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一体どこに…?

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「おっしゃる意味が分かりません」


 首を傾げるアイリス


「随分と仲が良いようだが?」

「ランチをとっているだけです!」

 困惑気味のアイリス

「それを仲が良いと言うんだが……」

 呆れる父と母



「えっ、でっ、でもエヴァン様の嫌いなタイプに近づいてきています!」

「名前でお呼びしているのか……呆れた」

「だって、馴れ馴れしいのは好きじゃないって言われました」

「はぁっ……」


「あらアイリス髪型を変えたの?幼いころに戻ったみたいね」

 母に言われ

「エヴァン様がウェーブでポニーテールをしている子は好きじゃないって言ったの!」

「……あ、あら、そうなのね」


「明日王宮へ行ってくる、アイリスも学園が終わったら来るように」



 次の日授業が終わったのでカバンを持ち席を立った。


「アイリス、行くよ!」

 教室にエヴァンが入ってきた


「殿下、なんで?」

 驚き立ち止まる

「名前!」

「みなさんがいる前ではちょっと……」


 教室中の視線を、一人占めだ……。


 するとアイリスのカバンを奪うように取り、歩き出すエヴァン。


「えっ?待ってくださいっカバンっ……」


 足の長さが違うのかエヴァンは早足で歩いているが、アイリスは小走りだ。

 淑女は走ってはいけないのに!


「待ってくださいっ」

 はぁはぁと息が上がり、エヴァンが馬車にアイリスのカバンをぽいっと入れる。

「あぁ、カバンが……」


 カバンを取ろうと馬車の中に入ると、すぐさまエヴァンが乗り込み、そのまま扉が閉められ、動き出した。


「あれ? 動いている……」


 窓に手をやり驚くアイリス


「馬車は動くものだからね」

 優雅に座り足を組むエヴァン。


「それは、そうですけど、一体どちらへ?」

「王宮に行くんだろ?」

「そうですけど……」

「目的地は一緒だ、だから迎えに行った」



「……エヴァン様の馬車は畏れ多い、」

「気にするな」

「……気にします」


 シーンと静まり返る車内


 馬車が王宮に着いたようだ。



「行くぞ」

「えっと、どこに?」

「行けばわかる」



 はて? いったいどこへ連れていかれるのか……。
 考え事をしながらエヴァンと歩いていると、いろんな人に笑顔で頭を下げられる。
さすが王子だ。


 しばらくしてエヴァンが重厚な作りの扉をノックし、中に入るように促されそのまま入ることとなった。


「父上、母上ただいま戻りました」

「うむ」

「あらぁ、仲直りしたのね! 手なんて繋いで」

「へっ?」

 改めて見るとエヴァンに手を繋がれていた
手を離そうとすると、にこりと笑われて力を入れられた。離せない………。


「父上、こちらはルメール伯爵の長女でアイリス嬢です」

「うむ」



 ……父上……と言うことは……国王陛下ではないか!

 なぜだ…頭の中が白くなるも

「初めてお目にかかります、ルメール伯爵が長女アイリスと申します」

 頭を下げる、淑女の礼をしたいのだが、エヴァンの手が邪魔で出来ない。
 陛下がいるなんて聞いていないのに! なんとか挨拶は出来た……



「頭を上げて良い」

「はい」

 頭を上げるとエヴァンの陰で見えなかったが両親が揃ってため息を吐いていた……。


「え?お父様?お母様も……」

 目を見開くアイリス


「貴方達もお座りなさい」



 王妃に言われ座る事にしたがどこに座れば良いのだ……。

 エヴァンに手を繋がれたまま促され空いている長椅子に座る事となった。


「……手を離してください!」

 小声でエヴァンに言うと、耳元で

「どうしようかなぁ」

 と言われた。


「あらぁ、本当に仲が良いのねぇ、安心したわ」

 王妃様に言われるも、何のことかさっぱり分からず首を傾げる。


「ルメール伯爵の娘アイリス」

「は、はいっ」

 陛下に声を掛けら、挙動不審な声を上げてしまった。


「そんなに緊張せんでも良い」

「はい」


「わしが犯してしまった罪を知っておるか?」

「……いいえ」

「其方の生まれ故郷を見殺しにした」

「……はい」



「悪かった。謝って済む問題ではないな、国民を領土を見殺しにしたんだ、伯爵が王都に来なくなったのも、わしが原因だ」

「それは……」

「報奨金だけやってそれで終わらせた、なんたる愚行だ、エヴァンにルメール領の話を聞いた、このようなことは二度とあってはならんな」


「勿体ない、お言葉でございます……」


 チラリと父を見ると、とても優しい顔をしていた。


「アイリス、王子殿下が視察においで下さったおかげで、私の気持ちも少しは晴れたような気がする、亡くなった者達は生き返らないが陛下と話をして、やっと前を向こうと思えたよ」


「お父様……」


「悪かったな王子殿下との仲を引き裂くような真似をしてしまった」


「へっ?」

「殿下とは恋仲なんだろう?」


「へっ?」

 驚きすぎて思考が固まったと同時に時が止まったような気もする……。


「そうよね? 毎日ランチを一緒に取って、お茶会もしたり、ダンスのお稽古もしているんだものね」

 王妃が当たり前そうに言う


「えぇっ……!」

 驚きすぎてエヴァンの顔を見るのが怖い。


「違うのかエヴァン?」

 陛下がエヴァンを見る


「そうですよ、間違いありませんね」

 恐る恐るエヴァンを見るとにこりと微笑まれる。




「アイリスは昔王宮で花冠を作ってくれたお兄さんとの記憶は良い思い出だと言っていたろ? 王子殿下の事じゃないのか?」


「……お父様っっ!!」


 冷や汗が流れてきた、手にも汗をかいているのが伝わっただろう……。
 手を離そうとしたらさっきより強く握られた。


「いたっ……」

 そしてエヴァンは目を細めて

「あとで詳しくお話をしましょうね」

 と言ってきた。怖い。


「王妃様、世間知らずの娘で申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします」

 母が王妃に告げると


「アイリスちゃんは素直で可愛いもの、教育次第で素敵なレディになるわ! 貴方もまた遊びにいらっしゃい、前はよくお話をしていたのに、寂しいわ」


「はい、またお誘いくださいませ」

 和気あいあいと両陛下と両親が話をする中
アイリスは生きた心地がしなかった……。



「そろそろ手を離していただけませんか?」
 ポツリと呟く

「良いよ、私たちは退出しようか?両親達込み入った話もあるだろうしね」




 にこりと微笑むエヴァン。やった! やっと解放される!
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