婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

文字の大きさ
5 / 93

フランツ・エル・シーバ2

しおりを挟む

 私に気がつかないとは生意気な!


「フランツ殿下? どうかされたのですか?」

 むしゃくしゃしていた私は声をかけられた方へ機嫌悪く振り向く。するとレイラに声をかけられた。レイラはアリスフィアの家に住んでいる男爵令嬢だ。


 レイラは男爵家に数年前に引き取られた令嬢である。国の政策である孤児院救済の事業で孤児を引き取り家族にしたり仕事を与えたりするのが目的だ。

 家族にするパターンは少ないが孤児からしたらチャンスが与えられる。と言った感じだ。


 貴族になって数年だが頑張り屋の彼女をなぜが目で追ってしまう。疲れているのだろうか。


 アリスフィアのご機嫌取りのために伯爵家に行く時は(行かされる)アリスフィアが来るまではまずレイラが相手をしてくるので話をする機会が多い。

 アリスフィアとは違いいつもニコニコと笑っていて聞き上手で感じがいいのが取り柄だ。


 しばらくしてアリスフィアがのんびりと応接室に来て開口一番に言う。

『来るのならせめて先触れをくださればこんなにお待たせ致しませんでしたのに』

 と言った。客が来てもすぐに出られる装いではないのかっ! レイラは既にいるのに。



 レイラがもっとはやく男爵家に引き取られていれば、レイラが私の婚約者になっていたかもしれない。男爵は国内有数の金持ち。私のバックに付いたのなら子爵以上の爵位を与えれば良い。となると、私の婚約者がアリスフィアからレイラに代わったところでなんの問題も無かろう。


 早くしないとレイラとクレマン子爵嫡男と婚約の話が出ていると聞いた。


 だから私は100キロと言う距離を出した。100キロというのは王都からクレマン子爵家の領地にあたる。

 都会の令嬢なら王都からなるべく近くにいたいだろう? それならちょうど百キロのクレマン領に行くはずだからな!

 するとレイラも、それに気がつきと言った。賢い女性は良いな。


 私がレイラと婚約する。アリスフィアがレイラの代わりにクレマン子爵家の嫡男と婚約すれば良い。そうなるとお互いウィンウィンな関係になる。親戚だからいいだろう? それに現在は同じ家に住んでいるのだし。


 完璧な計画




******


「アリスフィア様はまだ王都にいるのかしら……私、逆恨みされないかしら。不安だわ」


 眉を下げて私に寄りかかるレイラ。とてもよろしい。頼られているんだな……愛い奴め。


 パーティーは中止となり私室でレイラと今後について話していた。


「夜明け前に出るようにと言ったが、屋敷でごねられてはかなわんな。よし様子を見に行くか」

「えぇ。そうしましょう」



 もしのんびり寝ていたら、着の身着のまま出ていくように命令しよう! そして泣いて縋るがいい。はっはっは!

 そう思うと少し気が晴れた。






 伯爵家に着くと、数人の使用人が出迎えたのだが……

「王族を迎える人数ではないぞ!」


 なんなんだ! たったの数人しか出迎えないなんて、バカにしているのか!


 奥から執事長がようやくやってきたようだ。


「おい! 私を誰だと思っている! 使用人の躾がなっていないぞ!」

 深夜だろうが早朝だろうがそんなの関係ない。王子が来たんだからな! いつもは先頭に立って頭を下げていただろうが!


「これはこれは、フランツ第五王子殿下ではございませんか。主人が留守故、私が対応させていただきます。このような時間にどういった御用向きで? お急ぎと見受けられます」


 丁寧だが言葉に棘がある言い方。そして訪れたのは深夜だ。もちろん周りには止められたのだが、無理を言って馬車を出させた。

 
「分かっているだろうが! アリスフィアがいるだろう」


「はて? アリスフィア……とはどなたでしょうか?」

「惚けるな! この屋敷の生意気な娘のことだ!」

 何がどなたでしょう! だ。こいつらはアリスの存在を無かったことにして匿うつもりか!  


「おかしいですね。伯爵家には娘はおりませんが……」


「このっ!」


 近くにあった花瓶に手を掛け割ってやった!


 ガシャーーーーン!

 バシャッ。バサッ。


 花瓶の割れる音と水が溢れる音、生けてあった花が床に散らばった。



「第五王子殿下、夜中に先触れもなく、他家で問題を起こされては困りますな。主人が帰ってきた時になんと申せばよろしいか……花瓶代は王宮に請求させていただきますが本日はどうぞお帰りくださいますようお願いいたします」


 執事の後ろに使用人が並び、一斉に頭を下げた。人数は少ないがとても強い圧を感じた。


「ねぇ。アリスフィア様はどうされているの?」


 使用人は皆頭をかしげる。



「もう! いいわ。自分で見てくるからっ」


 レイラはフランツを置いてアリスフィアの部屋へ向かった。扉をバンっと開けて大きな声を出した。


「アリスフィア様!」

 大きな声で呼ぶが返事は返ってこない。ベッドへ行き布団を捲るがいない。


「いないの?!」



「レイラ、どうだ? いたか?」


「いませんわね。王宮から邸に帰ってきたのは間違いないから、もう出て行ったのかも……逃げ足が早いんだからっ。やましい事があったからこんなに早く出たのだわ」



 そうか、泣き喚き縋ってくる情けない姿を見たかったのだが、残念だ。しかしもう邸から出たのなら問題はない。100キロだからな。はっはっは……

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗 「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ! あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。 断罪劇? いや、珍喜劇だね。 魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。 留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。 私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で? 治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな? 聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。 我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし? 面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。 訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結まで予約投稿済み R15は念の為・・

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~

水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。 ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。 しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。 彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。 「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」 「分かりました。二度と貴方には関わりません」 何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。 そんな中、彼女を見つめる者が居て―― ◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。 ※他サイトでも連載しています

幼馴染に振られたので薬学魔法士目指す

MIRICO
恋愛
オレリアは幼馴染に失恋したのを機に、薬学魔法士になるため、都の学院に通うことにした。 卒院の単位取得のために王宮の薬学研究所で働くことになったが、幼馴染が騎士として働いていた。しかも、幼馴染の恋人も侍女として王宮にいる。 二人が一緒にいるのを見るのはつらい。しかし、幼馴染はオレリアをやたら構ってくる。そのせいか、恋人同士を邪魔する嫌な女と噂された。その上、オレリアが案内した植物園で、相手の子が怪我をしてしまい、殺そうとしたまで言われてしまう。 私は何もしていないのに。 そんなオレリアを助けてくれたのは、ボサボサ頭と髭面の、薬学研究所の局長。実は王の甥で、第二継承権を持った、美丈夫で、女性たちから大人気と言われる人だった。 ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。 お返事ネタバレになりそうなので、申し訳ありませんが控えさせていただきます。 ちゃんと読んでおります。ありがとうございます。

【完結】幼い頃からの婚約を破棄されて退学の危機に瀕している。

桧山 紗綺
恋愛
子爵家の長男として生まれた主人公は幼い頃から家を出て、いずれ婿入りする男爵家で育てられた。婚約者とも穏やかで良好な関係を築いている。 それが綻んだのは学園へ入学して二年目のこと。  「婚約を破棄するわ」 ある日突然婚約者から婚約の解消を告げられる。婚約者の隣には別の男子生徒。 しかもすでに双方の親の間で話は済み婚約は解消されていると。 理解が追いつく前に婚約者は立ち去っていった。 一つ年下の婚約者とは学園に入学してから手紙のやり取りのみで、それでも休暇には帰って一緒に過ごした。 婚約者も入学してきた今年は去年の反省から友人付き合いを抑え自分を優先してほしいと言った婚約者と二人で過ごす時間を多く取るようにしていたのに。 それが段々減ってきたかと思えばそういうことかと乾いた笑いが落ちる。 恋のような熱烈な想いはなくとも、将来共に歩む相手、長い時間共に暮らした家族として大切に思っていたのに……。 そう思っていたのは自分だけで、『いらない』の一言で切り捨てられる存在だったのだ。  いずれ男爵家を継ぐからと男爵が学費を出して通わせてもらっていた学園。 来期からはそうでないと気づき青褪める。 婚約解消に伴う慰謝料で残り一年通えないか、両親に援助を得られないかと相談するが幼い頃から離れて育った主人公に家族は冷淡で――。 絶望する主人公を救ったのは学園で得た友人だった。   ◇◇ 幼い頃からの婚約者やその家から捨てられ、さらに実家の家族からも疎まれていたことを知り絶望する主人公が、友人やその家族に助けられて前に進んだり、贋金事件を追ったり可愛らしいヒロインとの切ない恋に身を焦がしたりするお話です。 基本は男性主人公の視点でお話が進みます。 ◇◇ 第16回恋愛小説大賞にエントリーしてました。 呼んでくださる方、応援してくださる方、感想なども皆様ありがとうございます。とても励まされます! 本編完結しました! 皆様のおかげです、ありがとうございます! ようやく番外編の更新をはじめました。お待たせしました! ◆番外編も更新終わりました、見てくださった皆様ありがとうございます!!

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。 「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。  政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。  ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。  地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。  全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。  祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?

鏑木 うりこ
恋愛
 父親が一緒だと言う一つ違いの妹は姉の物を何でも欲しがる。とうとう婚約者のアレクシス殿下まで欲しいと言い出た。もうここには居たくない姉のユーティアは指輪を一つだけ持って家を捨てる事を決める。 「なあ、お嬢さん、指輪はあんたを選んだのかい?」  庭師のシューの言葉に頷くと、庭師はにやりと笑ってユーティアの手を取った。  少し前に書いていたものです。ゆるーく見ていただけると助かります(*‘ω‘ *) HOT&人気入りありがとうございます!(*ノωノ)<ウオオオオオオ嬉しいいいいい! 色々立て込んでいるため、感想への返信が遅くなっております、申し訳ございません。でも全部ありがたく読ませていただいております!元気でます~!('ω')完結まで頑張るぞーおー! ★おかげさまで完結致しました!そしてたくさんいただいた感想にやっとお返事が出来ました!本当に本当にありがとうございます、元気で最後まで書けたのは皆さまのお陰です!嬉し~~~~~!  これからも恋愛ジャンルもポチポチと書いて行きたいと思います。また趣味趣向に合うものがありましたら、お読みいただけるととっても嬉しいです!わーいわーい! 【完結】をつけて、完結表記にさせてもらいました!やり遂げた~(*‘ω‘ *)

処理中です...