私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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マリアベルの気になる生活

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「父上、お話があります」

 コンコンコン……と執務室の扉をノックをすると入室の許可をされた。

「ヴェルナーどうした? マリーに屋敷の案内をしていたんじゃないのか?」

 父の顔は穏やかだ。マリーが戻ってきたことに安堵している様子で、ようやくロマーニ侯爵家の時間が動き始めたような気がした。僕のことを大切にしてくれるが、やはり誘拐されたマリーが戻ってきてくれて心から喜んでいるようだ。

 マリーが見つかるまでの四年間は絶対に生きている。と言いマリーに似ているという情報を聞くと些細な情報でも耳を傾けて、その場に行くように指示していた。時間が許す限り父も駆けつけることがあったくらいだ。しかし数日屋敷を離れることとなると、心が弱っている母が心配で離れることはできないと言う状態だった。マリアベルのネックレスは高価なもので売りに出される事で足がつくだろう! と言い裏のルートと呼ばれる場所にもスパイを送り込んでいたそうだ。結局裏でも表でもネックレスは売られることがなかった。


「父上、マリーの事ですが……」


「何かあったのか!」


 顔色を変えて立ち上がる父に屋敷内を案内していて、靴擦れで足を怪我したと言うことだけは伝えておいた。医師を! と言ったがメイドが手当てをしたと伝えると、バイ菌でも入って歩けなくなってはどうする! と責められたが……皮が剥けた程度で良くある事です! と宥めた、血が出たと言っても滲んだ程度。歩き疲れたと言うのはあるかもしれない。屋敷内だけでも広い。それにまだ半分も案内してないのだ。


「明日は朝一で商人が来るからまずは靴を選ぼう。成長期だからいろんなサイズを取り揃えておかなくてはならないな」

「そうですね。あとマリーは本が好きなようですよ?」

「本か! それでは本もたくさ……ん? マリーは字が読めるのか?」


 やはり違和感があったようだ。この国の貴族は読み書き出来て当然。平民でも教育が為されていれば出来るだろうが、マリーが保護された場所は片田舎も良いところだ。普通そんな場所で教育されていたとは到底思えないだろう。実際目にしてみて驚いたものだ。


「はい。それも隣国の文字で書かれている本も読めるようでした」

 共通語があるから、会話する分には共通語で構わないが、国によって出版されている本はその国の母国語で書かれている。


「……保護してくれていたあの男性は一体何者だと言うのだ? まだトニーは戻ってきていないよな。早く報告が欲しい」


 トニーとはマリアベルを探しに行く時に必ず一緒に行っていた父の片腕と言っても良い人物だ。侯爵家の暗部を背負っていると言っても過言ではない。マリーの誘拐犯を捕まえてアジトを見つけたのもトニーの活躍があってからこそ。そのあと一人に逃げられたことにより誰よりも悔やんでいたトニーはマリアベル発見までに沢山の時間をかけて情報を仕入れていた。

 その間にいろんな噂を聞きつけ、なぜか別の事件でロマーニ家は手柄をあげてしまい、王家からの信頼がより厚くなったと言うオマケ付き。


「とりあえずマリーには根掘り葉掘り聞くのは良くないと思いました。保護してくれていた人物の元へ戻りたいと言っていました。マリーの話を聞くからには悪い人とは思えませんし、現にネックレスを売って金にしようとは思わないような人物であると思います。マリーが大事にしているクマのぬいぐるみも安物ではないと思いますし、保護されていた時に着ていたマリーの服も貴族が着るような素材ではないにしろ一般の平民が着るには上等なものだとメイドが言っていました」

 
 片田舎なのにどこで買い物をしていたのだろうか? 不思議なことが多い。
 本は高価なもので図書室があると言うのはステータスと捉えられる。それに本を読むと言うのは教養があると。言っているようなもの。


「あまり刺激しないようにしよう。知らせてくれてありがとう」

「はい、マリーが戻ってきたと言うことは貴族の子女らしく教育をすると言う事ですよね?」


「あぁ。そうしないとマリーが白い目で見られてしまう。ようやく戻ってきてくれたのだからこの生活に慣れるまでは自由に過ごさせようと思っているが、教師を誰に来てもらうかを考えないといけない。いずれ学園に入ることを考えるとマナーや勉強もしなくてはならないし、マリーが興味のあることはなんでもさせてやりたい」


 貴族としては趣味を持つことも大事だ。そこで話が盛り上がり同じ趣味の友人ができると、社交もしやすくなる。

 僕はバイオリンを習っている。母はピアノを弾いていたから一緒に音を合わせることがある。その時間は至福の時だ。








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