私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの

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親父にも殴られた事はない

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 マリアが帰って行った。それから誘拐組織やら犯罪組織やらの実在を各所に報告。騎士を動員して誘拐された子や売られた子を保護した。

 10人程はなんとか見つかり購入しておいた家に連れてきた。



 その子達は商人の子や平民の子だった。流石に貴族を誘拐するのは足がつきやすく止めたようだ。ロマーニ侯爵家もかなりしつこく探していたようだし、何度も危なかったと言っていた。

 仲間が何人か行方不明で、おかしいと思っていたらロマーニ侯爵家の独自の捜索で既に捕まり拘束されてロマーニ家の領地の地下牢にいると聞いた……おいおい。すげぇな。

 国王も黙認しているとか?


 心のケアの為に、人を雇い勉強をさせる事にもした。いつかは自分で生活できるようにするために自立させなきゃならない。
 親達に連絡を取り面会もさせた。家に戻るもよし、ここにいてもよしと言う事にしてしばらくは様子を見る事にした。

 そしてもうすぐマリアの18歳のバースデーパーティーが行われる。その前に侯爵との話し合いがあるのだ。

 心臓が飛び出そうなくらいに緊張していた。そして侯爵との話し合いという名の……



「やぁ、お久しぶりです。フロリアン殿」

 笑顔で迎えてくれるのは良いが、あくまで表面上の事だ。敢えて名前で呼んでくるところがまた怖い。


「お久しぶりです。本日はお忙しい中、時間をいただきありがとうございます」

 できる限り深々と頭を下げた。


「結構忙しいんだよ。愛する娘のバースデーパーティーは笑顔溢れる会にしたいと思っているからね。ところで話というのは何かな?」


 マリアベルの誘拐事件は我が国が絡んでいた事。もう知っているだろうが一から説明をした。マリアベルも西の大国の王子のせいでこの件を知っているし、夫人の姿絵を西の大国の陛下は未だに大事にしているようだし、結婚を迫られたことも知っているだろうが説明をした。俺は蛇に睨まれたカエル状態だ。


「ほぅ。それでビビってしまいマリアとの婚約を保留にしようとしていたと……思っていた以上に情けない男ですね……そんな男に娘を嫁がせるとでも?」

 ……そうなるよな。






「申し訳ございませんでした。マリアと婚約をすると言った時にマイナス要素は口にしないと約束していましたのに……情けないと自分でも反省を、」

「反省だけなら誰でもできる。娘を傷つけたか、そうじゃないかという話なんですよ。分かりますよね?」

 侯爵は良い歳なのに清々しい程イケメンだ。笑顔で威圧してくる。


「私は正直、娘が幸せになれるのなら身分などどうでも良いと思っているんですよ。それこそ平民でも王妃でもなんでも良い。貴方くらいの男なら掃いて捨てるほどいるにも関わらず、娘がなぜか貴方と結婚したいというから了承したまでです。貴方が娘を傷つけるのなら、いなくなってもらった方が都合が良いんですよね……」


 ……始末出来るぞと言う事か。平民でも王妃でも良い……中途半端な公爵家で申し訳ない。


「二度とそのような事は致しません」


「……そうだな、こう見えてむしゃくしゃしてるから、殴って良いかな? 本当は同じ空間に居るのも嫌なんだけど、娘の顔を立てて今回は許す事にした。そのかわり……お前の国の汚ねぇところは自分達で始末しろよ!」

「……はい」

 あぁ、これが本当のロマーニ侯爵の顔なんだろうな……妙に納得した。


「取り敢えず、私の分と妻の分で許すよ、二発良いかな?」


「はい」


 侯爵がどのレベルか分からないが、歯を食いしばった。グーでくるかパーで来るか……



「ゴフッ……」



 まさか腹にボディブローとは……そしてよろけたところで腹を足蹴りにされ、膝をついた。酸っぱいものが上がってくるようだ。


「顔に傷付けると娘が悲しむといけない……本当はその顔を思いっきり殴ってやりたいが譲歩した」


「……お気遣いいただきありがとうございます」


 この力だと顔を殴られると歯が一本や二本じゃすまなかったかもしれない。


「体に傷がついたくらいじゃ分からないだろうし鍛えているから問題ないよな。蚊に刺されたくらいか……まさか服を脱ぐような関係になっていないよな?」


 侯爵の目が恐ろしく光る……


「とんでもありませんっ!」


 あの時の俺、よく耐えた! マリアは18歳になった。美しさに磨きがかかりあと数ヶ月耐えられる自信がないのだが、それまでに何かあったら今日のこの日のことを思い出そう。


 マリアのバースデーパーティーは明後日。まだマリアには会っていない。まずは侯爵と話をしてからだと思ったから。

「義理の息子になる訳だから私の本性も隠すのはやめだ」


 侯爵が王家に重宝される理由は裏社会を封じる事と上手く使う事で国に利益になるのだ。裏社会ルートでの情報は全て侯爵の耳に入る。きな臭い事が多い貴族社会で犯罪が少なくなったのはロマーニ侯爵家、ペルソナ公爵家の働きがあっての事だ。表立ってはいないが知る人は知るのだが、知ったものは口を閉ざす。

「……見た目によらずお強いのですね。膝をついたのは久しぶりでした」

 見た目は線は細いがしなやかな筋肉がついている爽やかそうに見えるイケメン。


「見た目がこんなだと敵は油断するだろう?娘が攫われた時は私が未熟だったせいだ。君もこの件で敵が増えるだろう。よく考えて行動する事だな。マリアに何かあったら……君の国無くなっちゃうかも知れないよね」

 ……恐らく諜報が動いているんだ。国が無くなると言うか王家を潰すって事か。国の存亡が俺にかかってくるとは……


「肝に銘じます」

 
 
 
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