田舎者とバカにされたけど、都会に染まった婚約者様は破滅しました

さこの

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甘い香り

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~ウィルベルト~


「おかえりなさいませ、ウィルベルト様」


 セイラが笑顔で出迎えてくれた、今日もうちに来てたのか……セイラに迎えられたら疲れが吹っ飛ぶような気がした。
 

「ただいま、今日はどうしたの? うちにくる日だった? 知っていたらもっと早く帰ってきたのに」

「今日はお義母様と一緒に行かせていただいたお茶会で、美味しいお茶をいただいたので、ウィルベルト様と一緒に飲みたくてお待ちしてました」



 今日殿下は公務で城にいない。なので早く帰ってこられた。
 最近は忙しくて帰りが遅い事をセイラは知っている筈なのに……待っていてくれた事がすごく嬉しい


「それは楽しみだね」


 我慢ができずにセイラの頬にキスをした。いわゆるいちゃいちゃすると言う行為なんだろうが、気にしない。屋敷の使用人に見られようが家族に、

「あら、ウィルおかえりなさい……わたくしはお邪魔かしら?」


「……母上、ただいま帰りました」

 気まずい。


「あの、私はお茶の準備をしますね。お義母様、中庭を使ってもよろしいですか?」

 そそくさとセイラは離れて行った

「えぇ、良いわよ」


「お義母様もご一緒にいかがですか?」

「そうねぇ……遠慮しておくわ、最近ウィルは忙しそうだから、セイラさんとゆっくりしたいでしょう」


 空気の読める母で良かった。二人になりたい。そんなこんなで中庭に移動することにした。セイラと手を繋いで歩く


「セイラから甘い匂いがするんだけど……甘い優しい香り」


 セイラに近寄って甘い匂いの正体は何かと聞いてみた。


「いただいたお茶に合うようなお菓子を作りました。ウィルベルト様が気に入ってくださると良いのですが。お義母様からは美味しいと言っていただけましたよ」


 中庭に着くとメイド達がせっせと準備を始めていた。セイラは手伝いたくてうずうずしているようだったが、母上にお茶を淹れるのは良いとして、テーブルのセットやクロス敷きなどと言った事は、メイドの仕事を取ることになると言われたので大人しく長椅子に座っていた。


「ウィルベルト様……お疲れですか?」

「うん。セイラの近くにいると癒される、甘い香りもするし」

 セイラの肩に頭を預けたら頭を撫でられた


「最近は帰りも遅いみたいですね、あまり無理をなさらないようにして下さいね」


 子供のように頭を撫でられるが悪い気はしなかった。今まで人に甘えてきたと言う記憶が無いけれどセイラには、こんな姿を見せるのも悪くないと思った。


「可愛らしいですね、ウィルは」


 セイラに甘えるとウィルと呼んでくれる。出会った頃は可愛らしかったセイラは今では美しくて癒しの存在になりつつある。


 週に一度は遊びにおいで。と言う両親の言葉通り、セイラは私がいなくてもオリバス家にくる。

 花嫁修行という堅苦しいものではなく

『お茶をしましょう』
『お買い物に行きましょう』
『お客様のおもてなしをしましょう』

と言う母なりの気遣いのおかげか、セイラは『はい、喜んで』と言って母とうまく行っているようだ。
 
 その辺は母に感謝しなくてはいけない。セイラの実家ルフォール子爵家は自分のことは自分でする。と言う家だったから、うちの環境にはじめは戸惑っていた。


 母は使用人を雇っているのは、


『その道のプロだからですよ。プロに給金を支払っているのよ。だからお任せしましょうね』

とセイラに言っていた。セイラはそれも分かっているのだろう


『セイラさんにはセイラさんの仕事があるのよ。それはセイラさんにしか任せられない仕事なのよ』


 母はなんでもやりたいセイラの意見を尊重しながらも、オリバス家の嫁になる為の心得的なものを、いつのまにか身に付かせている。我が母ながら見事な手腕……。
 将来オリバス伯爵夫人の仕事はセイラにしか任せられないのも事実。


 時には父ともお茶をしたりするのだそうだ。あの父が……? 何を話すんだ? と思うが、仲良くしてくれるのは私としても嬉しい。
 両親もセイラを気に入っているようで、姉は安心して嫁に行ける。と嬉々として家を出て行ったくらいだ。


 家でこんなにまったりと過ごせる日が来るとは思わなかった。
 これからまた忙しくなるから……。今のうちに休息がてら充電しておこう。


「ウィルベルト様、お茶の準備が整いましたよ」
 
 セイラに声をかけられた。鼻腔をくすぐるお茶の香りと甘い香り

「良い香りだね」

「塩キャラメルのパウンドケーキです」

「ソルトクッキーに続く塩シリーズの菓子か。どんな味だろう? 想像がつかない」

 ひとくち口に入れると、ふわっとキャラメルの甘さが広がり追うように塩味が……。




「美味い」

「よかったです」



 セイラの頬に手添えた

「どうしました?」


 首を傾げながら私の手に重ねられるセイラの手




「早く一緒に住みたいと、思っただけ」


「ふふっ、私はまだ学生ですからね?」


「うん、分かっているよ。それよりも殿下と友達になったって?」









 

 






 



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