、代わりにまた涙と鼻水が出た。
数日後。ベスは旦那から家事代行を引き受けた。
遠い東の国から移住した夫妻には、頼れる両親が近くにいない。幸い、ベスは掃除洗濯、料理は一通りできる。それに加えてすぐに動こうとするハルカのお目付け役も兼ねていた。
一ケ月ほど家事代行をやり、さらに月日が経って。ハルカのお腹に三人目が出来た。
「この子が生まれるのはスイカの季節ね」
お腹をさするハルカの口から出た野菜の名に、ベスを含めて周囲は震えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
生れるのがスイカの季節。
つまり、臨月で今度はスイカを持って帰る気満々なのでしたw
これで本編、番外編含めて、完結です。
ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました!
作者という、メタ要素ありです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あっちー」
さんさんと日差しが照りつける畑で。ベスはダイコ片手に空を見上げた。雨期も明けての快晴。青い空が目に眩しく、熱を持った太陽光が肌を焼く。
シャツはとっくに脱ぎ捨てた後。面倒臭いので裸の上半身を伝う汗を拭いもしない。どうせ拭いても流れるのだから一緒だ。
「何で夏なのにダイコが穫れんだ?」
本来、ダイコという野菜は冬に穫れる。
「ふん。作者の誕生日だからな」
同じくダイコの収穫をしているサナトから、予想外の答えがきた。
サナトの方はベスと違い、きっちりと農作業用のつなぎを着込み、軍手と長靴、農帽までかぶっている。サナトいわく『農業には正装で臨まねば』とのことで、一度なぜか真冬に脱いだことがあったものの、基本はこのスタイルを崩さない。
「え? 誕生日? 誰の?」
『サクシャ』という聞きなれない名前に、ベスは首をひねった。
イラスト 長岡更紗さま
狭い田舎町である。住んでいる人間の数も戸数も少ない。加えてベスは農具屋のせがれ。半数以上が農家というこの町で、知らない人間はいないが、サクシャという人間は知らない。
「阿呆は深く考えなくてよい。一部だけが知っていることだがな。作者と言えばダイコ。ダイコといえば作者なのだ」
聞き返すと、小馬鹿にしたような冷たい視線が返ってきた。しかもさっぱり意味が分からない。腹立つ。
分からないのはベスがアホだからじゃない。サナトの説明が悪いのだ。
しかし反論はやめておいた。これ以上の口ごたえはヤバい。鉄拳が飛んでくるか、指輪を締められるか、肥溜めに落とされるの三択になる。どれも嫌だ。
決して、サナトの言っていることの半分も理解できない、馬鹿だからじゃない。
「ま、細かいことはどうでもいーや。さっさと収穫しちまおうぜ」
考えても仕方のないことは考えない主義である。ベスは土に埋まるダイコの葉の根元を両手で持つと、スポスポと次々引き抜いていく。
「言われずとも。ダイコの収穫だぞ!? こんな役得があるか。ああ、この青々とした葉と白く真っ直ぐに太ったダイコのなんと美しいことよ」
流れ作業で抜くベスに対して、サナトは一本抜くごとにダイコに見とれ、黒い切れ長の目をキラキラさせている。キショい。
ちなみに畑はベスのものでも、サナトがレンタルしているリベラの畑でもない。東の国から移住してきた夫妻の畑である。
兼業農家の旦那は、急な出張で昨日から隣町に行っている。今日の夕方には戻るのだが、市場には毎日ダイコを卸しているため、今日の分の収穫を旦那に頼まれたのだ。
もちろん、報酬は貰う。そしてその報酬はカジノで有意義に使う予定だ。夫妻の事情から少し多めに報酬を貰えたので、ベスはほくほくである。
「ったく、ちんたらしてんなよぉ。俺が抜いちまうぞ」
早く済ませてカジノに行きたい。ベスは最初に決めていた自分の収穫区画から、サナトの収穫区画にあるダイコに手を伸ばそうとした。途端に。
「触れるでないわ」
「ぐぉおおおおおおっ。痛ぇっ、ギブギブ!」
ベスにはめられた隷属の指輪が締まった。
「いいか。貴重なダイコの収穫は一本たりとも譲らん!」
「へいへい。頑張れよー。じゃ、俺はダイコ洗っとくから」
ビシッと指を突き付けて宣言するサナトに、ベスはひらひらと手を振った。抜いたダイコを用水路に持っていき、洗い始めると、またサナトが騒ぐ。
「何っ!? 待て。それも捨てがたいっ」
「面倒臭ぇな! だったらさっさと収穫しちまえよ!」
これだから畑狂いの変態野郎は。一人より二人の方が早く終わるだろうと、畑仕事ラブのサナトに声をかけたのが、失敗だった。野菜愛が強すぎて面倒臭い。
「待っておれ。秒で片付ける」
流石は魔王あらため、畑魔王。慈しむような視線と手つきながら、高速でダイコを抜いていく。やっぱり変態だ。
「どうだ! 終わらせたぞ! 残りのダイコ洗いは私の仕事だ」
「……あ、そう……好きにしろよ……」
ドン引きのベスなどなんのその。サナトは受け取ったダイコを上機嫌に洗い始める。こうなってしまえばベスの仕事はない。手持ち無沙汰になったベスは、シュタッと手を上げた。
「よしっ、じゃあ後はお前に任せた! 俺はちょっくら別の仕事に行ってくらぁ!」
別の仕事とはもちろんカジノだ。報酬は前払いでもらってある。それを元手に倍以上に増やそう。うん、立派な仕事だ。
「ほどほどにしておくのだぞ」
ベスのいう別の仕事が何かを察したサナトが、黒い瞳を金色に光らせた。震えあがりそうな眼光だが、ギャンブルを前にしたベスには効きはしない。
「ほどほど? てめぇ、サナト。仕事にほどほどもくそもあるかぁ? お前、畑仕事に手を抜けんのかよ?」
「ぬ」
腰に手を当てて指摘すると、逆に気圧されたサナトが口をつぐんだ。
「ということで、お互いベストを尽くそうぜぇ」
サナトを丸め込むことに成功したベスは、へらっとした笑みに戻すと、今度こそカジノに向かった。
のではなく。
「ハルカさん!? 何でいるんすか!」
カジノに向かおうとして、いつの間にかいたハルカに突っ込みを入れていた。
「こんにちは、ベスさん。何でって、ちょっと晩ご飯用のダイコを抜きに来たんだけど」
そう言ったハルカの両手には、既にダイコが一本ずつ握られている。その背には男の子が背負われていた。
「抜きに来たってか、もう抜いてる! いや、そうじゃなくて、あんた臨月っしょ! 重いもん持ったら駄目じゃないっすか!」
そう。それこそ、ハルカの旦那がベスにダイコの収穫を依頼してきた理由。ハルカは身重で、しかもいつ生まれてもおかしくない臨月なのだ。
「えー。ダイコくらい重くないって」
「いや、ダイコも二本だとそれなりに重いけど、背中! 背中の子、何キロっすか?」
騒ぐベスが珍しいらしい。大きなお腹を屈めてにこにこと笑うハルカの背で、息子がくりくりとした目でベスを眺めていた。
ベスの記憶ではこの子はカナタという名で三歳。体重は十キロ以上あるはずだ。
「十三キロ」
「重いじゃないっすか!」
平然と答えるハルカ。やっぱり重い。
「平気平気。ほら、持ってない。おんぶだし」
「そういう問題!? 違うっすよね? いやそもそも臨月でうろうろして、陣痛きたらどうするんっすか」
「まだ予定日より二週間早いし、大丈夫よー」
「あああ。旦那さんがやけに心配してた理由がよく分かったぁ」
くれぐれもハルカを畑に出さないよう、何度も念を押された理由を体感したベスは、思わず脱力した。
「大丈夫?……ッ」
ハルカの背中からカナタに小さな手でポンポンと肩を叩かれ、疲れさせた本人から心配されたのだが。途中でハルカが動きを止めた。
「ハルカさん?」
嫌な予感がする。ベスは恐る恐るハルカの名を呼んだ。
「……陣痛きた」
「うわぁぁぁぁああああっ、やっぱりぃいいいっ!!」
予感的中である。ベスは頭を抱えて悲鳴を上げた。
「何を騒いでおるのだ、この阿呆は。ハルカ殿? どうされた」
「サナト!! 陣痛だ! 陣痛が来ちまった」
ダイコを洗い終わってやってきたサナトに訴える。しかしサナトは蒼白い顔を困惑にゆがめた。
「ぬう。陣痛とは何だ」
そうだった。こいつは魔族で人間のことはさっぱりだ。使えねぇ!
「これから子供が生まれる合図だよ! 腹の中から赤ん坊が出てくるんだっ」
「何ッ! それはどうなるのだ。どうしたらいいのだ」
「分からねぇっ」
「何だと、役立たずめ」
「おめーもだろ!」
男二人、ぎゃあぎゃあと喚くばかりで何も進まない。
「治まった。帰るわ」
突然、ハルカがすたすたと歩き始めた。サナトとベスは顔を見合わせてから、慌ててハルカについていく。
「転移魔法で……いや、瘴気を封じているのだった。ハルカ殿。家まで私が背負おう」
サナトもテンパっているらしい。
いくら速足で歩いているとはいえ、女の足だ。サナトなら余裕でついていけるはずなのに、なぜか駆け足のような恰好でハルカの側をうろうろしている。
「このお腹で背負われたら、お腹の赤ちゃんが潰れちゃいます。大丈夫。陣痛が始まったからってすぐ産まれるわけじゃないです。この調子なら夕方か夜です。陣痛もずっとじゃないですから、来てない時は動けます。それより、産婆さん呼んできてくれません?」
ハルカが足を止めずに早口で説明する。
「産婆だな。分かった。他には?」
「あの、出来れば隣町に行った主人を呼んでもらえないですか?」
「うぬ。お安い御用だ。行ってくる」
鷹揚に頷いた瞬間、サナトの姿が消えた。ように見えた。
実際には高速で走り出したため、視界から一瞬で消えただけ。少し視線をずらせば、農道を物凄い勢いで遠ざかるサナトの後ろ姿があった。
それを見送ってから、ベスははっとなった。そういえばハルカは息子を背負い、ダイコを両手にぶら下げたまま歩いている。
「ちょっとっ、ダイコは置いて行きましょうっすよ」
「駄目よ。今晩のおかずなんだから」
「今からご飯作るつもりなんっすかぁっ!?」
素っ頓狂な声が出たのは仕方ない。どうなってんだ、この人は。
「だからすぐ産まれないって……!」
急にハルカが足を止めた。陣痛がきたらしい。
「せめて俺が持つっす。あとカナタも俺が背負うっす」
ハルカの背中からカナタを抱き上げる。が。
「ヤダ!」
「今お母さん大変なんだって。な? ちょっとだけこっちにこい」
「ヤダヤダヤダヤダッ!」
三歳児のヤダヤダ攻撃に撃沈。引き離そうとすればするほど、ぎゅっとしがみついて離れようとしない。
「治まった」
そうこうしているうちに、ハルカが復活した。またすたすたと歩き始める。
「マジっすかっ。せ、せめてダイコだけは持つっす!」
なんとかダイコだけは引き受け、陣痛で止まってはまた歩くを繰り返し、家までたどり着いた。
ハルカは宣言通り、本当にダイコを料理した。その後カナタと積み木遊びをしている最中、サナトが産婆を連れてきた。
やってきたサナトはハルカの旦那を呼ぶため、すぐにまた出て行った。ベスは産婆の言う通りに湯を沸かし、落ち着かない気持ちでカナタの遊び相手になったりしていた。
しかしハルカは余裕。産婆さんの診察を受け、皆一緒に晩御飯を食べ、カナタと風呂にまで入った。
「色々信じられねぇ」
風呂に入っている間、ベスはぐったりと居間の床に寝そべった。ハルカの家は出身の東の国にならって、タタミというものが敷かれている。そのため土足厳禁なものの、こうやって寝そべることが出来るのだ。
「まだ本番前に部外者のあんたが疲れてどうする」
「そうなんだけどよぉ」
くすくすと笑い混じりに産婆がベスに茶を差し出した。ベスは上半身を少し起こした、だらんとだらけたまま姿勢で受け取っものの、茶が喉を通らない。
妊婦とはもっと大事に大事にするものではないのだろうか。出産とは恐ろしく大変なことではないのか。なのにあの落ち着きよう。こっちが心配になってくる。
「ま、ここまでのんびりとした妊婦も珍しいからね。周りの方が気が気じゃないさね」
「だろ! ほんっと信じられねぇ」
産婆に肯定してもらい、少し気分が楽になったベスはぐいっと茶を流し込んだ。
「こんばんは。手伝いに来たよ」
「ハルカちゃん、生れるんだって?」
そこへ手伝いに近所のおばさんたちもやってきて、人が増えたことにより幾分か気が楽になった。
しかししばらくして、また心配になってきた。
「なんか、遅くないっすか」
「確かに時間がかかってはいるね」
中々風呂から出てこないハルカに産婆とヤキモキしていると、やっと出てきた。しかしちょっと顔が強張っている。額に滲む汗も風呂上りの汗ではなく、脂汗のような。
「大丈夫っすか?」
「……強いやつきた」
「本番だね」
マジかっ。どうする、どうする。
頭の中が真っ白のベスは右往左往。おばさんたちに邪魔だと言われ、産屋にしている寝室から追い出された。
「ハルカ!」
玄関の扉が勢いよく開き、ハルカの旦那が帰ってきた。その後ろからサナトも入ってくる。旦那だけ寝室に入ることを許され、サナトと二人だけ居間に残された。
寝室からはハルカを励ます産婆とおばさんの声。ハルカの唸り声が時々聞こえる。それが何時間も続いたのだが、ベスには何日にも及んだように思えた。
ただただ母子の無事を祈るしか出来ない。それだけの時間。とても座っていられず、ベスはうろうろと歩いていた。普段なら怒るサナトも、黙って腕組みをして突っ立っているだけだ。
やがて力のこもったハルカの叫び声が数回。
わあっという歓声と、歓声に負けない赤子の泣き声。
「う、産まれた……」
すとん、と力が抜けてベスはその場に尻餅を着いた。勝手に溢れた涙が滝のように頬を流れる。ついでに鼻水も盛大に垂れた。
「汚い」
「ぞんなごと言っでもよぉぉ」
短い一言と共にタオルが顔めがけて飛んできた。そのまま顔面で受け止め、チーン! と鼻をかむ。
「本当にありがとうございました。あの、良かったら抱いてやってください」
やっと涙が流れなくなったころ、赤ん坊を抱いた旦那がベスの前にやってきた。
「いいんすか?」
「ぜひ」
布にしっかりとくるまれた赤ん坊を恐る恐る腕に収める。首もすわっていない赤ん坊を抱くのは初めてで怖い。
腕の中の赤ん坊は、赤くてしわくちゃで小さくて頼りない。軽いのに、ずっしりとした、確かな命。
「すげぇ……」
それ以上の言葉が出てこず、代わりにまた涙と鼻水が出た。
数日後。ベスは旦那から家事代行を引き受けた。
遠い東の国から移住した夫妻には、頼れる両親が近くにいない。幸い、ベスは掃除洗濯、料理は一通りできる。それに加えてすぐに動こうとするハルカのお目付け役も兼ねていた。
一ケ月ほど家事代行をやり、さらに月日が経って。ハルカのお腹に三人目が出来た。
「この子が生まれるのはスイカの季節ね」
お腹をさするハルカの口から出た野菜の名に、ベスを含めて周囲は震えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
生れるのがスイカの季節。
つまり、臨月で今度はスイカを持って帰る気満々なのでしたw
これで本編、番外編含めて、完結です。
ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました!
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。

はじめまして‼️
面白そうなスタートですね。ぜひ読ませていただきます🎵
静内燕さま
はじめまして!
スタートを楽しんで下さってありがとうございます。よろしければお付き合いください。