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王都に戻る日
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お父様が迎えに来た。学園に入学する為王都の邸に戻る事になった。
「えー。帰りたくない。王都の学校じゃなきゃダメ?」
「貴族の学園は王都にしかない」
「やっぱりダメか……リューはどうする?」
身体は丈夫になっているけどたまに咳をする事もある。本人は隠しているけれど知っている。
「一緒に行くよ。領地に来たければいつでも来れるからね」
病弱だったリューの口からそんな事が聞ける日が来るなんて。領地についてきて良かった。私の入学と共に家族で王都へ戻る事になった。帰りはルート変更をして豪華なホテルに家族で泊まったりして旅行気分だった。
「わぁ。久しぶりに王都に来たけれど変わったようで変わってないね」
工事は続いていて、いまだ埃っぽい。お父様はリューに手洗いうがいの徹底と週に一度お医者様に診てもらうことなどを約束させていた。リューも返事をしていたし、埃を吸わないように出かける時は口を覆うようにと徹底していた。
弱っているリューを見たくないし、リュー自身が嫌だろうし、皆に気を遣われたくないだろうから、この件に関して口出しをしてはいけないと思った。
さっそく明日は出来上がった制服の確認をするようだし、教科書とか筆記用具を揃えるために商人が家に来るんだって。王都に戻る旨を友人達にも伝えてあるから、近々近況報告を兼ねてのお茶会をする予定もある。学園の情報も聞いておきたい。
翌日制服を合わせていると、お母様の友人が来ていてお茶会をするとの事。学生時代からの友人達で今も仲が良い。後で挨拶にくるようにと言われて制服や必要なものを揃えた後、挨拶へと行く。
「あら、オフィーリアちゃん、しばらく見ないうちになんて可愛いらしいレディになったのかしら」
ハリーのお母様だわ。久しぶりに会った。領地での暮らしが楽しくてすっかり忘れていた……
「おばさ、」
っと。お母様の友人とはいえ、おばさまというのも失礼よね。久しぶりにお会いしたのだから
「失礼致しました。子爵夫人お久しぶりです。お会いできて嬉しいです。お元気でしたか?」
「まぁ、オフィーリアちゃん。今まで通りおばさまで良いのよ。他人行儀な呼び方はよして頂戴な」
他人です。
「勿体無いお言葉ですわ。子爵様やハリー様も元気にしておられますか?」
「もう、オフィーリアちゃんったら。今まで通りで良いのに。主人もハリーも元気よ。良かったらまたハリーと仲良くしてあげてね。オフィーリアちゃんが領地へ行ってしまって寂しがっていたのよ」
気楽に話せる相手がいなくなったとかそんなレベルでしょう。学園ではきっとモテているでしょうから(顔が良い分)私のことを思い出す暇なんてないはず。本当に寂しいと思っているなら手紙の一つでもよこしてくるだろうから。それもなかった。故にどうでも良いとか思っていたんだろうと、想像がついた。
「私たちも年頃ですから以前のように……というわけにはいかなさそうですが、機会があればご挨拶したいと思います」
にこりと笑い、他にも来ていたお母様のお友達に挨拶をした。中には息子と一度会ってみない? といったお誘いもあった。
「機会があれば? その、是非……」
会いたいとは思わないのだけど断るのも失礼なのかもしれないし、しどろもどろになって答えた。
「……なんで疑問系なのよ。ごめんなさいね。王都に戻ってきたばかりで学園の準備もバタバタとしていてまだ余裕がないっていうのは本当なのよ。アンドリューも向こうで療養して元気になってきたものだから、この子達どこへ行くかとかそんな話ばかりしていて……」
新しいお店がたくさん出来ているんだもの。行かなきゃ勿体無いでしょ! 正直流行りとか分からないから、付いてかなきゃバカにされるよね?
「あら。変わらず仲が良いのね。アンドリュー君はお姉様っ子だったものね」
ハリーの母、子爵夫人が懐かしそうに言った。
「オフィーリア、忙しいのに挨拶に来てくれてありがとうね。戻って良いわよ」
礼をして邸に入った。商人は学用品以外にも品物を持ってきてくれていて、気に入ったものは購入してもいいとお父様が言ってくれた。アンドリューはまだ本を選んでいたので、私もその様子を眺めていた。
イラストが多い本って見ていて楽しいわよね。そう思い何冊か手に取った。するとなぜか先生も参加し始めていた。先生は領地にいる間だけではなく王都に戻ってきても私達の先生をしてくれることになった。
「給料も申し分なく、寝食にもありつける。研究費まで援助してくださるのだから、お嬢様には上の下と言わず上の中くらいの成績をお約束します」
先生はお父様に宣言していた。ガリ勉反対! 普通で良い! と私が言っても、先生がやる気になっているのだから期待に応えなさい。と言われた!
リューはすでにトップクラスに入れるくらい優秀だし、先生は研究者なのにリューの剣術の相手までしているからお父様やお母様からも気に入られて信頼があるのよね。
一体何冊選んでいるよの、先生ったら。うちの図書館に置く本も選んでいる? あ、そうですか。楽しそうで何よりですね。
「えー。帰りたくない。王都の学校じゃなきゃダメ?」
「貴族の学園は王都にしかない」
「やっぱりダメか……リューはどうする?」
身体は丈夫になっているけどたまに咳をする事もある。本人は隠しているけれど知っている。
「一緒に行くよ。領地に来たければいつでも来れるからね」
病弱だったリューの口からそんな事が聞ける日が来るなんて。領地についてきて良かった。私の入学と共に家族で王都へ戻る事になった。帰りはルート変更をして豪華なホテルに家族で泊まったりして旅行気分だった。
「わぁ。久しぶりに王都に来たけれど変わったようで変わってないね」
工事は続いていて、いまだ埃っぽい。お父様はリューに手洗いうがいの徹底と週に一度お医者様に診てもらうことなどを約束させていた。リューも返事をしていたし、埃を吸わないように出かける時は口を覆うようにと徹底していた。
弱っているリューを見たくないし、リュー自身が嫌だろうし、皆に気を遣われたくないだろうから、この件に関して口出しをしてはいけないと思った。
さっそく明日は出来上がった制服の確認をするようだし、教科書とか筆記用具を揃えるために商人が家に来るんだって。王都に戻る旨を友人達にも伝えてあるから、近々近況報告を兼ねてのお茶会をする予定もある。学園の情報も聞いておきたい。
翌日制服を合わせていると、お母様の友人が来ていてお茶会をするとの事。学生時代からの友人達で今も仲が良い。後で挨拶にくるようにと言われて制服や必要なものを揃えた後、挨拶へと行く。
「あら、オフィーリアちゃん、しばらく見ないうちになんて可愛いらしいレディになったのかしら」
ハリーのお母様だわ。久しぶりに会った。領地での暮らしが楽しくてすっかり忘れていた……
「おばさ、」
っと。お母様の友人とはいえ、おばさまというのも失礼よね。久しぶりにお会いしたのだから
「失礼致しました。子爵夫人お久しぶりです。お会いできて嬉しいです。お元気でしたか?」
「まぁ、オフィーリアちゃん。今まで通りおばさまで良いのよ。他人行儀な呼び方はよして頂戴な」
他人です。
「勿体無いお言葉ですわ。子爵様やハリー様も元気にしておられますか?」
「もう、オフィーリアちゃんったら。今まで通りで良いのに。主人もハリーも元気よ。良かったらまたハリーと仲良くしてあげてね。オフィーリアちゃんが領地へ行ってしまって寂しがっていたのよ」
気楽に話せる相手がいなくなったとかそんなレベルでしょう。学園ではきっとモテているでしょうから(顔が良い分)私のことを思い出す暇なんてないはず。本当に寂しいと思っているなら手紙の一つでもよこしてくるだろうから。それもなかった。故にどうでも良いとか思っていたんだろうと、想像がついた。
「私たちも年頃ですから以前のように……というわけにはいかなさそうですが、機会があればご挨拶したいと思います」
にこりと笑い、他にも来ていたお母様のお友達に挨拶をした。中には息子と一度会ってみない? といったお誘いもあった。
「機会があれば? その、是非……」
会いたいとは思わないのだけど断るのも失礼なのかもしれないし、しどろもどろになって答えた。
「……なんで疑問系なのよ。ごめんなさいね。王都に戻ってきたばかりで学園の準備もバタバタとしていてまだ余裕がないっていうのは本当なのよ。アンドリューも向こうで療養して元気になってきたものだから、この子達どこへ行くかとかそんな話ばかりしていて……」
新しいお店がたくさん出来ているんだもの。行かなきゃ勿体無いでしょ! 正直流行りとか分からないから、付いてかなきゃバカにされるよね?
「あら。変わらず仲が良いのね。アンドリュー君はお姉様っ子だったものね」
ハリーの母、子爵夫人が懐かしそうに言った。
「オフィーリア、忙しいのに挨拶に来てくれてありがとうね。戻って良いわよ」
礼をして邸に入った。商人は学用品以外にも品物を持ってきてくれていて、気に入ったものは購入してもいいとお父様が言ってくれた。アンドリューはまだ本を選んでいたので、私もその様子を眺めていた。
イラストが多い本って見ていて楽しいわよね。そう思い何冊か手に取った。するとなぜか先生も参加し始めていた。先生は領地にいる間だけではなく王都に戻ってきても私達の先生をしてくれることになった。
「給料も申し分なく、寝食にもありつける。研究費まで援助してくださるのだから、お嬢様には上の下と言わず上の中くらいの成績をお約束します」
先生はお父様に宣言していた。ガリ勉反対! 普通で良い! と私が言っても、先生がやる気になっているのだから期待に応えなさい。と言われた!
リューはすでにトップクラスに入れるくらい優秀だし、先生は研究者なのにリューの剣術の相手までしているからお父様やお母様からも気に入られて信頼があるのよね。
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