身分を捨てて楽になりたい!婚約者はお譲りしますわね。

さこの

文字の大きさ
2 / 35

王子は居ないようですわ

しおりを挟む

「ヴィクトリア様、完璧です! もうお教えすることがないほど優雅です」


 本日は王妃様とお茶会。のついでにマナー講師も付いてのテストのようなもの。マナー講師に褒められると周りは笑顔で答えてくださりましたわ。


 王太子妃のエステル様に、第二王子殿下の婚約者(来月婚姻予定)アデール様もご一緒でした。ロイヤルなお茶会でしょう? 息苦しい気持ちを顔に出さないのは貴族の仮面を被っているからですわよ。

 何度も言うけれど小市民の心を持つ侯爵令嬢、それがわたくし。

「アデールの結婚式のドレスも出来上がりましたし、来月が楽しみねぇ」


 優雅にティーカップを置きながら王妃様がおっしゃいました。この国のトップレディとのお茶会ですわよ? 疲れますでしょう?


「はい。ジョエル様もお忙しい中、結婚式の準備を手伝ってくださっています」

 とても幸せそうにアデール様が笑みを漏らしました。幸せオーラがわたくしにまで伝わってきますわね。


 第二王子ジョエル様と伯爵令嬢アデール様の結婚式は大聖堂で行われます。三日に渡る盛大なものになるとのことですわ。

 第二王子のジョエル様とアデール様は、幼馴染で恋愛関係にあり婚約者となりました。ジョエル様は騎士団長を務めていらっしゃるとってもお強い方で周りからも慕われている尊敬出来る方です。

 幼い頃からアデール様一筋でいらっしゃってラブラブなんですのよ!


「先ほどジョエル様とお会いしましたが、ご機嫌で結婚準備を手伝っていましたわよ。アレクセイ様は全く手伝ってくださらなかったものですから、アデール様を羨ましく思いますわよ」


 アレクセイ様と言うのは王太子妃であるエステル様の旦那サマ。この国の王太子殿下ですわ。手伝ってくれなかったとエステル様は仰いましたが、お忙しいアレクセイ様の事を思ってエステル様が(ご実家である公爵家の皆様を含め)頑張っていた事を皆さん知っていますのにね。


「アレクセイとジョエルが落ち着いたから、後はライアンね。本当に三人とも相手に恵まれてわたくしは嬉しいわ。こんなに素晴らしい娘が三人も出来るなんて!」


 あっ! ライアンというのは第三王子のお名前ですの。そうですわたくしの婚約者様ですわね。

 ジョエル様とアデール様が結婚してしまうと次はわたくしたちの番……プレッシャーですわよ。


「そういえば……最近ライアン様のお姿を拝見していませんけれど、ヴィクトリア様はお会いしていますのよね?」


 エステル様に言われ、ドキッとした! 王子妃教育のある週に一度はライアン様とのお茶会の日でもある。それをすっぽかされてラッキーと思って、実は一ヶ月ほど会っていませんの。バレてしまっては仕方がありませんわ。


「あ……ここ最近はすれ違っていまして」

 しどろもどろと言った感じで答えると、王妃様がおっしゃいましたわ。


「後でライアンに言い聞かせておきます。婚約者を放ってどこに行っているのかも含めてね」

 わぁ……その笑顔が怖いですわ、王妃様! 早くお家に帰りたい。わたくしの切実な願いも叶わずお茶会は続きます。エステル様とアデール様がいてくださって助かりましたわね。


******



「ベラ! 待たせたね」

 平民が着るような簡素な服を纏っているが生地が良くスタイルが良いので目立つ男がベラという少女と待ち合わせをしているようだ。

「ライ! 遅かったね」


 頬を膨らませながら怒る姿を見て男は、頬を緩める。

「ごめん。中々抜け出すことができなくて」

 パンっと軽く両手を顔の前で叩き許して欲しいと片目を瞑るような仕草をしていた。

「ライはなんの仕事をしているの? 身なりも良いし……もしかして貴族様なのかなって……それなら身分が、」

 ベラが全てを言う前にライが話をした。

「ごめんね。身分とかもうそう言うのは流行らないだろ? だから黙っていた。私達はお互いに好意を持っているのだからベラには私の身分を気にして欲しくない。ちゃんと責任を取るつもりだから安心して欲しい」

 ライがベラの手を繋ぐとベラは嬉しそうに笑った。


「両親に会ってくれるって言ったのは本当だったの?」

「あぁ、近いうちに会いに行くよ。安心して待っていて」


 ベラの実家は商家で王都に暮らすそこそこの家の子だ。と言っても身分は平民。



 ライと言っているがこの男の正体はこの国の第三王子のライアンと言う。婚約者には侯爵家の令嬢ヴィクトリアがいる。


 側から見たら浮気とも……真実の愛とも呼べるだろう。


 ライアンはヴィクトリアの事を政略結婚の相手としか思っていなかったから。




しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。 ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。 しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。 もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが… そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。 “側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ” 死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。 向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。 深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは… ※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。 他サイトでも同時投稿しています。 どうぞよろしくお願いしますm(__)m

婚約破棄ですか?勿論お受けします。

アズやっこ
恋愛
私は婚約者が嫌い。 そんな婚約者が女性と一緒に待ち合わせ場所に来た。 婚約破棄するとようやく言ってくれたわ! 慰謝料?そんなのいらないわよ。 それより早く婚約破棄しましょう。    ❈ 作者独自の世界観です。

運命の恋は一度だけ

豆狸
恋愛
王宮から招かれているのです。 マルクス殿下の十歳の誕生パーティへ行かないわけにはいきません。 けれど行きたいとは思えませんでした。行ったら、なにか恐ろしいことが起こりそうな気がするのです。今すぐにではなく、もっと未来、時間を経た後に……

復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~

水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。 ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。 しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。 彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。 「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」 「分かりました。二度と貴方には関わりません」 何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。 そんな中、彼女を見つめる者が居て―― ◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。 ※他サイトでも連載しています

[完結]「私が婚約者だったはずなのに」愛する人が別の人と婚約するとしたら〜恋する二人を切り裂く政略結婚の行方は〜

h.h
恋愛
王子グレンの婚約者候補であったはずのルーラ。互いに想いあう二人だったが、政略結婚によりグレンは隣国の王女と結婚することになる。そしてルーラもまた別の人と婚約することに……。「将来僕のお嫁さんになって」そんな約束を記憶の奥にしまいこんで、二人は国のために自らの心を犠牲にしようとしていた。ある日、隣国の王女に関する重大な秘密を知ってしまったルーラは、一人真実を解明するために動き出す。「国のためと言いながら、本当はグレン様を取られたくなだけなのかもしれないの」「国のためと言いながら、彼女を俺のものにしたくて抗っているみたいだ」 二人は再び手を取り合うことができるのか……。 全23話で完結(すでに完結済みで投稿しています)

あなただけが私を信じてくれたから

樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。 一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。 しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。 処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。

恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ

恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。 王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。 長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。 婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。 ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。 濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。 ※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

処理中です...