初恋は苦い思い出。でも、出会うべく人と出会いました。

さこの

文字の大きさ
22 / 61

ジルベルト

しおりを挟む
 オフィーリアの幼馴染で婚約の話まで出た事があるグレイヴス子息か……

 一つ上の学年で、美男子で令嬢に人気がある。誘われる茶会にはほぼ出席をするので学園以外でもマダムキラーとして名を馳せている。なんでも子息の父であるグレイヴス子爵の元ファンのマダムが子爵の面影がある子息に粉をかけているんだそうだ。

 そのマダム達が自分の娘と婚約させたい様だが子息を自分の手元に置きたいというのが本来の目的。子爵は普通の貴族で領地経営をしながらのんびりと夫人と仲良く暮らしているようだ。子爵は昔令嬢にモテたようで現在も夜会に出るとキャーキャー言われているようだ。子爵の若い時にそっくりという子息もデビューし、社交界でも人気。ただ選り好みをしているようで婚約者はまだいない。

「今更オフィーリアにちょっかいをかけてこないだろうな」

 ぼそっと口に出したらルシアンに聞かれた。

「それは分からない。とっとと告白すれば良いんじゃないのか? おまえオフィーリアの事いつから知ってたんだ? 最近じゃないだろ?」

 勘のいいやつめ……どこでバレたんだろう。

「オフィーリアが弟の療養のために領地へ向かう時うちの領地に立ち寄って……どこの子か分からなかったけど学園に入学して、あの時のあの子だと分かったんだ」

「へぇ。どこに惚れたんだ? 一目惚れか?!」

「……町娘に扮していた姿が可愛いかった。気取らないところとか、領民に優しく手を差し伸べるところとか、明るい所だな」

「オフィーリアは珍しいタイプだよな。僕とかフローリアみたいな友人ができると自慢したりするもんだろう? 全くそんなそぶりないし、普通に接してくれる。そんな子今まで会った事ない。緊張してると言いながら、よく食べるし、表情もころころ変わるし話していると毒が抜ける」

「おい、まさか、」
「そうだな! フローリアの友人としては最高だな。フローリアにいい影響を与えるから、早く付き合ってくれよ。いや、早く婚約してしまえ! おまえのその姿でもオフィーリアは普通に接してくれるんだ」

「オフィーリアはそういう子なんだ」
「だから勘違いする子息が出て来るかもしれないぞ」
「そうだな」

 オフィーリアとは面識がある。うちの領地で会った。教会で、町で……三年ほど前の話だ。

 僕の今の姿は、髪の毛はぼさぼさに、そして変なメガネを掛けている。僕の容姿は亡くなった美人だった母に似ていていて少しコンプレックスでもある。男なのに女顔って……それでバカにされたりもした。
 令嬢からも男装した令嬢だなんて言われて傷ついたこともある。幼いころに言われた事なんだけど学園では顔を隠している。領地で顔は知れ渡っているし、母は領民に人気があったから素顔の方が喜ぶんだけど。

 ダンスパーティーでこの姿は流石にな……牽制どころか、オフィーリアといても牽制出来ない。いつか姿を晒すのならいいタイミングなんだろう。

 それからしばらくして、庭園の散策をしていた。緑が生き生きとしていて癒される。学園の庭園は素晴らしく手入れが行き届いている。たまに添木がズレている時はこっそりと直す。それも楽しみである。

 来週に迫ったダンスパーティーで学園内ではパートナー探しに拍車が掛かっていた。

「オフィーリア良かったら、パートナーになってくれないか? 誘われるのはいいんだが決めかねていると、もう来週に迫ってきた! 何か言われても幼馴染だ。といえば問題ないだろうし」

 は? だれだ?! 幼馴染といえば……あいつか!

「私もうパートナーがいるからお断りします」

「誰と行くんだ? 相手がいないのに断っていると噂されているぞ。強がりはよせ」

「誰とでも良いでしょう? ハリー様に関係ないもの」

 まったく関係ないよな!

「言わないと、この手を離さないからな」

 手? 手を掴まれているのか! これは助けなきゃまずいな!

「痛いわねっ! ロワール伯爵家のジルベルト様よ!」
「は? あの地味な? 暗そうな子息?」

「失礼なこと言わないでよ! ジルベルト様はお話も楽しいし、優しいし、思いやりもあるし、領民に慕われていて努力家なの。何にも知らないくせに悪く言わないで」
「いやいや、どう見ても地味だろ? ソレイユ侯爵の親戚だから一緒にいる感じだろ」

「ルシアン様が単なる親戚だからって一緒にいるわけないでしょう。何も知らないくせに適当なこと言わないで」
「おまえ、もしかして地味線なのか? だからあの時婚約の話も断って、」
「そんな昔の話出してこないで! じゃあね」

 

 ……地味線なのか? いや、会話の流れだったからだよな。確かに僕は素顔を隠している。

 聞き耳を立てて悪かったけど……嬉しかった。こういう時に堂々とオフィーリアを守れるような男にならなきゃな……
 
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?

あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。 理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。 レイアは妹への処罰を伝える。 「あなたも婚約解消しなさい」

政略結婚だなんて、聖女さまは認めません。

りつ
恋愛
 聖女メイベルは婚約者である第一王子のサイラスから、他に好きな相手がいるからお前とは結婚できないと打ち明けられ、式の一週間前に婚約を解消することとなった。代わりの相手をいろいろ紹介されるものの、その相手にも婚約者がいて……結局教会から女好きで有名なアクロイド公爵のもとへ強引に嫁がされることとなった。だが公爵の屋敷へ行く途中、今度は賊に襲われかける。踏んだり蹴ったりのメイベルを救ったのが、辺境伯であるハウエル・リーランドという男であった。彼はアクロイド公爵の代わりに自分と結婚するよう言い出して……

【完結】婚約者様、嫌気がさしたので逃げさせて頂きます

高瀬船
恋愛
ブリジット・アルテンバークとルーカス・ラスフィールドは幼い頃にお互いの婚約が決まり、まるで兄妹のように過ごして来た。 年頃になるとブリジットは婚約者であるルーカスを意識するようになる。 そしてルーカスに対して淡い恋心を抱いていたが、当の本人・ルーカスはブリジットを諌めるばかりで女性扱いをしてくれない。 顔を合わせれば少しは淑女らしくしたら、とか。この年頃の貴族令嬢とは…、とか小言ばかり。 ちっとも婚約者扱いをしてくれないルーカスに悶々と苛立ちを感じていたブリジットだったが、近衛騎士団に所属して騎士として働く事になったルーカスは王族警護にもあたるようになり、そこで面識を持つようになったこの国の王女殿下の事を頻繁に引き合いに出すようになり… その日もいつものように「王女殿下を少しは見習って」と口にした婚約者・ルーカスの言葉にブリジットも我慢の限界が訪れた──。

暗闇に輝く星は自分で幸せをつかむ

Rj
恋愛
許婚のせいで見知らぬ女の子からいきなり頬をたたかれたステラ・デュボワは、誰にでもやさしい許婚と高等学校卒業後にこのまま結婚してよいのかと考えはじめる。特待生として通うスペンサー学園で最終学年となり最後の学園生活を送る中、許婚との関係がこじれたり、思わぬ申し出をうけたりとこれまで考えていた将来とはまったく違う方向へとすすんでいく。幸せは自分でつかみます! ステラの恋と成長の物語です。 *女性蔑視の台詞や場面があります。

ある公爵令嬢の死に様

鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。 まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。 だが、彼女は言った。 「私は、死にたくないの。 ──悪いけど、付き合ってもらうわよ」 かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。 生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら 自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

処理中です...