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ロマーニ侯爵家
しおりを挟むパパにエスコートされて夜会の会場へと足を踏み入れた。注目されているのが分かった。
下を向きそうになるとパパは真っ直ぐに前を見なさい。と言った。
「……でも恥ずかしいし、」
「マリーは可愛い私の自慢の娘だ。堂々としなさい」
パパの声は落ち着いていて安心した。
「ほら、笑ってマリー」
「う、うん」
笑えと言われてへらへら笑えるわけでもなく……ぎこちなくはあるけれどなんとか笑顔を作ることができた。
それからデビューを迎えた事で家族で王族の前に立ち挨拶をすることになった。
「其方が侯爵の娘か?」
……ドッキドキしすぎて口から心臓が飛び出しそう。
「……ロマーニ侯爵が娘マリアベルと申します。このような華やかな場所に立てることを光栄に思います」
先生にもママにも褒められたカーテシーをした。
「うちの娘可愛らしいでしょう?」
……ちょ、パパ! 陛下の前でなんてことを言うのよ! 家だけにしてよっ。
「あぁ、あの時の小さなお嬢さんが立派に成長したもんだ。改めて祝辞を。デビューおめでとう、これで君も大人の仲間入りだ」
陛下が苦笑いをしている……
「マリアベル嬢、またお茶会にお誘いするわ是非いらしてね」
王妃様にも声をかけられた。えっと……こう言う時って……うーん。
「ありがとうございます」
笑っておけば間違いないはず! 笑顔で返事をした。余計なことを言うより間違いがないハズ……気の利いたことが言えないもの。家族といる時はおまかせで……
「挨拶待ちの方がたくさんおられますから、我々はそろそろ失礼致します」
家族で礼をして陛下達の前を失礼した。挨拶は身分が高い順にするからうちは早く挨拶をすることができた。
「はぁ……緊張したよぉ」
ほっと一息付くと兄さまに、もうすぐダンスの時間だよ。と言われた。ついにこの時が来た! 猛特訓したダンスで失敗は出来ないものね!
「ダンスが終わったら王宮特製のスイーツを食べに行こう」
兄さまに言われて俄然やる気が起きた! 疲れた時には甘いものよね!
「やった!」
私が嬉しそうに返事をするとニヤリと兄さまが笑った。
「マリーはいつのまにこんなに食いしん坊になったんだろうね……うちに帰ってきた時は小食で心配していたのに……泣きながらジュースを飲んでいたのは最近の事のように思えるんだけどねぇ」
私の頭を撫でながら兄さまが言った。
「また、子供扱いして! 私は今日大人の仲間入りをしたんですよ」
白いドレスに、髪には白い薔薇を飾っている。デビュタントの衣装は白色と決まっていた。ヒラヒラとした裾のドレスは幾重にもレースが重なっていて、華奢で可憐な感じがする。パパとママが張り切って作ってくれたドレスだった。ママがデビュタントの時のドレスのデザインに似せたんだって!
デザイナーさんもママがデビュタントの時と同じ人だったみたい。
これからドレスを着る機会が増えるだろうからと多方面からドレスやら宝飾類がお祝いとして贈られた。
今まで先延ばしにしていた社交が始まろうとしている。兄さまと一緒に出られるのならそれで良いかなぁ。
「もちろん分かっているよ。この場にマリーと出席できることが本当に嬉しいんだ。できればこのままずっと一緒にパーティーに出たいくらいだよ」
「……兄さま? どうしたの?」
なんか寂しそうな顔をしているような?
「ん? 何でもないよ、そろそろかな? ホールへ行こうか」
「うん、そうだね」
デビュタントは貴族だけではなく裕福な商人の子供も招待される。年齢は十五歳から十八歳迄の間となっている。デビュタントで目立ちたい時は有力貴族がいない年に遅れてする場合もあるんだって。
うちは気にせず十五歳でデビュタントを迎えたけれど十五歳と十八歳だとやはり子供と大人くらいの差はあると思う……
ダンスの時間になり、婚約者がいる人は婚約者と。いない人は家族や親族と踊ることになる。私には婚約者がいないから兄さまと楽しく踊ることができた。
練習していた曲だったから間違いなく踊れたと思うし、兄さまのリードは上手だし兄さまとは踊り慣れているから楽しく二曲を踊ることが出来た。
「マリー素敵だったわよ!」
「妖精かと思ったらうちの娘だったのか!」
相変わらずの親バカぶりを発揮する。
「マリーご褒美のスイーツを食べに行こうか?」
「うん、行きたい」
「父上、母上、僕たちはスイーツを食べてますから楽しんできてください」
兄さまが言うとパパもママも笑顔でホールへと向かった。
「マリー、ほら見てごらん。父上と母上も楽しそうにダンスしているよ」
美男美女で優雅に踊る姿は誰の目から見ても美しかった。周りも見惚れているようだった。
「わぁ。パパカッコいい。ママもきれーい」
娘の私から見ても惚れ惚れする絵に描いたようなカップルだと思った。
その後はペルソナ公爵家のヨハン兄さんと、ハビエルとアレックスと踊った。伯父さんも踊りたいと言ったけれど身長差がありすぎて踊りにくそうだったので、泣く泣く諦めたみたい(デビュタントで私に恥をかかせられないって言っていた)
友達のアミーとジュリーもデビュタントだったので、少しおしゃべりをしたけど、今日は兄さまから離れたらダメと言われていたから、兄さまの元へと戻った。
ジェラール殿下と目があったので挨拶をしていたら、パパとママに呼ばれて殿下とは別れた。
「え、ちょ、ちょっと!」
って聞こえたけれど殿下といると目立っちゃうし聞こえないフリをした。
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