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29 番外編④ それからのふたり〜それからのふたりは〜
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本編のすぐあとからのお話です。
ーーーーーーーーーーーー
コウさんは、のちに婚約指輪となるダイヤモンドの指輪を手土産に、本当に私の両親に交際の挨拶をして、まずは見事お見合い話を白紙にしてくれた。
元ホストという職歴に明らかに顔色を変えた両親にも臆せず、コウさんはその経緯やこれまでの経歴もきちんと説明した上で結婚前提でのお付き合いの申し出をしてくれた。元ホストの件は私が先に話しておいても、特に言う必要も無かったと思うんだけど、コウさんが自分の口から話したいと言ってくれて、それも両親には好印象だったように思う。
コウさんの誠実そうな人柄と折り目正しい態度を見た私の両親は、納得がいったらしく、私たちの交際はすんなり了承してくれた。まあ、私がもうこの年齢で、後がなかったのも幸いしていたかもしれない。
◇◇◇
私はひとりの男性と長くお付き合いをしたことがなかったので、正直にコウさんに上手な付き合い方がわからないと伝えた。意外にもコウさんも、そうだと。
「男女の付き合いに上手いとか下手とかあるのか、オレもわからないですよ。ふたりがお互いに一緒にいて心地よいと思える間柄でいられたら良いなと思います。最初は考えていることを伝えあって、手探りで良いんじゃないですか?」
コウさんは、深刻に考えてしまった私にそんな風なアドバイスをくれた。
「力抜いて、葉摘さん。オレなんか相手に、緊張することないですよ」
……オレなんか、って、コウさんが素敵だから私は余計に色々考えてしまうわけで……。
私たちのお付き合いは、緩やかにスタートした。仕事のある日は電話だけの時もあれば、少し余裕がある場合は仕事帰りに一緒に夕食を取ったり、お茶したりした。
休みの日は、疲れていなければ、恋人同士らしくドライブしたり、カフェ巡りをしたり、街に買い物にでかけたり、ぶらぶら歩いてお散歩したり、お互いの部屋でのんびり食事して泊まったり。触れ合ったり……。
コウさんから、
「抱き合ってる時のあなたは、素直で可愛いですよ」
と囁かれた時は、恥ずかしすぎて心臓が止まるかと思った。
「慣れてくださいね」
「……っ!?」
慣れるんだろうか、これ。
戸惑いながらもそんなコウさんの前では私は何も飾る必要もなく、素直に喜んで彼の愛を受け入れ、求めた。
手探りとは言ったものの、お付き合いは思っていたよりずっと心地よく順調だった。
◇◇◇
そしておよそ二ヶ月後、コウさんから〈サロン・ド・ラ・ナチュール〉にランチを予約したので行きましょうと誘われた。
〈ナチュール〉のマダムと室岩さんは、あの時からまるで時間が経っていないかのようなそのままの様子で、出迎えてくれた。
ここだけ、時間の流れが違う? と錯覚してしまうほど……。
やっぱりマダムのご主人さまとフランスの俳優が似ている所の話から始まって。でも今回の俳優はアラン・ドロンに変わっていた。アラン・ドロンなら、私も少しは知っている。私たちが関心を寄せて話を聞いていると、マダムの話はいつまでも終わらない。
そこに室岩さんの「奥さま、その位で」というストップがかかり、マダムはキッチンへ、私たちはまた前回と同じ自慢の庭が綺麗に見える席に案内された。
マダムのお勧めキッシュのランチプレートに舌鼓を打った後、品の良いベルガモットの香りのアールグレイで私たちは一息入れていた。
目の前には私の最愛の男性。
素敵なサロン、窓越しには緑の美しい庭、お腹も満たされた昼下がり、至福の時、その言葉は自然に発せられた。
「葉摘さん、オレとずっと一緒にこれからの人生を過ごしてください」
「え!?」
「オレと結婚してください」
そのあとのコウさんの照れくさそうでいて少し硬い表情は、これが夢ではなく現実のことだと教えてくれている。
私でいいの?
彼との結婚を意識しながらも、意識しないようにしていた。だって、コウさんは気にしないと言ってはくれたけど、私の心には四十という年齢からもたらされる染みのようなものが残っていたから。
それを、コウさんは辛抱強く、二ヶ月かけて消してくれた。もう、迷いは無い。
「はい。私もあなたと結婚したいです。ありがとう……、コウさん」
胸が、目頭が熱くなる。
この胸いっぱいの嬉しさが、うまくコウさんに伝わった?
「ありがとう、葉摘さん。ずっとオレのそばにいてくださいね」
「……ずっとあなたのそばにいます」
私たちは、お互いに信頼を込めた柔らかい笑みを交わした。
「おめでとう~!!! とても素敵なプロポーズ! 感動したわ!」
目の前で、突然、ピンクや黄色の小さな薔薇やその花びらが舞った。
〈ナチュール〉のマダムが溢れんばかりの笑顔で、直立不動の室岩さんが持つ花籠から、私たちのテーブルにパッパッと花や花びらを一生懸命散らしてくれていた。自分のことのように喜んで、飛び跳ねながらはしゃいでいらっしゃる無邪気な姿に、コウさんとふたりで、「ありがとうございます」と、お礼を言いながらも微笑んでしまった。
実は、ここでプロポーズすることは、マダムには伝えてありましたと、コウさん。
それを知って、こんな愛らしい演出とは。マダムのお気持ちがとても嬉しかった。きっといつまでも想い出に残ると思う。
『恋せよ乙女……』
マダムの言ってくれた通り、恋を諦めなくて良かった。
◇◇◇
〈ナチュール〉のマダムと室岩さんから花びらの祝福を受けてから一週間後、私の実家の狭いリビングでコウさんと私、そして私の両親が程よい緊張感の中で歓談していた。
一瞬会話が途切れて、温かみはあるけれど、張り詰めた空気になる。
とうとうこの瞬間。
「お父さん、お母さん。葉摘さんとの結婚をお許しください。お願い致します」
両親に視線を合わせながらシンプルにそう言って、コウさんがソファから立ち上がって頭を深く丁寧に下げてくれた。私も両親の様子を伺いながら、一緒に頭を下げる。
母はすぐに涙を目に貯めながら、うんうんと大きく頷いてくれた。
父の反応は……。
「四十になった年増の娘ではありますが、たったひとりの大切な娘です。どうか末永く、大事にしてやって下さい。泣かせるようなことは無いように。どうぞよろしくお願いします」
既に定年している白髪の父。父も感極まった泣きそうな顔をしていた。
〈年増〉という一言は余計だけれど、これで両親を安心させられると思うと、正直ホッとしている自分がいる。娘の行く末が、心配だっただろうから。
「ありがとうございます。安心してお任せ下さい。葉摘さんを悲しみで泣かせることは絶対にしません。ずっと大事にします」
コウさんが居住まいを正して、ハッキリとそう断言してくれて胸か温かくなった。
ふたりのやり取りにジンと来て、私も涙ぐんでしまった。こんな日が、こんなに早く来ようとは、思ってもみなかった。友達の佳寿美が、結婚て決まる時は意外とスンナリ決まるものよ、と言っていたが、本当にそうだった。
その日のうちに早々と、私の左手の薬指には、憧れの結婚指輪がコウさんによってはめられた。
〈ナチュール〉でのプロポーズのあとにすぐふたりで見にいって決めたもので、サイズを調整してもらっていた。
お揃いの結婚指輪。
コウさんの部屋で、夜、シャンパンをあけて、ふたりだけでお祝いして指輪をはめあった。
コウさんが、指輪をした私の薬指に儀式のように恭しくキスを落とした。
「オレの想いを封印しましたから、オレの許可無しでは外せませんよ」
そんな魔法のような言葉を吐いたコウさんは、悪い男の顔をして、私の心の一番奥にある愛に、抜けない甘い矢を刺した。
その翌日には、ふたりで婚姻届を役所に提出、二週間後には私はコウさんのマンションに引越し、結婚式は挙げずに記念写真だけ撮影した。ウエディングドレス姿を両親に見せるという親孝行もできた。
私の両親、そしてコウさんのお母さんと瑠伊さんとヒロさんとで、家族写真も撮影した。
コウさんのお母さんは、瑠伊さんを上手に老けさせたような、エレガントな方だ。華奢に見えて体力はあるらしく、体が動く限り働くと力強く仰っていた。
その後は、〈サン・ルイ〉で家族とごく親しい友人たちだけのささやかな結婚披露を兼ねたパーティを行った。コーヒーと瑠伊さんの手作りのウエディングケーキ、軽食が用意された。
瑠伊さんとお義母さんは、写真を撮りまくっていた。
「夢みたい! こんな綺麗なお嬢さんがコウちゃんのお嫁さんになってくれたなんて。本当にありがとう! 瑠伊にお菓子取られて泣いてた子が、やっと……一人前になるのねえ。やっぱり結婚はして欲しかったから、お母さん、本当に嬉しいわ」
綺麗なお嬢さん、なんて、無性に恥ずかしいけれど、コウさんのお母さんに心から喜んで貰えていることに、正直ホッとしていた。
「色々迷惑かけて、これからも迷惑かける予定だけどごめんね、コウちゃん。葉摘さん、これからもコウちゃんと私たち、これから生まれて来るこの子ともども、どうぞよろしくお願いします」
瑠伊さんは、かなり目立つようになったお腹をさすりながら、私に頭を下げてくれた。
「はい。私の方こそ、どうぞよろしくお願いします」
……私は、赤ちゃんを授かる日が来るんだろうか。
「母さん、アネキ、葉摘さんは優しいから、それにつけこんでアレコレあんまり頼るなよ」
私には丁寧なコウさんは、ご家族には少しつっけんどんな物言いをする。それが新鮮で、それだけ仲の良い家族なんだと、羨ましくも思える。
「コウさん、私たちも頼ることがこれからきっとあるだろうし、家族になったんだから助け合っていかないとね」
「……ありがとう、葉摘さん」
ほどほどで良いですよ、と呟くコウさんを押しのけたお母さんと瑠伊さんに両手を取られてしまった。
そこへ給仕の終わったヒロさんがやって来て、すぐに瑠伊さんの傍らに自然に寄り添う。誰が見ても素敵なご夫婦だ。もうヒロさんに特別な感情は抱かなくなっていた。以前は、あれだけヒロさんのことが気になっていたのに。今はおふたりのような夫婦になれたら良いなと思う。
私の両親も、和やかにコウさんのお母さんと話をしていた。共通の話題が無いから仕方がないとは思うけど、私の年齢に関わるようなことで盛り上がるのは、止めて欲しかった。年齢のわりには若く見えるとか、体力があるとか、なるべく階段を使うから足腰は丈夫とか、なんとか……。
主婦歴の長い友達の佳寿美からは、
「最初が肝心よ。愛のあるうちに、家事とか色々とやってもらっておかないと、何もしなくても良いんだってなるから。鉄は熱いうちに打てよ」
と、ありがたいアドバイスを受けた。佳寿美の愚痴を散々聞いているので、最もなんだろうけど。でも、コウさんには当てはまらないような気もする。
そして、コウさんの学生時代からのお友達や職場の人も数人来てくれて、コウさんからはサラッと紹介された。興味津々の男友達の視線を隔てるように、私の前に立ち塞がったコウさん。
「向井、挨拶くらいゆっくりさせろよ。いくら綺麗だからって、誰もおまえの嫁さんに手ぇ出したりしないって」
「心の狭いヤツだな」
などと、みんなにひやかされていた。
終始みんなの笑顔が見える、アットホームなパーティだった。
コウさんがここまで早く結婚を決意してくれるとは、思っていなかった。思い当たる要因はひとつ。
瑠伊さんの産休を見越して、〈サン・ルイ〉にケンさんという男性スタッフが採用された。瑠伊さんが女性はどうしても嫌とのことで、男性を採用する事になったのだ。反対にコウさんが、あまり良い顔をしなかったのを覚えている。
ケンさんは、長年〈サン・ルイ〉に通ってくれていたコーヒー好きのお得意さまで、私も何度かお店でお見かけしたことがあった。趣味で取ったコーヒーの資格もお持ちだとか。公務員を定年退職したばかりで、目尻のシワは目立っていても、まだまだ若々しくて、ロマンスグレイのとても温厚でダンディな方だ。スタッフになられてからは、お店に行くと当たり前だけど何かしら私も声をかけられた。
ーー『こんにちは、葉摘さん。いらっしゃいませ。今日は髪の調子がよろしいのではないですか? 艶々してますね』
『あ、ありがとうございます』
確かに髪のコンディショナーを替えたけど。
ーー『いらっしゃいませ。葉摘さん、何か良いことありましたか? とても輝いて見えますよ』
か、輝いてって……。
確かに前日は、コウさんと一緒に美術館の展示会を観たり、チュウヤくんのごはんをペットショップに買いに行って、ペットショップの看板犬のリッキーくんと戯れて、夜はちょっとした贅沢感のあるディナーを食べて、一日中楽しく過ごした。
ケンさんは、そんな小さな変化? にもよく気が付く人で。ドキッとするというか、私はかえってたじろいでしまうけど。
スタッフとしての評判は良いようで、事実、ケンさんが入ってから、若干年齢層高めの女性のお客さまが増えたとこっそりヒロさんが教えてくれた。そして、ケンさんは今はどうも独身らしい。それを知ってか知らないでか、どことなく険しい表情のコウさんとは、
『ケンさんて、葉摘さんに馴れ馴れしすぎませんか?』
『そう? ケンさんは私たちの関係を知ってるから、私には特別親しく接して下さるんじゃない?』
『そうかな?』
そんな会話を交わしたことがあった。
憶測だけど、もしかして、あらぬ心配をして……、早く私との結婚を決めてくれたのかも。自惚れ過ぎかな……。
◇◇◇
「葉摘さん……」
「……っ!?」
急に目の前にコウさんの顔が接近したと思ったら、後頭部を支えられてチュッと唇に軽くキスされて驚く。
「ぼーっとして、大丈夫? 残業続きで、疲れてるんじゃない?」
目を細めて柔らかく話しかけてくれるコウさんの、こんな優しいところが好き。
「大丈夫……」
そっと微笑みを返す。まだ実感が湧かないけれど、いつも私を気遣ってくれて、頼りになる私の優しい旦那さま。
この人のそばにずっといられるなら、これからの人生、何も不安も心配も無いと思える。
これが幸せなんだという気持ちが胸に広がる。
「じゃあ、明日は休みだし、抱いてもいい? 奥さん」
「……っ!」
サラッとそういうこと言うんだから、私の方はまだ慣れなくて恥ずかしくてたまらないのに。
奥さん、という響きも。身体のコミュニケーションも。
もしかして、ケンさんのこととか思い浮かべてたこと感付かれた? まさかね。
「あの、控えめでお願いします」
と、お願いしてみる。
「ふっ。なんですか、その控えめって。その恥ずかしそうな顔、たまんないですね。わかりました。控えめで」
マンションの和室に並べて敷いてある布団の上で、眉をあげて浮かべるコウさんのその少し悪っぽい笑み。
その笑みが広がる時は、その言葉があまり当てにならないということを、そのあと存分に思い知らされるのだけれど。
~~~~~~~~~~~~
葉摘さんへ
あなたに淋しい思いはさせません。
オレに捕まってくれてありがとう。
あなたとこれからもずっと一緒に幸せを分かち合って、助け合って生きて行きたいです。
向井幸祐
~~~~~~~~~~~~
コウさんと迎えた最初の朝に、コウさんから渡されたメッセージ、私の宝物。
プロポーズの文面みたいで、嬉しくて泣きながら幸せをかみしめた。
こうして、コウさんとお付き合いをして結婚したけれど、1パーセントの確率の出会いは奇跡。このめぐり合わせは運命だと思っている。
心から感謝して、私たちはお互いに幸せを分かちあって、ずっとそばで支え合って生きて行く。
ーーーーーーーーーーーー
コウさんは、のちに婚約指輪となるダイヤモンドの指輪を手土産に、本当に私の両親に交際の挨拶をして、まずは見事お見合い話を白紙にしてくれた。
元ホストという職歴に明らかに顔色を変えた両親にも臆せず、コウさんはその経緯やこれまでの経歴もきちんと説明した上で結婚前提でのお付き合いの申し出をしてくれた。元ホストの件は私が先に話しておいても、特に言う必要も無かったと思うんだけど、コウさんが自分の口から話したいと言ってくれて、それも両親には好印象だったように思う。
コウさんの誠実そうな人柄と折り目正しい態度を見た私の両親は、納得がいったらしく、私たちの交際はすんなり了承してくれた。まあ、私がもうこの年齢で、後がなかったのも幸いしていたかもしれない。
◇◇◇
私はひとりの男性と長くお付き合いをしたことがなかったので、正直にコウさんに上手な付き合い方がわからないと伝えた。意外にもコウさんも、そうだと。
「男女の付き合いに上手いとか下手とかあるのか、オレもわからないですよ。ふたりがお互いに一緒にいて心地よいと思える間柄でいられたら良いなと思います。最初は考えていることを伝えあって、手探りで良いんじゃないですか?」
コウさんは、深刻に考えてしまった私にそんな風なアドバイスをくれた。
「力抜いて、葉摘さん。オレなんか相手に、緊張することないですよ」
……オレなんか、って、コウさんが素敵だから私は余計に色々考えてしまうわけで……。
私たちのお付き合いは、緩やかにスタートした。仕事のある日は電話だけの時もあれば、少し余裕がある場合は仕事帰りに一緒に夕食を取ったり、お茶したりした。
休みの日は、疲れていなければ、恋人同士らしくドライブしたり、カフェ巡りをしたり、街に買い物にでかけたり、ぶらぶら歩いてお散歩したり、お互いの部屋でのんびり食事して泊まったり。触れ合ったり……。
コウさんから、
「抱き合ってる時のあなたは、素直で可愛いですよ」
と囁かれた時は、恥ずかしすぎて心臓が止まるかと思った。
「慣れてくださいね」
「……っ!?」
慣れるんだろうか、これ。
戸惑いながらもそんなコウさんの前では私は何も飾る必要もなく、素直に喜んで彼の愛を受け入れ、求めた。
手探りとは言ったものの、お付き合いは思っていたよりずっと心地よく順調だった。
◇◇◇
そしておよそ二ヶ月後、コウさんから〈サロン・ド・ラ・ナチュール〉にランチを予約したので行きましょうと誘われた。
〈ナチュール〉のマダムと室岩さんは、あの時からまるで時間が経っていないかのようなそのままの様子で、出迎えてくれた。
ここだけ、時間の流れが違う? と錯覚してしまうほど……。
やっぱりマダムのご主人さまとフランスの俳優が似ている所の話から始まって。でも今回の俳優はアラン・ドロンに変わっていた。アラン・ドロンなら、私も少しは知っている。私たちが関心を寄せて話を聞いていると、マダムの話はいつまでも終わらない。
そこに室岩さんの「奥さま、その位で」というストップがかかり、マダムはキッチンへ、私たちはまた前回と同じ自慢の庭が綺麗に見える席に案内された。
マダムのお勧めキッシュのランチプレートに舌鼓を打った後、品の良いベルガモットの香りのアールグレイで私たちは一息入れていた。
目の前には私の最愛の男性。
素敵なサロン、窓越しには緑の美しい庭、お腹も満たされた昼下がり、至福の時、その言葉は自然に発せられた。
「葉摘さん、オレとずっと一緒にこれからの人生を過ごしてください」
「え!?」
「オレと結婚してください」
そのあとのコウさんの照れくさそうでいて少し硬い表情は、これが夢ではなく現実のことだと教えてくれている。
私でいいの?
彼との結婚を意識しながらも、意識しないようにしていた。だって、コウさんは気にしないと言ってはくれたけど、私の心には四十という年齢からもたらされる染みのようなものが残っていたから。
それを、コウさんは辛抱強く、二ヶ月かけて消してくれた。もう、迷いは無い。
「はい。私もあなたと結婚したいです。ありがとう……、コウさん」
胸が、目頭が熱くなる。
この胸いっぱいの嬉しさが、うまくコウさんに伝わった?
「ありがとう、葉摘さん。ずっとオレのそばにいてくださいね」
「……ずっとあなたのそばにいます」
私たちは、お互いに信頼を込めた柔らかい笑みを交わした。
「おめでとう~!!! とても素敵なプロポーズ! 感動したわ!」
目の前で、突然、ピンクや黄色の小さな薔薇やその花びらが舞った。
〈ナチュール〉のマダムが溢れんばかりの笑顔で、直立不動の室岩さんが持つ花籠から、私たちのテーブルにパッパッと花や花びらを一生懸命散らしてくれていた。自分のことのように喜んで、飛び跳ねながらはしゃいでいらっしゃる無邪気な姿に、コウさんとふたりで、「ありがとうございます」と、お礼を言いながらも微笑んでしまった。
実は、ここでプロポーズすることは、マダムには伝えてありましたと、コウさん。
それを知って、こんな愛らしい演出とは。マダムのお気持ちがとても嬉しかった。きっといつまでも想い出に残ると思う。
『恋せよ乙女……』
マダムの言ってくれた通り、恋を諦めなくて良かった。
◇◇◇
〈ナチュール〉のマダムと室岩さんから花びらの祝福を受けてから一週間後、私の実家の狭いリビングでコウさんと私、そして私の両親が程よい緊張感の中で歓談していた。
一瞬会話が途切れて、温かみはあるけれど、張り詰めた空気になる。
とうとうこの瞬間。
「お父さん、お母さん。葉摘さんとの結婚をお許しください。お願い致します」
両親に視線を合わせながらシンプルにそう言って、コウさんがソファから立ち上がって頭を深く丁寧に下げてくれた。私も両親の様子を伺いながら、一緒に頭を下げる。
母はすぐに涙を目に貯めながら、うんうんと大きく頷いてくれた。
父の反応は……。
「四十になった年増の娘ではありますが、たったひとりの大切な娘です。どうか末永く、大事にしてやって下さい。泣かせるようなことは無いように。どうぞよろしくお願いします」
既に定年している白髪の父。父も感極まった泣きそうな顔をしていた。
〈年増〉という一言は余計だけれど、これで両親を安心させられると思うと、正直ホッとしている自分がいる。娘の行く末が、心配だっただろうから。
「ありがとうございます。安心してお任せ下さい。葉摘さんを悲しみで泣かせることは絶対にしません。ずっと大事にします」
コウさんが居住まいを正して、ハッキリとそう断言してくれて胸か温かくなった。
ふたりのやり取りにジンと来て、私も涙ぐんでしまった。こんな日が、こんなに早く来ようとは、思ってもみなかった。友達の佳寿美が、結婚て決まる時は意外とスンナリ決まるものよ、と言っていたが、本当にそうだった。
その日のうちに早々と、私の左手の薬指には、憧れの結婚指輪がコウさんによってはめられた。
〈ナチュール〉でのプロポーズのあとにすぐふたりで見にいって決めたもので、サイズを調整してもらっていた。
お揃いの結婚指輪。
コウさんの部屋で、夜、シャンパンをあけて、ふたりだけでお祝いして指輪をはめあった。
コウさんが、指輪をした私の薬指に儀式のように恭しくキスを落とした。
「オレの想いを封印しましたから、オレの許可無しでは外せませんよ」
そんな魔法のような言葉を吐いたコウさんは、悪い男の顔をして、私の心の一番奥にある愛に、抜けない甘い矢を刺した。
その翌日には、ふたりで婚姻届を役所に提出、二週間後には私はコウさんのマンションに引越し、結婚式は挙げずに記念写真だけ撮影した。ウエディングドレス姿を両親に見せるという親孝行もできた。
私の両親、そしてコウさんのお母さんと瑠伊さんとヒロさんとで、家族写真も撮影した。
コウさんのお母さんは、瑠伊さんを上手に老けさせたような、エレガントな方だ。華奢に見えて体力はあるらしく、体が動く限り働くと力強く仰っていた。
その後は、〈サン・ルイ〉で家族とごく親しい友人たちだけのささやかな結婚披露を兼ねたパーティを行った。コーヒーと瑠伊さんの手作りのウエディングケーキ、軽食が用意された。
瑠伊さんとお義母さんは、写真を撮りまくっていた。
「夢みたい! こんな綺麗なお嬢さんがコウちゃんのお嫁さんになってくれたなんて。本当にありがとう! 瑠伊にお菓子取られて泣いてた子が、やっと……一人前になるのねえ。やっぱり結婚はして欲しかったから、お母さん、本当に嬉しいわ」
綺麗なお嬢さん、なんて、無性に恥ずかしいけれど、コウさんのお母さんに心から喜んで貰えていることに、正直ホッとしていた。
「色々迷惑かけて、これからも迷惑かける予定だけどごめんね、コウちゃん。葉摘さん、これからもコウちゃんと私たち、これから生まれて来るこの子ともども、どうぞよろしくお願いします」
瑠伊さんは、かなり目立つようになったお腹をさすりながら、私に頭を下げてくれた。
「はい。私の方こそ、どうぞよろしくお願いします」
……私は、赤ちゃんを授かる日が来るんだろうか。
「母さん、アネキ、葉摘さんは優しいから、それにつけこんでアレコレあんまり頼るなよ」
私には丁寧なコウさんは、ご家族には少しつっけんどんな物言いをする。それが新鮮で、それだけ仲の良い家族なんだと、羨ましくも思える。
「コウさん、私たちも頼ることがこれからきっとあるだろうし、家族になったんだから助け合っていかないとね」
「……ありがとう、葉摘さん」
ほどほどで良いですよ、と呟くコウさんを押しのけたお母さんと瑠伊さんに両手を取られてしまった。
そこへ給仕の終わったヒロさんがやって来て、すぐに瑠伊さんの傍らに自然に寄り添う。誰が見ても素敵なご夫婦だ。もうヒロさんに特別な感情は抱かなくなっていた。以前は、あれだけヒロさんのことが気になっていたのに。今はおふたりのような夫婦になれたら良いなと思う。
私の両親も、和やかにコウさんのお母さんと話をしていた。共通の話題が無いから仕方がないとは思うけど、私の年齢に関わるようなことで盛り上がるのは、止めて欲しかった。年齢のわりには若く見えるとか、体力があるとか、なるべく階段を使うから足腰は丈夫とか、なんとか……。
主婦歴の長い友達の佳寿美からは、
「最初が肝心よ。愛のあるうちに、家事とか色々とやってもらっておかないと、何もしなくても良いんだってなるから。鉄は熱いうちに打てよ」
と、ありがたいアドバイスを受けた。佳寿美の愚痴を散々聞いているので、最もなんだろうけど。でも、コウさんには当てはまらないような気もする。
そして、コウさんの学生時代からのお友達や職場の人も数人来てくれて、コウさんからはサラッと紹介された。興味津々の男友達の視線を隔てるように、私の前に立ち塞がったコウさん。
「向井、挨拶くらいゆっくりさせろよ。いくら綺麗だからって、誰もおまえの嫁さんに手ぇ出したりしないって」
「心の狭いヤツだな」
などと、みんなにひやかされていた。
終始みんなの笑顔が見える、アットホームなパーティだった。
コウさんがここまで早く結婚を決意してくれるとは、思っていなかった。思い当たる要因はひとつ。
瑠伊さんの産休を見越して、〈サン・ルイ〉にケンさんという男性スタッフが採用された。瑠伊さんが女性はどうしても嫌とのことで、男性を採用する事になったのだ。反対にコウさんが、あまり良い顔をしなかったのを覚えている。
ケンさんは、長年〈サン・ルイ〉に通ってくれていたコーヒー好きのお得意さまで、私も何度かお店でお見かけしたことがあった。趣味で取ったコーヒーの資格もお持ちだとか。公務員を定年退職したばかりで、目尻のシワは目立っていても、まだまだ若々しくて、ロマンスグレイのとても温厚でダンディな方だ。スタッフになられてからは、お店に行くと当たり前だけど何かしら私も声をかけられた。
ーー『こんにちは、葉摘さん。いらっしゃいませ。今日は髪の調子がよろしいのではないですか? 艶々してますね』
『あ、ありがとうございます』
確かに髪のコンディショナーを替えたけど。
ーー『いらっしゃいませ。葉摘さん、何か良いことありましたか? とても輝いて見えますよ』
か、輝いてって……。
確かに前日は、コウさんと一緒に美術館の展示会を観たり、チュウヤくんのごはんをペットショップに買いに行って、ペットショップの看板犬のリッキーくんと戯れて、夜はちょっとした贅沢感のあるディナーを食べて、一日中楽しく過ごした。
ケンさんは、そんな小さな変化? にもよく気が付く人で。ドキッとするというか、私はかえってたじろいでしまうけど。
スタッフとしての評判は良いようで、事実、ケンさんが入ってから、若干年齢層高めの女性のお客さまが増えたとこっそりヒロさんが教えてくれた。そして、ケンさんは今はどうも独身らしい。それを知ってか知らないでか、どことなく険しい表情のコウさんとは、
『ケンさんて、葉摘さんに馴れ馴れしすぎませんか?』
『そう? ケンさんは私たちの関係を知ってるから、私には特別親しく接して下さるんじゃない?』
『そうかな?』
そんな会話を交わしたことがあった。
憶測だけど、もしかして、あらぬ心配をして……、早く私との結婚を決めてくれたのかも。自惚れ過ぎかな……。
◇◇◇
「葉摘さん……」
「……っ!?」
急に目の前にコウさんの顔が接近したと思ったら、後頭部を支えられてチュッと唇に軽くキスされて驚く。
「ぼーっとして、大丈夫? 残業続きで、疲れてるんじゃない?」
目を細めて柔らかく話しかけてくれるコウさんの、こんな優しいところが好き。
「大丈夫……」
そっと微笑みを返す。まだ実感が湧かないけれど、いつも私を気遣ってくれて、頼りになる私の優しい旦那さま。
この人のそばにずっといられるなら、これからの人生、何も不安も心配も無いと思える。
これが幸せなんだという気持ちが胸に広がる。
「じゃあ、明日は休みだし、抱いてもいい? 奥さん」
「……っ!」
サラッとそういうこと言うんだから、私の方はまだ慣れなくて恥ずかしくてたまらないのに。
奥さん、という響きも。身体のコミュニケーションも。
もしかして、ケンさんのこととか思い浮かべてたこと感付かれた? まさかね。
「あの、控えめでお願いします」
と、お願いしてみる。
「ふっ。なんですか、その控えめって。その恥ずかしそうな顔、たまんないですね。わかりました。控えめで」
マンションの和室に並べて敷いてある布団の上で、眉をあげて浮かべるコウさんのその少し悪っぽい笑み。
その笑みが広がる時は、その言葉があまり当てにならないということを、そのあと存分に思い知らされるのだけれど。
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葉摘さんへ
あなたに淋しい思いはさせません。
オレに捕まってくれてありがとう。
あなたとこれからもずっと一緒に幸せを分かち合って、助け合って生きて行きたいです。
向井幸祐
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コウさんと迎えた最初の朝に、コウさんから渡されたメッセージ、私の宝物。
プロポーズの文面みたいで、嬉しくて泣きながら幸せをかみしめた。
こうして、コウさんとお付き合いをして結婚したけれど、1パーセントの確率の出会いは奇跡。このめぐり合わせは運命だと思っている。
心から感謝して、私たちはお互いに幸せを分かちあって、ずっとそばで支え合って生きて行く。
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