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リアの
しおりを挟む「今まで黙っていてすみませんでした」
デビスがリアに頭を下げた。
「どうしてデビスが謝るの?」
「俺の出身をお嬢様に聞かれた時に話をしませんでした」
そう言うこともあったな。と思い出す。聞かれたくないことって誰にでもあるもの。
でも両親が連れてきたと言うことは、信用できる相手と言うこと。まだあの時は私も小さかったから、デビスに信用されていなかっただけかもしれないし、それ以上は聞くことはなかった。面白おかしく聞くのも違うものね。
「話をしてくれたって言うことは、デビスは私を信用してくれているって事でいいのよね? それなら嬉しいわ」
そう言って笑った。
「……もちろんです。侯爵夫妻からお屋敷に来るよう誘って貰って、初めてお嬢様を紹介されたあの時からあなたを信用しています」
真剣な顔付きのデビス
「俺には姉が一人いて、帝国の貴族に嫁いでいます。俺は家を継ぐことなく帝国を去りました。汚い手を使う貴族が嫌いだ……貴族なんて信用できないと思っていたところに、侯爵夫妻がわざわざ弔いに来てくださった。話せば話すほどこんな貴族も居るんだと思いました。俺は小さい頃から騎士に憧れていて剣術を習っていて、それならお嬢様の護衛をしてみないか? と誘われました。その後執事も探すと言っていたので兼任として仕えさせていただいて居ました」
私たちは二階に場所を移して話をしていた。いつものダイニング。
「そうだったのね……ご両親との思い出のこの国に私を連れてきてくれてありがとう。私の我儘を聞いてくれて……ありがとう」
自分の我儘でふり回りしてしまったデビスに申し訳ないと思う。
「お嬢様に聞いて欲しかったのかもしれませんね。お嬢様が王子殿下と結婚をしたくなくて、侯爵令嬢という身分を捨てると言った時は助けになりたいと思いました。お嬢様が急に平民の暮らしが出来るとは思っていませんでしたから。でも意外と楽しんでいるようでホッとしましたけどね。このカフェは両親と何度か来たことがあって、気のいいご夫婦が経営されていたんですよ。娘さんの住んでいる街へと引越しされたみたいで、ちょうど空き物件となっていたんだ。俺の思い出に付き合わせたみたいな感じになってしまいました」
デビスの過去を聞いて嬉しい気持ちになっているのは言ってもいいのかなぁ……。私のことも聞いてほしいと思った。
「あのね、内緒にしていたことがあるの。驚くと思うけれど聞いてほしいの」
「はい」
******
そう言ってお嬢様は話を始めた。どうもお嬢様はちいさいころに池に落ちた時、ある記憶が蘇ったようだ。
「前世の記憶ですか?」
「えぇ。私ね前世では小市民だったの。だから貴族と言う身分は息苦しくて、王子の婚約者なんて……正直言って辛かったの。ライアン様とも仲良く出来たら良かったのだけど、そうはいかなくて……私が小市民の心を持っているからライアン様と釣り合わないと思っていたら、ベラさんと言う彼女がいて私の存在価値がわからなくなってしまったの。はじめに家を出ようとした時はたしかに浅はかだったと思う。デビスが居てくれなかったらきっとこんな穏やかな日々が過ごせなかったと思うし」
池に落ちた……と聞いたことがある。俺が、お嬢様と会う少し前の事だ。高熱が出て寝込んでいたとか。小市民の記憶が、戻ったことによりライアン殿下と釣り合わないなんてことなんてないのに。お嬢様はそのままで魅力的なのに。逆に王子の方がお嬢様に釣り合わないくらいだ!
「俺はただ自分のことしか考えていなかったのかもしれません。お嬢様のためと言いながら、お嬢様に捨てられたくなかっただけです」
お嬢様と離れたくなかったから。身分を捨てた俺は伯爵家の子息でも次期伯爵家当主でもなんでもない。釣り合わないんだ
「この国に来て夫婦だなんて偽って、嘘でも良いからお嬢様と一緒にいたいと思ってしまった俺のエゴに付き合わせてしまったんです」
こんなこと言ったら引かれるかも知れない。
「それは違うでしょ! 私の我儘を、デビスが受け入れてくれたの。デビスは私が侯爵家のお嬢様だから渋々受け入れていたのではないかと……デビスの人生を狂わせてしまったのではないかと自問自答の日々だったわ。でもデビスと過ごす時間はのんびりして私の求めるものだったからこのままでいたいって思ってしまって」
「それは……どう言う?」
「楽しいから。両親には申し訳ないって思いながらも、この国でデビスと生活することが……一緒に居て欲しいけれど、デビスが望んでいないのなら、」
「ん? 俺の話聞いてました? お嬢様と一緒に居たいのは俺の方なんだけど……俺は! お嬢、いやヴィクトリア、あなたのことが好きなんです。侯爵家の令嬢ではなく、前世の記憶を持っていてもそれを含めて今のヴィクトリアが好きなんです!」
「……本当に、良いの?」
「しつこいです! ヴィクトリアがなんと言おうとも来年この国で夫婦になりましょう。ヴィクトリア、俺の家族に会ってくれる?」
スッキリした優しい顔でヴィクトリアを見るデビス
「帝国にいるお姉様?」
「それもそうだけど、両親の墓参りに。この国で両親は眠っているんだ。貴族でなくなりこの国に来て家族四人で暮らしている時も二人は穏やかに暮らしていた。両親は貴族に裏切られたのにそれすら運命だと言って、この国に来てこの国の暮らしに馴染んでいった。まるでヴィクトリアみたいだろ? 侯爵家のお嬢様だったヴィクトリアも好きだったけど、一緒に暮らすうちにいろんな面を見させてもらった。ヴィクトリア、今のあなたを愛しています」
「……私も、デビスが好き。一緒に居たい」
目をぎゅっと瞑り下を向くヴィクトリア
「はい。喜んで」
ようやく気持ちを伝えあった二人。デビスは立ち上がりヴィクトリアを抱きしめた。
******
それから数週間後……デビスの報告によりデビスの姉と義兄が子爵家を訴え受理され、子爵家はお家断絶となった。子爵家の領地で奴隷同然で働いていた者たちも解放された。
デビスと姉はようやく両親の仇を討った。
しばらくして
「お父様、お母様、お兄様、ジュリア!」
ヴィクトリアの兄の結婚式が侯爵家の領地でお互いの家族のみで厳かに行われた。
「ヴィー! 元気だったか?」
「あら、うちにいたときより、生き生きして見えますわ」
目に涙をうっすら浮かべて母がいう。
「ご心配をおかけしました。みんなのおかげで今の私がいます。家を出て迷惑をかけたのに心遣いありがとうございました」
両親に頭を下げるヴィクトリア
「ヴィーの様子を見ると荷物に忍ばせた宝石類にはまだ手をつけていなさそうだな」
「お兄様! ご結婚おめでとうございます。除籍を願った身の私が来るとお相手の家族に迷惑がかかるのではありませんか?」
行けない。そう思っていた。でもデビスが大丈夫だから行こう。と連れてきてくれたのだ。
「迷惑なものか! ヴィーが来てくれないと家族だけで式を挙げる意味がないではないか!」
「お兄様……ありがとうございます」
「披露パーティーは、別の日に王都で行う予定だ。気にするな!」
「はい」
「お姉様!」
「ジュリア! 私の代わりに孤児院へ行ってくれているのでしょう? ありがとう」
ジュリアに、抱きつくヴィクトリア
「お姉様のおかげでわたくしにも運命の出会いがありましたの。今度紹介しますわね」
「まぁ! どう言う出会いを?」
孤児院へ通うジュリアをたまたま見かけた公爵家の子息。それから何度もジュリアを見に街へと行っていたそうだ。
その後ある舞踏会で友人の婚約者経由でジュリアを紹介してもらった。それが縁で婚約することになったのだという。
「お姉様は今幸せですか?」
「えぇ! とっても幸せよ。こうやって家族にも再会出来て……デビスが一緒に居てくれるんだもの」
両親と話をするデビスに目を向けた。元々整った顔立ちをしていたが冷たいイメージの印象だったデビスが柔らかい表情をしていた。
「お姉様が幸せなら良かったですわ!」
「ありがとう。ジュリアも幸せにね」
家族と再会したヴィクトリア。
しばらくして中立国で過ごして一年が経とうとしていた。お互いの気持ちを今一度確かめ合い、夫婦になることになった。
街の小さな教会で結婚式を挙げる事になる。
「ちぇ! リアちゃん今なら間に合うよ。私と結婚しないか?」
アルフォンソが言うとデビスがすかさず
「あの時のお礼をしてもらいます。妻に対しての下心を一切捨ててください」
にこりと笑いヴィクトリアを背中に隠すデビス
「なんだよ! 君たちの保証人の一人に私もなってあげたのに!」
ぶつぶつと文句を言うアルフォンソだが今ではデビスと友達のような関係になっていた。
「「ヴィクトリア」」
「お父様、お母様?!」
「俺が声を掛けて来て頂いたんだ」
「「デビス!」」
「姉上、義兄上、わざわざありがとう」
お互いの家族だけ(?)の式だけど小さな教会で私は満足だった。
【完】
******
なんとか今年中に終わらせることができました。最後までお読みいただきありがとうございました。
私ごとではありますが、12月は忙しく満足にコメントに対してお返事が返せませんでした。毎日休みなく仕事に行き毎日残業で疲れ果てていました……(ブラックですね)ようやく休めます.ᐟ.ᐟ
新作はI月中に……と思っています。ストレスなく読んでいただけることかと思います。(自称)悪役令嬢?の予定です!
そして今年もありがとうございました! 良いお年をお迎えくださいませ( ๑⃙⃘ˊᵕˋ๑⃙⃘ )
2021.12
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ライアンの事情で、かくゆう私も〜とありますが、かくいう私も〜の間違いではないでしょうか?
すごく温かく、天然なヴィクトリアさんとデイビスさんが良かったです。少しはらはらしながら読み進めましたが、楽しくあっという間によんでしましました。これからも楽しみにしています。
完結お疲れ様でした!!
リアルがお忙しい中での更新、本当に尊敬します!!
次作、楽しみにしています♪