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もう、逃げない令嬢

全ては香水のせいだよ

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「アイリス嬢ってあんな感じだったっけ?」

 レイがエヴァンに聞く


「いや? 私のことを好きになってくれてさ、変わったよね、可愛くてしょうがないよ」

「そうなのか? 豹変タイプなんだな。驚いたよ」

「はじめは私ばかりがアイリスを好きだったからね、私も少しおかしいのかと思う部分もあったけど、やっと追いついてきてくれた……嬉しいよね」

 うんうんと頷くエヴァン


「お前怖がっていたのは演技なのか?」

「いや……まさかの浮気疑惑で腹がたったのと、アイリスは怒ると私を呼び捨てにするんだよね……嬉しくて」

 にこりと微笑むエヴァン


「お前に似てきたな……」

「そうさせたのは私だ。しかしお別れと言われたのは辛いな……あの女許せん……」


「男爵令嬢の件だが….」

「始末したか?」

「言い方が悪いな……」

「少し、いやかなり思い込みが激しくてな……王宮に来たのも父親に付いてきたらしい。前にお茶会があった時にも参加していたらしいが、お前に微笑まれたから気があると思ったらしい……」

「バカなんだな……そんな事あるわけないのに」

「まぁ、そうなるな、行儀見習いで○○伯爵の家に行く事になったらしいぞ、もしそれでダメなら修道院に行くことになるそうだ」

「王宮には立ち入り禁止にしておいてくれよ」

「きつく言っておいた、男爵の顔色が変わって可哀想だったよ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 コンコンコンとノックをする音。

「アイリスか!」

「お前ノックの音で分かるのか?凄いな……」

 扉を開けるアイリス、そっと覗き込む。


「お話声が聞こえたと思ったら、プロッティ様がおられましたのね。執務中にお邪魔いたしました、また後で伺います」

「いや良いよ、休憩しよう、お前もどうだ?」

「邪魔じゃなければ……」


 三人で休憩をすることになった。

 横並びで座るエヴァンとアイリス、向かいの席に座るレイ。


「プロッティ様には先日、ご迷惑をお掛けしてしまったので、お詫びしたくて……」

 はにかむ笑顔のアイリスは可愛い


「いや、とんでもない、誤解が解けたようで安心したよ」

「浮気なんてしてない!」


「最近噂で他国の王族の方が三人目の側室を迎えたと聞いて、心配になったの」

 しゅんとするアイリス

「他所は他所です。うちはうち!安心しなさい」

 アイリスの手をギュッと握る


「安心だねアイリス嬢、ここまで愛されてるんだから」

「わたくし少し束縛が過ぎるのでしょうか?エヴァン様を独り占めしていると言われて、反省して」

「過ぎない!独り占めしてくれよ……」

「本当にいいの?」

「良い!」


「何か不安でもあるの?」

 レイがアイリスに聞く

「わたくし、ずっとエヴァン様から逃げていたでしょう?」


「「うん」」


「お家の事情もありましたけど、エヴァン様は第一王子で、その方に選ばれたら将来は王妃になりますよね」


「「うん」」


「その覚悟がありませんでした。エヴァン様から告白していただいた時も逃げて……答えを先延ばしにしようとしたけど、わたくしの付いた嘘のせいでエヴァン様を傷つけてしまいました」

「そんな事はない! 今はいい思い出だ」


「わたくし田舎の出で、王都には馴染めなくて、王都の令嬢とわたくしを比べると垢抜けなくて……」

「そんな事はない! アイリスは可愛い」

「そうだな、垢抜けて美しくなった、今は誰よりも洗練されているよな」

 レイが褒めるとエヴァンに睨まれた


「それで……エヴァン様のお側に居たくて、努力して、とても教育は厳しくて挫折しそうになって、何回も泣いたこともありますけれど、」

 下を向くアイリス


「うん、それで」

 エヴァンが次を促す

「やっと最近褒められるようになってきて、努力が実りつつあるんです」


「頑張っているよ、ありがとう」

「そう言えば、父上も褒めていたな」


「十三歳から教育が始まって四年経つんです……努力して努力して、やっとです」


「早い方だよな?」

 レイがエヴァンに言う

「あぁ、普通は幼少期からするものだろうな、相手がいれば」


「わたくしはエヴァン様が恥をかかないようにと……隣に居て欲しいと思えるようなレディを、目指しているんです」

「うん。十分すぎるくらいだよ、ありがとう、嬉しいよ」

「エヴァン様はこんなわたくしに一生を誓ってくださいました」

「うん。誓ったね、間違いない」

「だからです!」


「なんの話だっけ?」

「わたくしが努力して、エヴァン様の隣にいるのにふらっと来て……エヴァンに触れるのが許せません! それを許すのならエヴァン、あなたもです」

「許してないっ! 断じて」

「浮気をするなら本気でしなさい、私もそうしますっ。二度目はありません!」


「浮気しないって!」

「他の女の香水を残すような真似をしたら、もうエヴァン様は信用できません」

「そこか……」

「嫌だったんです」

「それは、悪かった……」


「そんなに香水が、嫌だったんだ、アイリス嬢は」

「えぇ、嫌です、公務で付けてきたのならまだしも、プライベートでつけられるのは許せません」

「分かりました、今まで以上に気をつけます」


「分かればよろしいのです」





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