4 / 8
ブーシェ伯爵令息の忠誠
しおりを挟む
誰かに忠誠を誓う気なんてなかったのになー。
俺ことアルマン・ブーシェの生まれ育った伯爵家は、貴族社会に大きな影響力のある家門でさ。
貴族というものは爵位にランクはあるものの、下位である男爵が巨大な富で裏社会を牛耳っていたり、公爵という上位貴族が借金まみれでハリボテであったりと、爵位だけでは力を測れないところがあるんだよ。
そんな貴族社会でブーシェ伯爵家はさ。こうもりみたいに、力のある貴族の間をふらふらと飛んで、擦り寄ってきたわけ。
時に王政派。時に貴族派。時に民衆派。節操ないねー。
悪評など賛辞。生き残ったものが勝ちである。それが家訓なのさ。
ま、俺にぴったりな家訓だけどねー。
なーんか、好きじゃないんだよなー。
ぴったりなのに、好きじゃない。矛盾している。でも仕方ない。ま、いっか。
そんな適当な俺だから、両親には早々に見放されたのよ。
王太子の従者にされちゃったんだよね。
第二王子派の貴族家門の俺。ちゃらんぽらんの俺。
それが王太子の従者。超がつくほど真面目でお堅い王太子の従者。
でもこれが意外と悪くなかったんだよねー。
クーザン侯爵令息とも馬が合ったし。
最初は神経質そうなやつだなーって思ったんだけどさ。わりかし馬鹿なんだよね、あいつ。シモン様も賢いけど馬鹿なとこあるから。馬鹿な俺には居心地いいよね。
なによりさ。なんかシモン様見てたら、自分も頑張ろうかなーなんて思っちゃうというかさ。柄にもないのにさ。困っちゃうよねー。
だってさ。こっちが引くくらい努力家なんだよ。シモン様はさ。
でもさ。そういう人って自覚なしに無理するだろ。だから俺らが馬鹿やって笑わせて、肩の力抜いてやるわけ。あの人、いつも眉間にしわ寄せてるけど、温厚だし。俺らが少々不敬やら無茶やったって怒らないんだよ。
息抜きに城下町に拉致った時は流石に怒るかと思ったけど。結構楽しんでたね。シモン様は堅物のわりにノリがいいんだ。ついでに俺も楽しい。ウィンウィンってやつ。
まあでも、無愛想だけど真面目で優しい人だから。息抜きのはずなのに困りごとを目にしたら、すぐ対処したり政策に盛り込んだりして解決しちゃうんだよ。仕事しちゃうわけ。
おかげで国民の人気はすげーのよ。第二王子派の貴族に見せてやりたいね。あ、俺の家か。あはははー。
そんなシモン様だから。マノン嬢との関係は違和感だらけだったね。
クソがつくくらい真面目なシモン様が浮気なんてするわけないし、そもそもあの人ヴァスール公爵令嬢にぞっこんだし。マノン嬢といる時とは顔つきが全然違うわけよ。
「ほーら、やっぱりねー」
トリュフォー男爵家の不正の証拠書類が、無造作に執務室に置いてあった。
それとなく階段での事故の映像を記録させ。マノンをよく思わない俺たちが邪魔だ、従者から解雇すると言われた矢先にだ。
「なあ、バティスト」
「なんだアルマン」
あ、バティストっていうのはクーザン侯爵令息の名前ね。俺の名前はアルマン。
「俺たち舐められてるよ? どうする?」
「どうするもこうするも、クソ馬鹿王太子に分からせてやるしかないだろう」
「お前も悪だねー」
「お前ほどじゃない」
ブーシェ伯爵家は、こうもりのように力のある貴族の間をふらふらと飛び、擦り寄ってきた。
時に王政派。時に貴族派。時に民衆派。
悪評など賛辞。生き残ったものが勝ちである。それが家訓。
なんでそんなことが可能だったかって? 情報だよ、情報。情報をもとに、勝ち筋を見極める力。それに特化してるんだ。
恩義なんてなんのその。手のひらくるっくる。裏切っても絶対に勝つ。
そういうとこが嫌いだったんだけどねー。使えるものは親でも使わなくちゃ。
「実家にリークしてくるわー」
王太子の意図を漏らせば、誰につけばいいかすぐ見極めて手のひらくるっ。勝率を上げるため、勝手に根回ししてくれるでしょ。
「なら俺は弟殿下とヴァスール公爵に話をつけよう」
「おっけー。任した」
『俺に選ばれて不運だったな。これからよろしく頼む』
従者になった時、シモン様が俺たちに言ったこと。そっくりそのままお返ししますよ。
俺たちを選んで不運でしたね。
あんたの思い通りには行きませんからね、大馬鹿野郎!
俺ことアルマン・ブーシェの生まれ育った伯爵家は、貴族社会に大きな影響力のある家門でさ。
貴族というものは爵位にランクはあるものの、下位である男爵が巨大な富で裏社会を牛耳っていたり、公爵という上位貴族が借金まみれでハリボテであったりと、爵位だけでは力を測れないところがあるんだよ。
そんな貴族社会でブーシェ伯爵家はさ。こうもりみたいに、力のある貴族の間をふらふらと飛んで、擦り寄ってきたわけ。
時に王政派。時に貴族派。時に民衆派。節操ないねー。
悪評など賛辞。生き残ったものが勝ちである。それが家訓なのさ。
ま、俺にぴったりな家訓だけどねー。
なーんか、好きじゃないんだよなー。
ぴったりなのに、好きじゃない。矛盾している。でも仕方ない。ま、いっか。
そんな適当な俺だから、両親には早々に見放されたのよ。
王太子の従者にされちゃったんだよね。
第二王子派の貴族家門の俺。ちゃらんぽらんの俺。
それが王太子の従者。超がつくほど真面目でお堅い王太子の従者。
でもこれが意外と悪くなかったんだよねー。
クーザン侯爵令息とも馬が合ったし。
最初は神経質そうなやつだなーって思ったんだけどさ。わりかし馬鹿なんだよね、あいつ。シモン様も賢いけど馬鹿なとこあるから。馬鹿な俺には居心地いいよね。
なによりさ。なんかシモン様見てたら、自分も頑張ろうかなーなんて思っちゃうというかさ。柄にもないのにさ。困っちゃうよねー。
だってさ。こっちが引くくらい努力家なんだよ。シモン様はさ。
でもさ。そういう人って自覚なしに無理するだろ。だから俺らが馬鹿やって笑わせて、肩の力抜いてやるわけ。あの人、いつも眉間にしわ寄せてるけど、温厚だし。俺らが少々不敬やら無茶やったって怒らないんだよ。
息抜きに城下町に拉致った時は流石に怒るかと思ったけど。結構楽しんでたね。シモン様は堅物のわりにノリがいいんだ。ついでに俺も楽しい。ウィンウィンってやつ。
まあでも、無愛想だけど真面目で優しい人だから。息抜きのはずなのに困りごとを目にしたら、すぐ対処したり政策に盛り込んだりして解決しちゃうんだよ。仕事しちゃうわけ。
おかげで国民の人気はすげーのよ。第二王子派の貴族に見せてやりたいね。あ、俺の家か。あはははー。
そんなシモン様だから。マノン嬢との関係は違和感だらけだったね。
クソがつくくらい真面目なシモン様が浮気なんてするわけないし、そもそもあの人ヴァスール公爵令嬢にぞっこんだし。マノン嬢といる時とは顔つきが全然違うわけよ。
「ほーら、やっぱりねー」
トリュフォー男爵家の不正の証拠書類が、無造作に執務室に置いてあった。
それとなく階段での事故の映像を記録させ。マノンをよく思わない俺たちが邪魔だ、従者から解雇すると言われた矢先にだ。
「なあ、バティスト」
「なんだアルマン」
あ、バティストっていうのはクーザン侯爵令息の名前ね。俺の名前はアルマン。
「俺たち舐められてるよ? どうする?」
「どうするもこうするも、クソ馬鹿王太子に分からせてやるしかないだろう」
「お前も悪だねー」
「お前ほどじゃない」
ブーシェ伯爵家は、こうもりのように力のある貴族の間をふらふらと飛び、擦り寄ってきた。
時に王政派。時に貴族派。時に民衆派。
悪評など賛辞。生き残ったものが勝ちである。それが家訓。
なんでそんなことが可能だったかって? 情報だよ、情報。情報をもとに、勝ち筋を見極める力。それに特化してるんだ。
恩義なんてなんのその。手のひらくるっくる。裏切っても絶対に勝つ。
そういうとこが嫌いだったんだけどねー。使えるものは親でも使わなくちゃ。
「実家にリークしてくるわー」
王太子の意図を漏らせば、誰につけばいいかすぐ見極めて手のひらくるっ。勝率を上げるため、勝手に根回ししてくれるでしょ。
「なら俺は弟殿下とヴァスール公爵に話をつけよう」
「おっけー。任した」
『俺に選ばれて不運だったな。これからよろしく頼む』
従者になった時、シモン様が俺たちに言ったこと。そっくりそのままお返ししますよ。
俺たちを選んで不運でしたね。
あんたの思い通りには行きませんからね、大馬鹿野郎!
24
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?
魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。
彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。
国外追放の系に処された。
そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。
新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。
しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。
夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。
ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。
そして学校を卒業したら大陸中を巡る!
そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、
鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……?
「君を愛している」
一体なにがどうなってるの!?
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
お望み通り、消えてさしあげますわ
梨丸
恋愛
一国の次期王妃と言われていた子爵令嬢アマリリス。
王太子との結婚前夜、彼女は自ら火を放ち、死んだ。
国民達は彼女の死を特に気にもしなかった。それどころか、彼女の死を喜ぶ者もいた。彼女の有していた聖女の力は大したものではなかったし、優れているのは外見だけの「性悪女」だと噂されるほどだったから。
彼女の死後、すぐさま後釜として皆に好かれていた聖女が次期王妃に召し上げられた。
この国はより豊かになる、皆はそう確信した。
だが、“役立たずの聖女”アマリリスの死後──着実に崩壊は始まっていた。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
どうぞ添い遂げてください
あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。
ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる