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王子は居ないようですわ
しおりを挟む「ヴィクトリア様、完璧です! もうお教えすることがないほど優雅です」
本日は王妃様とお茶会。のついでにマナー講師も付いてのテストのようなもの。マナー講師に褒められると周りは笑顔で答えてくださりましたわ。
王太子妃のエステル様に、第二王子殿下の婚約者(来月婚姻予定)アデール様もご一緒でした。ロイヤルなお茶会でしょう? 息苦しい気持ちを顔に出さないのは貴族の仮面を被っているからですわよ。
何度も言うけれど小市民の心を持つ侯爵令嬢、それがわたくし。
「アデールの結婚式のドレスも出来上がりましたし、来月が楽しみねぇ」
優雅にティーカップを置きながら王妃様がおっしゃいました。この国のトップレディとのお茶会ですわよ? 疲れますでしょう?
「はい。ジョエル様もお忙しい中、結婚式の準備を手伝ってくださっています」
とても幸せそうにアデール様が笑みを漏らしました。幸せオーラがわたくしにまで伝わってきますわね。
第二王子ジョエル様と伯爵令嬢アデール様の結婚式は大聖堂で行われます。三日に渡る盛大なものになるとのことですわ。
第二王子のジョエル様とアデール様は、幼馴染で恋愛関係にあり婚約者となりました。ジョエル様は騎士団長を務めていらっしゃるとってもお強い方で周りからも慕われている尊敬出来る方です。
幼い頃からアデール様一筋でいらっしゃってラブラブなんですのよ!
「先ほどジョエル様とお会いしましたが、ご機嫌で結婚準備を手伝っていましたわよ。アレクセイ様は全く手伝ってくださらなかったものですから、アデール様を羨ましく思いますわよ」
アレクセイ様と言うのは王太子妃であるエステル様の旦那サマ。この国の王太子殿下ですわ。手伝ってくれなかったとエステル様は仰いましたが、お忙しいアレクセイ様の事を思ってエステル様が(ご実家である公爵家の皆様を含め)頑張っていた事を皆さん知っていますのにね。
「アレクセイとジョエルが落ち着いたから、後はライアンね。本当に三人とも相手に恵まれてわたくしは嬉しいわ。こんなに素晴らしい娘が三人も出来るなんて!」
あっ! ライアンというのは第三王子のお名前ですの。そうですわたくしの婚約者様ですわね。
ジョエル様とアデール様が結婚してしまうと次はわたくしたちの番……プレッシャーですわよ。
「そういえば……最近ライアン様のお姿を拝見していませんけれど、ヴィクトリア様はお会いしていますのよね?」
エステル様に言われ、ドキッとした! 王子妃教育のある週に一度はライアン様とのお茶会の日でもある。それをすっぽかされてラッキーと思って、実は一ヶ月ほど会っていませんの。バレてしまっては仕方がありませんわ。
「あ……ここ最近はすれ違っていまして」
しどろもどろと言った感じで答えると、王妃様がおっしゃいましたわ。
「後でライアンに言い聞かせておきます。婚約者を放ってどこに行っているのかも含めてね」
わぁ……その笑顔が怖いですわ、王妃様! 早くお家に帰りたい。わたくしの切実な願いも叶わずお茶会は続きます。エステル様とアデール様がいてくださって助かりましたわね。
******
「ベラ! 待たせたね」
平民が着るような簡素な服を纏っているが生地が良くスタイルが良いので目立つ男がベラという少女と待ち合わせをしているようだ。
「ライ! 遅かったね」
頬を膨らませながら怒る姿を見て男は、頬を緩める。
「ごめん。中々抜け出すことができなくて」
パンっと軽く両手を顔の前で叩き許して欲しいと片目を瞑るような仕草をしていた。
「ライはなんの仕事をしているの? 身なりも良いし……もしかして貴族様なのかなって……それなら身分が、」
ベラが全てを言う前にライが話をした。
「ごめんね。身分とかもうそう言うのは流行らないだろ? だから黙っていた。私達はお互いに好意を持っているのだからベラには私の身分を気にして欲しくない。ちゃんと責任を取るつもりだから安心して欲しい」
ライがベラの手を繋ぐとベラは嬉しそうに笑った。
「両親に会ってくれるって言ったのは本当だったの?」
「あぁ、近いうちに会いに行くよ。安心して待っていて」
ベラの実家は商家で王都に暮らすそこそこの家の子だ。と言っても身分は平民。
ライと言っているがこの男の正体はこの国の第三王子のライアンと言う。婚約者には侯爵家の令嬢ヴィクトリアがいる。
側から見たら浮気とも……真実の愛とも呼べるだろう。
ライアンはヴィクトリアの事を政略結婚の相手としか思っていなかったから。
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