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練習の最終日
しおりを挟むメイドのアデールがバスケットを持ってくれて、練習場まで歩いていました。今日の護衛はダニエルではなくジョニーという名の新人の護衛です。
今日もたくさんの人が公開練習を楽しみにしているようでした。あの子爵令嬢に見つからないように最後列のベンチに座りました。
あ、そうだわ! バスケットに入れようと思っていたのに別の袋に入れた紅茶があったんだった! セシリーから美味しいと勧められて購入したものでしたわ。
「ごめんなさい、馬車に忘れ物をしちゃったから取りに行ってくるわ。ジョニー一緒に来てくれる? アデールはバスケットの見張りをお願いね」
アデールが取ってくる。と言ったのですが、忘れたのは私ですから自分で行くわ。と言いました。ジョニーも畏まりました。と言いついて来てくれました。
ジョニーは騎士団の練習場に初めて来たようで、熱気が凄いですね。と興味深そうに見ていました。廊下を歩いて馬車に近づいた時でした。
「モルヴァン嬢、こんにちは」
「ご機嫌よう。今から練習ですか?」
騎士団人気No.3の騎士様でした。よくお会いしますわね。
「はい。モルヴァン嬢はどちらへ?」
「馬車に忘れものをしてしまいましたの。練習頑張ってくださいませね。それでは失礼しますわ」
「モルヴァン嬢も私を応援してくれますか?」
「? えぇ、勿論ですわ」
私の応援なんてなくとも人気No.3ですのに……まだ声援が足りないのかしら? 欲しがりさんなのでしょうか?
騎士様とお別れして紅茶を無事に取り練習場に戻りました。
「……あら? アデールはどうしたのかしら? バスケットはあるのに……」
騎士団の練習場で何かあるはずないですわよね? お花摘み……? なら、私を待って行くはずだし……嫌な予感がしますわ。 だってこんな事初めてですもの。
「私が探して来ましょうか? 別れてからそれほど時間も経っていませんし」
ジョニーに提案されたので、お願いね。と言いました。ジョニーがアデールを探しに行ってすぐに練習が始まりました。
レイ様の姿を見ていますが、アデールもジョニーも帰ってこないのでそわそわしてしまいます。
「遅いわね。やっぱり何かあったのかしら……」
練習終了まではレイ様の元へは行けませんし……相談出来ませんもの。困りましたわ。アデールとジョニーの二人が気になって、そわそわしてしまい見学に集中出来ません。
「はぁっ……」
と大きく一呼吸すると後ろから声をかけられました。一番後ろの席に座っていましたので驚いて、きゃぁ。と声をあげてしまいましたわ。
きゃぁ。といっても声援にかき消されてしまいますわ。
「ちょっと、あなた! 出入り禁止と言ったでしょう! あの生意気なメイドといいあなた、家でどういう教育を受けていますの!」
……また子爵令嬢ですか。良い加減にしてほしいですわね。応援隊のボス的存在と言っていましたが“自称”でしたのよ。
出入り禁止と言われましたが、この令嬢に命令権などありませんのよね……
副隊長様は人気があるので、副隊長様の応援隊の方に特に厳しく罰則という名で退場させたり出入り禁止にしたりとやりたい放題なのですって。
子爵令嬢が好き放題している事に騎士団として家に抗議をしたらしいのですが、そうすると副隊長様への行為がエスカレートしたのだそうですわ。
偶然を装って待ち伏せしたり、副隊長様の持ち物をこっそり盗んだり、副隊長様とお話をする令嬢に嫌がらせをしたり……などなどです。
これはレイ様から聞きましたので私はルール違反などしておりませんもの。
堂々として良いのだそうですわ! それに副隊長様に特別な思いを持っておりませんもの。言いがかりですわよね。
「本日を以て練習を見に来ませんのでご安心下さい」
レイ様はこちらで練習する事はもうない。と言っていましたし、練習は本部に練習場があるそうで、そちらに行きますもの。
「……ほんっと、生意気な子ね。メイドが生意気なわけだわ!」
そうですわ! アデール!!
「うちのメイドに何か?!」
「少しお話をさせてもらっただけよ? 本当っ、口答えばかりするからつい、」
ふふっと嫌な笑い方をしましたわ。
「アデールはどこです!」
「教えてあげるわ。とっとと連れて帰って頂戴」
にやり。と笑う子爵令嬢に油断してしまいました。しゅっと、スプレーのようなものをかけられ、意識がなくなりかけて……これではレイ様に……そう思いイヤリングの片方をそっと取り、座席の下に投げました。気がついて……レイ様。
うっすら意識はあるのですけど身体がうまく動かせなくて……
女の人の声が聞こえる──
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