90 / 94
第一章:リスタート
変化?(セス視点)
しおりを挟む
「すみません、私だけの力では足りなくて。イザベラ様からも少し借りたので疲れたのだと思います」
アメリアが申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「ということは、アメリア。まさか君が?」
ジェームスの問いに頷いてから、アメリアが声を張り上げた。
「話は後です。ジェームス様、勇者である貴方の武器に聖なる力を付与しています。今のうちにモンスターを!」
「分かった」
ジェームス王子が銃を戻し、代わりに剣を抜く。倒されていた護衛騎士たちも王子に加勢すべく散開した。
「ジェームス王子が勇者……」
戦いを始めたジェームスたちの後方でセスは剣を戻してイザベラの側に寄った。この場にいた者全員の傷を治した力。あれは伝説の聖女のものだろう。
「……お嬢様」
エミリーの腕の中で眠るイザベラの頬に、そっと指先を触れさせる。
ジェームス王子が勇者でアメリアが聖女なら、王をはじめ国中の民が二人を祝福する。そうなれば婚約者のイザベラはどうなるのだろう。ジェームス王子を想い続けているイザベラは……。
「くそ、硬いな」
王子の苛立つ声にはっと現実に戻った。見れば聖女の祝福があったわりに、戦況はそれほど有利になっていない。
オークとガーゴイルに傷はつけられているが、なかなか致命傷までいかなくて苦戦している。
おかしい。聖女の力は治癒だけじゃない。祝福を受ければ武器の強化、身体能力の底上げがされる。こんなものではないはず。
「あれ?」
そこまで考えて、セスは首を傾げた。
なぜこんなものじゃないなんて思ったのだろう。聖女の力なんておとぎ話や伝説。教科書にも載ってはいるけど、どれほどのものなのかなんて知らないのに。
「おい! 何をぼーっとしている、セス・ウォード! お前も戦え!」
「はっ、殿下」
染みついた騎士の礼をとってから、セスも戦線に加わる。ごちゃごちゃ考えるのは後だ。まずモンスターを倒さなければまたイザベラを危険にさらしてしまう。
ジェームスの剣がオークの腹を薙いだ。やはり浅いが効いてはいる。オークが顔を歪めて片手で腹を押さえ、反対の手を振り回す。
オークの手がジェームスに当たらないよう、護衛騎士が受けるが、弾かれる。どうやら護衛騎士たちの武器は強化されていないらしい。だったらセスの剣も同じだろう。サポートに徹して、王子に倒してもらわなければ。
「くっ、殿下!」
三人がかりでガーゴイルを妨害していた護衛騎士が突破される。邪魔な護衛騎士を振り切ったガーゴイルが、にやりと笑ってジェームス王子に鋭い爪を向けた。
「危ない!」
セスは警告するが、中々仕留められないことに業を煮やしたのか。威力の大きい突きでダメージを稼ごうとしたのだろう。ジェームス王子が、オークに突きを放ったところだった。
「殿下!」
目を狙えばダメージを与えられなくても、動きを止められるはず。
間に合え!
セスは王子とガーゴイルの間に滑り込もうと、地面を蹴る。途端にぐんっと景色が流れた。
なんだ?
そう思った時にはガーゴイルの前に立ちふさがっていた。なぜか普段の自分よりも数倍速く動けている。
まあいい。そんなことよりもモンスターだ。
ガーゴイルよりも背の低いセスは軽く跳びながら、目標に向かって剣を走らせたのだが。
「なっ」
軽くのつもりだったのに、予想以上に高く跳んでいる。慌てて剣の軌道を下に修正すると。
「ぅがアアアアアッ」
ガーゴイルの悲鳴が上がった。
アメリアが申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「ということは、アメリア。まさか君が?」
ジェームスの問いに頷いてから、アメリアが声を張り上げた。
「話は後です。ジェームス様、勇者である貴方の武器に聖なる力を付与しています。今のうちにモンスターを!」
「分かった」
ジェームス王子が銃を戻し、代わりに剣を抜く。倒されていた護衛騎士たちも王子に加勢すべく散開した。
「ジェームス王子が勇者……」
戦いを始めたジェームスたちの後方でセスは剣を戻してイザベラの側に寄った。この場にいた者全員の傷を治した力。あれは伝説の聖女のものだろう。
「……お嬢様」
エミリーの腕の中で眠るイザベラの頬に、そっと指先を触れさせる。
ジェームス王子が勇者でアメリアが聖女なら、王をはじめ国中の民が二人を祝福する。そうなれば婚約者のイザベラはどうなるのだろう。ジェームス王子を想い続けているイザベラは……。
「くそ、硬いな」
王子の苛立つ声にはっと現実に戻った。見れば聖女の祝福があったわりに、戦況はそれほど有利になっていない。
オークとガーゴイルに傷はつけられているが、なかなか致命傷までいかなくて苦戦している。
おかしい。聖女の力は治癒だけじゃない。祝福を受ければ武器の強化、身体能力の底上げがされる。こんなものではないはず。
「あれ?」
そこまで考えて、セスは首を傾げた。
なぜこんなものじゃないなんて思ったのだろう。聖女の力なんておとぎ話や伝説。教科書にも載ってはいるけど、どれほどのものなのかなんて知らないのに。
「おい! 何をぼーっとしている、セス・ウォード! お前も戦え!」
「はっ、殿下」
染みついた騎士の礼をとってから、セスも戦線に加わる。ごちゃごちゃ考えるのは後だ。まずモンスターを倒さなければまたイザベラを危険にさらしてしまう。
ジェームスの剣がオークの腹を薙いだ。やはり浅いが効いてはいる。オークが顔を歪めて片手で腹を押さえ、反対の手を振り回す。
オークの手がジェームスに当たらないよう、護衛騎士が受けるが、弾かれる。どうやら護衛騎士たちの武器は強化されていないらしい。だったらセスの剣も同じだろう。サポートに徹して、王子に倒してもらわなければ。
「くっ、殿下!」
三人がかりでガーゴイルを妨害していた護衛騎士が突破される。邪魔な護衛騎士を振り切ったガーゴイルが、にやりと笑ってジェームス王子に鋭い爪を向けた。
「危ない!」
セスは警告するが、中々仕留められないことに業を煮やしたのか。威力の大きい突きでダメージを稼ごうとしたのだろう。ジェームス王子が、オークに突きを放ったところだった。
「殿下!」
目を狙えばダメージを与えられなくても、動きを止められるはず。
間に合え!
セスは王子とガーゴイルの間に滑り込もうと、地面を蹴る。途端にぐんっと景色が流れた。
なんだ?
そう思った時にはガーゴイルの前に立ちふさがっていた。なぜか普段の自分よりも数倍速く動けている。
まあいい。そんなことよりもモンスターだ。
ガーゴイルよりも背の低いセスは軽く跳びながら、目標に向かって剣を走らせたのだが。
「なっ」
軽くのつもりだったのに、予想以上に高く跳んでいる。慌てて剣の軌道を下に修正すると。
「ぅがアアアアアッ」
ガーゴイルの悲鳴が上がった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
21
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる