身分を捨てて楽になりたい!婚約者はお譲りしますわね。

さこの

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侯爵令嬢ですの

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 わたくしの名前はヴィクトリア・ド・リッシュと申しますの。どうぞよろしくお願いいたします。

 リッシュ侯爵家の長女で十七歳。わたくしは両親と兄と妹がいる五人家族で、クレーヴス王国という緑豊かな国で育ちましたの。

 我が家は侯爵家という事もありこのクレーヴス王国では五つの指に入るほどの有名な家でもあり資産家でもあります。

 そう言った経緯から、わたくしが七歳の頃に第三王子との婚約が決まってしまいました。年齢がちょうど良かったのでしょうね。

 決まってしまいました。と言ったのには訳があります。七歳ですからまだ男女の好きとかそう言った感情とかは全く皆無。年齢が近くてたまーに遊んでいたから大人の事情で婚約させられた、よくある政略結婚ですわねぇ。

 その後は特に好きだの、愛してるだの。そう言った雰囲気も皆無。

 【肩書き】第三王子の婚約者の侯爵令嬢と言うわけですわ。


 貴族のしきたりなんて面倒くさいし正直言って王子との結婚なんてしたくないですもの。



 ……と言うのもわたくしどうやら、前世の記憶があるようで、この国とは違うニホンと言う国の記憶がうっすらあるようです。あれはわたくしが八歳の時でしたわ。

 二つ歳上のお兄様とお庭で遊んでいた時の事。危ないから近くに寄ってはダメだと言われていたのに池の中がどうしても、どうしても気になってしまって覗いていたら、すってんころりん……頭から池の水にダイブしてしまいましたの。


 バッシャァァァァァーーーン!!


 ダイブしたことにより水飛沫が盛大に飛び散りましたわ。大きな音がしたことによりお兄様に気づいてもらえて……良かったですわ。


 貴族のドレスってフリフリでしょう? 見ている分には可愛らしいですし優雅に見えるようですが、実際は重たいですし歩きにくいのです。それが思いっきり水に浸ると……ご想像の通りです。


 溺れてしまいましたの。


 十センチの水でも人は溺れると聞いたことがありますが、錘を着ているようなものですもの。声にもなりませんでしたわ。



「ヴィー!!」



 お兄様が私を助けるために、飛び込んでくださって侍従や護衛三人に抱えられてようやく池から脱出。

 お兄様の足が余裕で着くほどの深さだったようですが、わたくしが足をつけたところで顔も出ませんわよ。まだ成長途中でしたもの。

 その後高熱を出すと言うよくある? パターンに見舞われ、生死を彷徨い……ニホンと言う国の記憶が蘇ってきたのですわ。


 でもこんなことを言ったら、頭がおかしな子だと思われてしまうのでわたくしだけの秘密ですのよ。


 それからちょっとしたトラウマになり水は苦手……湯船に浸かる時も溺れてしまわないように私についてくれている侍女やメイドが声をかけてくれるのです。


 前世だとこんな待遇は受けられなかったでしょう。おそらく小市民でしたもの。

 ドレスだってあれ以降極端なフリフリは避けるようになりました。

【フリルはおもり!】 

 合言葉にしましょう。


 貴族で生まれたけれど小市民の心を持って育ってきたわたくしです。王子の婚約者なんて大役は無理です……うっすら前世の記憶があるとはいえ、急に色んなことに対してやる気が起こるわけも無く……出来ることならこの婚約を回避したいと思うようになりました。


 こんなことなら池に落ちた時に、顔にでもちっちゃく傷が残れば傷モノ? として婚約解消が出来たのに! お嬢様なのに身体は丈夫なんだから


 ……両親に感謝ですわね。


 傷どころかシミ一つない陶器のように艶のある肌……わたくしが言うのもおかしな話ですが侯爵令嬢であるわたくしは側から見ても美しいですもの。まぁこの肌質はメイドによって保たれていると言っても過言ではありませんわね。お手入れしてもらってますもの。
 毎日エステに通っている状態。メンテナンスはバッチリ! と言った感じがわかりやすいですわね。


 わたくしの紹介は以上です。はぁ。今から週に一度の王子妃教育の為に王宮へと参ります。気が重いです。








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