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もう、逃げない令嬢

勘違い令嬢

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エヴァンの誕生日会が行われて、王太子と婚約者の揺るぎない仲を見せつけた……

 来年のエヴァンの誕生日に式をあげることとなる。


 学園生活も残り一年ほどのエヴァン。

 相変わらずランチタイムはアイリスと一緒だ。この日はレイにも話がある為三人でランチを取ることになったので一緒にアイリスを待つ。


「殿下、もしかして私を?」

 エヴァンとレイ二人揃って不思議そうな顔をする。

「何か殿下に用事がおありですか?」

 笑顔で令嬢に話しかけるレイ

「いえ、殿下の姿が見えましたので、もしかして……。と……思いまして」

「なぜ殿下が、貴女を?」

 レイが令嬢を見る

「先日王宮で、出会いましたので、お話をさせていただきました….」

 レイがエヴァンを見る

「覚えておらん」

 エヴァンがレイに言う

「バラ園で肩をお貸ししました」

 顔を赤く染める令嬢

「あぁ、不法侵入者はお前だったのか?」

「えっ?」

 ざわっとする食堂

「あぁこんなところで言う話ではなかったな、レイ場所を変えて話してやれ」

「はい、はい分かりましたよ」

 令嬢を連れこの場を離れる



「はぁ、面倒だな」

「なにが面倒なんです?」

 アイリスが遅れてやってきた


「今日は遅かったな」

「日直なんですよ」

「そうか、お疲れ様、ランチにしよう」

「プロッティ様はどうされたのですか?」

「あとで来る」

 手を繋いで王族専用のランチルームへと行く。

「どうしたの? 疲れてますか?」

 アイリスが心配そうな顔をする

「いや、アイリスがいてくれたらそれで良い」

「なんのことやら……」



 しばらくしてレイが現れた

「遅くなった。悪い」

「どうだった?」

「頭がおかしいとしか言えんな……」


「なんの話をされているの? 言えない話?」

 アイリスがエヴァンに聞く


「いや……先日の男爵家の令嬢の話だよ」


「……どう言う事かしら?」

 レイに聞くアイリスの目が冷たい


「言って良いのか?」

 エヴァンに聞く

「良い、浮気なんてしていない、よって隠す必要が無い!」


「それでは……男爵の令嬢が今ほど食堂でエヴァンに話しかけてきた」

 カチャリとカトラリーを置くアイリス

「自分を待っていたと思ったらしい。それで話を聞いてきたら、肩を貸したお礼にランチに誘われると思ったらしいんだ」


「バカなのか? あの女、王宮に立ち入り禁止にしただろうがっ!」


「それも言ったんだが、プライベートゾーンに立ち入れる自分は特別だと思っている」


「バカな! 男爵家にも警告したぞ。次はないと」

「エヴァンに気に入られていると周りに言っているみたいだな」

「あるかっ! そんな事」

「周りは信用していないから安心しろ」

「それで、言いにくいんだが……アイリス嬢がエヴァンを独り占めするのがおかしいと言っていて……」


「連れてきなさい! その女」

「えっ?」

「エヴァンはわたくしのものです、解らせて差し上げますわ」

「アイリス……落ち着いて、」

「エヴァンはわたくしのものでしょう?」

「そうです、その通り」

「ならばあの女の言い分はおかしいでしょう?」


「アイリス嬢の言う通りだな……穏便に済ませたい、頼むからここは私に任せてくれないか?」

 レイがアイリスに言う

「任せるからにはしっかりと言い聞かせてくださいね? それが出来ないなら、潰しますか? 男爵家……ねぇエヴァン」


「立ち入り禁止などなど、ぬるい情けを掛けたのが間違いだったのか……」

 頭をグリグリと手で押すエヴァン

「レイに任せて良いんだな?」

「あぁ、二度とこのようなことのないようにしなければ、男爵家の危機だ」

 大人しくて可愛いと思っていたアイリスを怒らせると怖い……

 エヴァンに負けずとも劣らずの考え方に背中から冷や汗が出た。

「アイリスが怒ってくれてとても嬉しいよ」

 ランチ中にも構わず頬にチュッチュとキスをするエヴァン。

「二度目はないって言ったでしょ?」

「あってたまるか! 知らんあんな女、さっき見ても分からなかった、興味がない!」


 エヴァンが手元を見て

「あれ? アイリスもう食べないのか?」

「胸がいっぱいですわね……」

「デザートを持ってきてくれ!….早く」

 給仕に頼むエヴァン。本日のデザートはいちごと、チョコを使ったものだった。


「きゃあ! いちごだ」

「はい、アイリス」

 エヴァンがスプーンを口の前に持ってきてアイリスに食べさせる

「おいしいっ」

 笑顔のアイリスに次はチョコレートのアイスを口に入れる….

「その、機嫌なおった?」

「なおらない、この件が決着つくまでは」

 ふんと顔を背ける


「レイ、直ちに解決してくれ……」



「わ、分かった」

「プロッティ様、しっかりと言い聞かせて下さいね? そうじゃないとわたくし……エヴァン様とお別れをしなくてはいけなくなります」

 悲しい顔をするアイリス



「なんで?!」

 ギョッとするエヴァン

「二回目はないから……言ったでしょう」


「私からあの女に話す事はない! レイしっかりやってくれ、私達の未来と国の未来がかかっている!」

 アイリスをギュッと抱きしめるエヴァンを、無視してお茶を飲むアイリス。


「そんな大事に……」



 その後、男爵令嬢は二度とエヴァンとアイリスの前に姿を表すことがなかった……。

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