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番外編
クラウディオ
しおりを挟む「あと半年で卒業だな」
「はい」
「おまえの気持ちは変わらずジュデス嬢と一緒になるんだな?」
「はい。私はそれを望んでいます」
なんだかんだと父上は私に甘い。卒業まであと半年。学業の面ではトップクラスには入れなかったけれど、何とかなるだろう。そう思っていた。
王家には国中に療養所として別荘もあるし、それの何処か一つ、出来れば治安の良い王都からほど近い南の館あたりを貰えればちょうど良いのになぁ。と思った。ねだってみようかな。
「結局学業でも、執務においても秀でるところはなかった。おまえの兄である王太子に二人目の男児が産まれた。エリックも王族を抜けたし次はおまえが抜ける番だ。食い扶持は自分で何とかしろ」
……嘘だろ? 本当に? 何も言えないでいると、
「最後の情けとして、持参金を出してやる。婚約破棄をしでかしお相手の令嬢に慰謝料を払ったから満額ではない」
「……え? 父上、そんな。私を見捨てるというのですか……」
……嘘だ! 嘘だ! 嘘だよな? 絶対に嘘だ。夢だ! 父上は私を溺愛するあまりおかしくなっているんだ!
無情にも冷たく言い放たれた言葉は
「この金をどう使うかは好きにせい。結婚式も勝手にしろ」
「中央教会で式を挙げてくれますよね?」
兄上二人とも中央教会で盛大に式を挙げている。他国の王族を呼んだりしなきゃいけないのに準備は間に合うのか?
「あそこは王族や公爵家や国に貢献している者が挙げることができる神聖な場所。婚約破棄なんかをするような者が挙げられるわけなかろう」
……そんな。
******
「ジュデス、今ならまだ間に合う。本当にクラウディオ殿下と結婚するのか?」
ジュデスの父は最終確認だ、と言わんばかりに娘に問う。
「はい、わたくしはクラウディオ様と結婚しますわ」
「……辛い生活になるぞ。私はあと半年で引退する、金銭面を援助するつもりはない」
「はい」
分かっているのだろうか……うちの娘は。うちはかつての勢いはないが侯爵家……生活ができているのは使用人がいるからなんだぞ……
「これは支度金だ。好きに使うと良い、住むところが決まったら調度品を揃えたりしなさい」
できる範囲での金は渡した。使用人を雇うでも良い。生活能力がないのだから出戻るなら早めのほうが良い。
その方が都合はいい。
******
「侯爵から金を渡された?」
「えぇ、好きに使えと言われましたわ」
「そうか、二人の分を合わせるとかなりの額になるな」
「どうされますの?」
この国には合法で爵位を買うことができる。伯爵家くらいなら買うことができるだろう。なるべく栄えている感じの領地付きで、うまく領地経営をしている場所があるか探してみることにしよう。そのまま経営者を雇えば私たちは何にもしなくとも生活はできる。
「爵位を買おう、何もしなくとも生活できるようになるべく栄えた領地を買ってささやかでも良い二人で暮らそう」
「はい、そう致しましょう」
******
「何? 男爵位しかないだって? しかも領地は荒れている?」
「はい、この金額で領地付きはこれが限界です」
執事のダニエルに言われたが、嘘だろ? かなりまとまった金額だぞ!
「領地経営出来そうか?」
ダニエルも連れていかねばならない……私の世話を、
「頑張ってください、ブレーンを雇うとか、」
「え? おまえは付いてこないのか?」
「私ですか? 私は現在殿下の元で働いていますが、給料は王宮から出ています。私がもし殿下に付いて行ったら給料はどこから出るのでしょうか? 私には養う家族がおりますから今よりも生活レベルが落ちると家族が路頭に迷いますので遠慮しておきます」
「金の問題なんだな、私との関係は……」
もしレナートなら……付いてきてくれたのかもしれない。
「私は王宮で務めるていることを誇りに思っております。難関な試験を合格して王族の執事をしています。ですが私も再就職をすることになりました。これが最後の仕事になるでしょう。あともう一つ購入できそうな爵位は子爵位です」
「男爵の上ではないか、なぜ先にそれを言わない?」
「これは爵位のみです。領地はありません。例えば商売をするにあたり、貴族相手だと話が上手く進む場合が多々ありますから。若しくは仕事をしている場合は領地がなくても爵位があれば問題はありません。貴族として生活し貴族として働けば良いだけです」
そりゃ貴族相手だと貴族じゃないと相手にされんだろう。平民と貴族では信用度が違うからな……
「そういう事です。何か商売でもされるのか仕事をするのならそちらをお勧めしますが、領地付きだと荒地ですが男爵位ですね」
王族なのに縁もゆかりもない男爵位……侯爵令嬢のジュデスが男爵位……
「考えておく」
執務をまじめにすると父上に言い、文官をする……いや、私は王族だ。誰かの下で働く事になる? いや考えられない。
******
翌日学園でレナートを見た。会釈されたので声を掛けた。
「レナート、久しぶりだな……卒業後の進路はどうなっているんだ?」
レナートが側にいなくなってからは正直言って寂しい気持ちはある。
「クラウディオ殿下、お久しぶりです。卒業後はある貴族の夫婦の元で働くことが決まっています」
頭を下げるレナート。王宮では働かないのか。成績優秀なのに。それになんだか余所余所しい態度だ。
「そうか、働き先が決まっていないのなら戻ってこないかと思っただけだ。悪かったな」
「気にかけてくださりありがとうございます。殿下のご活躍を楽しみしております。それでは失礼いたします」
「……あぁ、おまえも頑張れよ」
なんだかさっぱりした顔をしていたような気がする。領地経営がうまく行っても、もう誘ってやらんからな!
王宮に帰り男爵の爵位を買っておく様にと執事に頼んだ。これで執事とも別れることになるのか。
そしてなんとか二人平民を雇うことができた。一人は執務手伝い、一人は家事手伝いだ。そんなに広くない邸だと言う。なんとかなるだろう。
その後レナートはロレンツィ侯爵家で働いていると聞いた。そうかフランチェスカの家は侯爵家になったんだったな。ジュデスの家と同格とは……
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