拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

さこの

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羨ましいと言われた

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 レオンから羨ましがられた。まぁ、そうだろうな。リュシエンヌは可愛いし、優しいし、私なんかを好きだと言ってくれる。

 自分で言うのもおかしな話だが、私の風貌は令嬢に好かれるものではない。

 こんな私がリュシエンヌを好きだと言ったら困らせてしまうだろうと思っていたが、リュシエンヌも?! そんな事があるのか? 夢でも見ているのではないか? そう思った。自分とは思えない様なクサイセリフを口にした。自然と出てくるもんだな……絶対にリュシエンヌを逃さない。


 残念ながらすぐに婚約を結ぶ事は出来なかったが恋人から始める事になった。こんな私にリュシエンヌのような恋人が……と思うと胸が熱い。いや、苦しい。


 両親に結婚を前提に付き合っている恋人がいるから会って欲しい。と言うと、今すぐに連れてきて欲しい! と言われ、来週空けといてくれ。と言う。

 『どこの家のどこのお嬢さん?』母がぐいぐい聞いてくる。
『モルヴァン伯爵家の長女リュシエンヌ嬢だ』と伝える。

『あら。確か……婚約破棄をされた令嬢よね?』
『リュシエンヌは悪くないです! 相手が、』
『分かっているわよ。最後まで話を聞きなさいな。相手の男がおバカさんだったわよね。相手の家もしっかり謝罪して罰を受けているから、令嬢を悪く言う方はいないと思うわよ。まぁ一部のゴシップ好きは例外としてね。貴方が悪意から守ってあげなさいな』

 婚約破棄という言葉が出てきて声を荒げてしまったが、リュシエンヌの事を噂で聞いたならまずはそう思うだろう。恐らくリュシエンヌの事を調べるんだろう。調べるがいいさ。

 父は父で……
『モルヴァン伯爵家のお嬢さんか! 会うのが楽しみだな。グレイよくやった!』

 父は父で楽観的なのか、よくやった! と言う。噂は気にしないのだろうか? 男だから耳に入っていないとか?

 誰でも良いから連れてこい。と言っていた二人はリュシエンヌを連れて行くと大喜び。父がリュシエンヌちゃんと呼び始めた時は驚いた……結婚の意思を聞いて、伯爵家の了解を得てすぐに教会を予約していたよな……
 王都での挙式と、公爵家の領地でもお披露目。伯爵家の領地でもすれば良い。と話し合ったようだ。ささやかな挙式でも良かったのだが、陛下も呼ぶか! と父が言いモルヴァン伯爵も悪くないですね。なんて言っていた。
 共通の知り合いだ。と笑っていた。良いのか? 陛下をそのような扱いで……


 教会の予約、ドレスの作成、モルヴァン伯爵家の鉱山への出資までとんとん拍子に話が決まっていく。我が親ながら話が早い。


 婚約指輪を作りにいつもの店へ行く。私の瞳の色の宝石が欲しい。と言った……地味だろ、グレイの宝石なんて。
 でもそれが良いと言うリュシエンヌの希望通りにした。リュシエンヌにはまだ内緒だが指輪だけではなく、ブレスレットやネックレス、イヤリングも揃いで頼んだ。
 店主はホクホク顔だったが、リュシエンヌが喜んでくれるのなら安い買い物だ。


 リュシエンヌと付き合ううちに分かってきた事だが、リュシエンヌを可愛いと褒めると、すごく恥ずかしがるのだ。可愛いリュシエンヌに可愛いと言って何がおかしいのか? そう思い聞いてみた。すると姉だから可愛いと言われる事がなくなったから。と言う。

 同年代の子息令嬢からしたらリュシエンヌは綺麗の部類なんだろうが、私にとっては可愛いとしか形容出来ない! 何をしても何を言っても可愛いのだからこれは仕方がない。

 私はあまりストレートに言葉を伝える事が出来ないのだが、リュシエンヌの喜ぶ顔が見たい。私の拙い言葉で喜んだり照れたりする姿はこの世のものとは思えない程の可愛さで溢れている。


 リュシエンヌが私の部下たちに差し入れといいクッキーを渡していた。隊員達は休憩中に全てを食べてしまったらしい。
『私の分を残そうとは思わなかったのか?』
 
『隊長はいつでも食べられるではないですか!』
『隊長のくせにあんなキレイな子と婚約をするなんて』
『オイ、いい加減にしろよ』
 本気でキレそうになった私をレオンが止める。

『良いじゃないか、リュシエンヌちゃんはお前の昼食を持ってきてくれるんだろ。私も気の利いた子と結婚したくなってきた』

 小皿に乗せたクッキーをさくさくと食べていた。

『ナッツのクッキーか。リュシエンヌちゃんを思い出す、優しい味だな』
『思い出さなくて良い! 人の婚約者を馴れ馴れしく呼ぶな!』
『え? リュシエンヌちゃんは良いって言ってたぞ』
『……いつ話をした?』
『お前が着替えに行っている間に』

 だから昼食の時にレオンの奴を楽しい方ですのね。と言っていたのか……


『勝手に話をするな』
『良いじゃないか! 交流を深めただけだ』

 ……レオン相手にムキになるのも癪だ。リュシエンヌはリュシエンヌなりに気を遣って話しているのだろう。


 そういえば週末はうちの実家にお茶をしに行くと言っていたな……母と義姉がリュシエンヌを娘のようだとか妹のようだとか言ってデザイナーを呼んだ。と言っていたな。




「リュシエンヌちゃんは落ち着いたドレスをよく着ているけれどパステルカラーも似合うわね。すごく可愛いわ! グレイどう思う?」

 ……めちゃくちゃ可愛い!ハチミツ色した髪の毛と相まって神々しい!

「自分ではあまり選ばない色なので……レイ様どうですか?」

「とても似合っている。他の色も合わせてみたらどうだ?」



 困ったぞ! 何を着せても似合う……

 デザイナーが持って来たドレスを全て購入しようとしたらリュシエンヌが遠慮するので五着しか買えなかったではないか!

 
 
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