上 下
4 / 35

孤児院訪問ですわ

しおりを挟む

「「「ヴィーーー」」」

 ヴィクトリアという名前は少々長いので小さい子たちはわたくしのことをヴィーと呼びます。そう呼ぶようにとわたくしが提案いたしましたの。しかし孤児院を出る頃には、わたくしのことをヴィクトリア様や侯爵令嬢と呼ぶようになるのです。成長ですわね。

 あら。可愛らしい事ですわ。孤児院の子供たちがわたくしに駆け寄って来てくれましたわね。


「今日のお菓子なぁに??」


 お菓子に興味がありますのよ。


 少しがっかりしている事を一緒に来てくれた執事のデビスに気づかれましたわ。くっくっくっと肩を震わせながらお菓子の入ったカゴをわたくしに渡して来ました。


「今日はカップケーキですのよ」


 子供たちに渡すと、みんながわーーーい! と喜んでくれました。この笑顔が見たくて孤児院の訪問をしているのです。


 お菓子を一生懸命食べている子供たちを見ていると癒されますわね。あら、頬張りすぎて喉に詰まった子がいますわ。大変ですわ!

 果実水の入ったグラスを渡して飲ませました。

「はぁ……ヴィーねぇちゃんありがとう」

 少し涙目になった子の背中をさすりましたわ。

「お願いだからゆっくり食べてちょうだいね。まだまだありますからね」


 お菓子を食べ終わった後は絵本の読み聞かせをしていますの。今日の本は王子様とお姫様が紆余曲折の末に結ばれると言う王道ストーリーでしたわ。

「パレードでみたよー。おうじさまとおひめさまー」


 先日の結婚式ですわね。王都をパレードしたのですもの。子供たちもパレードを見ていましたのね。


「ヴィーおねーちゃんもパレードするの? 見たい見たい」

「「「見たいー!!」」」


 貴族である事はなんとなく知っていると思いますけれど王子の婚約者という事は知らないはずですが、この子たちにとっては貴族であるわたくしもお姫様なのでしょうね。


「ど、どうかしら。多分しませんわね」


 「「「えぇー! 見たいー」」」


 困りましたわね。目線で執事のデビスに助けを求めましたわ。


「こちらのお姫様は、とても恥ずかしがり屋ですので、期待をしない方が宜しいかと……さぁ、皆さん院長先生がお手伝いをしてほしいと言っていますよ」


「「「はーーい!」」」


 元気で素直で可愛いらしいわ。ここの孤児院の院長先生は元貴族だったと聞いた事がありますの。この孤児院の素晴らしさは子供たちに文字やマナーを教えて、希望者には将来貴族の屋敷への就職をさせたり、働き口を探してあげる事。就職をした子たちは孤児院に感謝をしてお給料をもらえるようになると、寄付をする子やお手伝いに来る子もいるのですって。

 院長先生は生涯結婚はしないけれど子供がたくさんいて、素直に育ってくれる事が嬉しいとおっしゃるので、わたくしも微力ながら子供たちと触れ合うようにしているのですわ!


 近くでわたくしの挨拶の仕方ですとか話し方ですとか立ち振る舞いを見せるだけでも子供たちは勝手に覚えるのだそうですわ。
 子供の吸収力の速さには驚きを隠せませんわね。


 あっ! 遊ぶ時とおやつの時間は子供らしく元気に楽しく! ですのよ。


 我が侯爵家にもこの孤児院出身の使用人がいますのよ。とってもまじめに働いていてお母様も褒めていらしたわ。来期からはお給金もアップするようですわ! わたくしも自分のことのように嬉しいですわ。 


「お嬢様、そろそろお時間です」

 デビスに言われて外見ると日が暮れようとしていました。子供たちのお手伝いは夕飯の支度です。畑に行き野菜を取ってくる子、野菜を洗う子、少し大きくなると包丁を使う子までいますのよ!

「院長先生、それではわたくしは失礼いたしますわ。また寄らせていただいてもよろしいですか?」

「いつもありがとうございます。子供たちも喜びますよ。ヴィクトリア嬢はお手本のような挨拶を教えてくださいますし、美味しいお菓子をいつもありがとうございます。感謝いたします」



 挨拶をして孤児院を出ましたわ。馬車は孤児院から離れたところに待機させていますの。帰りは王都を少し散策がてら歩いて馬車まで行きますの。その方が楽しめますでしょう?


 夕飯の買い物をしているご婦人や仕事帰りにエールを一杯飲む男性の姿。少し慌ただしいこの時間が意外と好きなのですわ。この国を知るためには市民の生活を感じることが大事ですものね。


 人にぶつからないように気をつけて歩いていますと、デビスが何かを見つけてわたくしの腕を取り建物の影に隠れるように身を潜めましたの。急で驚きましたわよ!


「なにがあったの? どうして隠れなきゃ、」

「しっ!」

 口に人差し指を立てて静かにするようにと言われましたわ。何か面白いものでも……





 


 まぁ! なんということでしょう。






 あれは、ライアン様? 女性と手を繋いで仲良さそうに……デート中? ですわよね。



「わたくしの目が狂っていなければ前方に女性とデートするライアン様の姿が見えますわ」


「そうですね。間違いなさそうです」


「昨日話があると言っていたのはこの件なのではなくて?」


「……私には分かりかねます」



 そうですわよね。デビスはそう言うしかありませんわよね。


******

 ホットランキング入りありがとうございました!(* ᴗ ᴗ)




 
 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

悪役令息になんかなりません!僕は兄様と幸せになります!

BL / 連載中 24h.ポイント:4,352pt お気に入り:10,286

今までお姉様だから我慢していましたが、もうそろそろ限界ですよ?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:2,256

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:18,097pt お気に入り:7,956

カクヨム、noteではじめる小説家、クリエーター生活

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:14

3獣と檻の中

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:535

幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:25,098pt お気に入り:3,541

処理中です...