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第一章:リスタート
エミリーとの距離(挿絵あり)
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イラスト:彩瀬あいりさま
「イザベラ様。セス様とデートしませんですか、デート!」
いつものようにナイトドレスに着替え、髪を整えてもらっているとエミリーが妙な提案をした。
「ふぇっ? 急に何を言い出したの?」
脈絡のない話題に驚いたイザベラは、思わず目を白黒させてしまった。
「イザベラ様の恋、応援しますですって言ったです。もう忘れちゃいましたですか?」
「あれは。違うって言ったじゃない。私はセスのことなんてなんとも思ってな……」
「あはは。そうやって誤魔化すところが可愛いですぅ」
反論が終わる前に、エミリーに額をつんつんと突かれる。
「むーっ。また子供扱いしてっ」
突かれた額を軽く押さえて、イザベラは頬を膨らませた。
エミリーとは着替えの度に二人きり。
最初は緊張していたエミリーも段々と気安くなってきた。イザベラもイザベラで、麗子の時もイザベラの時もあまり女友達というものがいなかったものだから、エミリーとの会話はちょっと楽しい。
イザベラよりも五歳年上のエミリーだが、おっちょこちょいであること、やり直しの経験のあるイザベラの精神年齢が高いこともあって、クラスメートよりも同年代の友人みたいだ。
エミリーとの距離が近くなることをセスも喜んでいて、最近では着替えの時間が終わってもすぐに来なくなっていた。
「だってイザベラ様。セス様の方を見ては、いっつも溜め息吐いてますですよ」
「ええ? うそ。そうなの?」
しまった。そんなに周囲にバレバレな態度をとってしまっていたのだろうか。だとしたらセスにも気づかれているかもしれない。
不安になったイザベラはエミリーを上目遣いに見上げた。
「あの、エミリー。…‥私がセスのことを好きなのってそんなに分かりやすい?」
イザベラが王子を好きだという誤解は解けていないままだけれど、セスの態度は以前と全く変わらない。
もし、セスがイザベラの気持ちに気付いていて変わらない態度をとっているのなら、イザベラのことなどなんとも思っていないということではないか。
そう考えると不安になったのだ。
「セス様が横向いてる時とか、セス様がお側から離れるたんびに溜め息ついてらっしゃるですますよ」
「えっ、うそっ」
「本当です。セス様は気付いてないみたいですけど」
「そうなんだ……」
セスが気付いてない。それはホッとするような、残念なような。なんとも言えない気持ちになってイザベラは自分の胸に手を当てた。
「やだ、イザベラ様」
髪を梳かす手をとめたエミリーが、まじまじとイザベラを見つめる。
どうしたのだろうとイザベラが首を傾げた次の瞬間、急に抱きついてきた。
「可愛いっ!」
「わっ、ちょっとエミリー」
エミリーにぎゅうっと頭を抱きこまれ、撫でまわされる。
「髪がぐしゃぐしゃになるじゃないっ」
「大丈夫。後で整えて差し上げますですぅ」
文句を言ってエミリーの背中を軽く叩いたが、ますますぎゅっと抱え込まれた。
「イザベラ様。セス様とデートしませんですか、デート!」
いつものようにナイトドレスに着替え、髪を整えてもらっているとエミリーが妙な提案をした。
「ふぇっ? 急に何を言い出したの?」
脈絡のない話題に驚いたイザベラは、思わず目を白黒させてしまった。
「イザベラ様の恋、応援しますですって言ったです。もう忘れちゃいましたですか?」
「あれは。違うって言ったじゃない。私はセスのことなんてなんとも思ってな……」
「あはは。そうやって誤魔化すところが可愛いですぅ」
反論が終わる前に、エミリーに額をつんつんと突かれる。
「むーっ。また子供扱いしてっ」
突かれた額を軽く押さえて、イザベラは頬を膨らませた。
エミリーとは着替えの度に二人きり。
最初は緊張していたエミリーも段々と気安くなってきた。イザベラもイザベラで、麗子の時もイザベラの時もあまり女友達というものがいなかったものだから、エミリーとの会話はちょっと楽しい。
イザベラよりも五歳年上のエミリーだが、おっちょこちょいであること、やり直しの経験のあるイザベラの精神年齢が高いこともあって、クラスメートよりも同年代の友人みたいだ。
エミリーとの距離が近くなることをセスも喜んでいて、最近では着替えの時間が終わってもすぐに来なくなっていた。
「だってイザベラ様。セス様の方を見ては、いっつも溜め息吐いてますですよ」
「ええ? うそ。そうなの?」
しまった。そんなに周囲にバレバレな態度をとってしまっていたのだろうか。だとしたらセスにも気づかれているかもしれない。
不安になったイザベラはエミリーを上目遣いに見上げた。
「あの、エミリー。…‥私がセスのことを好きなのってそんなに分かりやすい?」
イザベラが王子を好きだという誤解は解けていないままだけれど、セスの態度は以前と全く変わらない。
もし、セスがイザベラの気持ちに気付いていて変わらない態度をとっているのなら、イザベラのことなどなんとも思っていないということではないか。
そう考えると不安になったのだ。
「セス様が横向いてる時とか、セス様がお側から離れるたんびに溜め息ついてらっしゃるですますよ」
「えっ、うそっ」
「本当です。セス様は気付いてないみたいですけど」
「そうなんだ……」
セスが気付いてない。それはホッとするような、残念なような。なんとも言えない気持ちになってイザベラは自分の胸に手を当てた。
「やだ、イザベラ様」
髪を梳かす手をとめたエミリーが、まじまじとイザベラを見つめる。
どうしたのだろうとイザベラが首を傾げた次の瞬間、急に抱きついてきた。
「可愛いっ!」
「わっ、ちょっとエミリー」
エミリーにぎゅうっと頭を抱きこまれ、撫でまわされる。
「髪がぐしゃぐしゃになるじゃないっ」
「大丈夫。後で整えて差し上げますですぅ」
文句を言ってエミリーの背中を軽く叩いたが、ますますぎゅっと抱え込まれた。
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