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グレイソン

頭を抱えるグレイソン

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「全く! なんで我が国に新婚旅行に来るんだよ! あぁくそ。忙しいな!」

「まぁ落ち着け。配置は決まったし、出席するパーティーも決まった。まさかうちでもする事になるとは思わなかったがな。リュシエンヌちゃんも来てくれるそうだな」

「あぁ、リュシエンヌは弟と参加する。護衛もつけるし、一人にならないように言ってある。ただ私はリュシエンヌがそこにいるのに、エリック殿下と女王の護衛だ! 責任者なのに護衛まで……まだまだ決めなきゃならない事が多い」

「そうだよな。うちも招待客の管理や食事、警備の見直しが大変なんだよ。両親が嘆いていたが、これも侯爵家たる所以だ。王家に信頼がある証拠だしな。私も主催者側として提出する物が多くて大変だ」

 うちも両親や兄夫婦が気を張っている。リュシエンヌも手伝うと言っていたが、まだ子供が幼いから無理はさせられないと両親が言っていた。

 実家でのパーティーにニコラを連れてきて欲しいと言われそのまま泊まる予定になっているそうだ。甥と姪がニコラと一緒にいたいと言うし、公爵家の護衛にうちの護衛も付いている。何かあっても賊の命の保証はない。公爵の影も潜ませておく。とまで父は言った。家に帰る心配を考えると泊まってもらった方が安心だな。

「あれか、エリック殿下にリュシエンヌちゃんを会わせたくないんだろ? 心が狭いな」

 違うとは言えないところが狭いたる所以。リュシエンヌはエリック殿下の事をなんとも思っていない。
 エリック殿下は王配で何かあったら国の責任になる。互いに結婚をして家族がある。リュシエンヌを信じなくてどうするんだ!

「はははっ。それはないぞ。リュシエンヌは出産したばかりだから身体が心配なだけだ。レオンよ。リュシエンヌがニコラを抱いている姿を見た事ないだろう? この世のものとは思えないほど可愛い。そして人妻にも子持ちにも見えない。エリック殿下は私とリュシエンヌが結婚した事を驚くだろうな」

 決して強がりではない!


「結婚式はしたが、披露宴はニコラが一歳になるまでお預けだったよな。一貴族の結婚だし、結婚式は親族しか呼んでないからエリック殿下の耳に入ってないかもな。陛下と王妃も来ていたけど」

 結婚したかどうかは調べようと思えばすぐに調べられる情報だ。陛下や王妃がわざわざエリック殿下に言うとは思えないが、エリック殿下はリュシエンヌが結婚した事は知っているかもしれないな。


  ******

 とうとうこの日が来てしまった。ここ数日家に帰れていないからハリスを泊まらせている。伯爵も夫人も許可してくれている。先ずはリル王国の女王とエリック殿下の婚礼パレードだ。なんで我が国でなんでするんだ……国民に人気があるから? そうかい。歓迎パレードとどう違うんだよ……

 へぇ。あの方がリル王国の女王か。ハッキリした顔立ちをしている。エリック殿下はエスコートをちゃんとしていて似合いの二人に見える。

 市民達に熱烈に受け入れられている。女王とエリック殿下も手を振って応えている。


 無事に王宮に着いて先ずは一安心。陛下と王妃に挨拶をして我々警備との今後の動きについての話がある。

 陛下も王妃も嬉しそうに会談をしていた。久しぶりに息子が帰ってきたのだからそうだよな。ゆっくりしたいだろうが我々との話は重要だ。無事に十日間を過ごして貰わなくては困る。


「やぁ、グレイソン殿久しぶりですね」

「エリック殿下、お久しぶりです。女王陛下には初めてお目に掛かります。このたび警備の責任者を務めさせていただきます。グレイソン・ルブールと申します」


「グレイソン殿は私の親戚なんだ。騎士団副団長補佐をしていて優秀なんですよ。ご結婚後はルブール侯爵になったんでしたね」

 知っていたか。リュシエンヌの話題も出そうだ。


「初めまして。護衛を務めてくださると聞いております。滞在中はご迷惑をおかけしますがよろしくお願いしますわ」

 手を出されたので挨拶代わりに軽くキスをした。

「閣下は素敵な方ですわね。涼やかな目元に恵まれた体躯。奥様が羨ましいですわね」

 余計な事は言わないでおこう。

「お世辞は結構ですよ。さて、お疲れのところ申し訳ありません。早速ですが本日王宮でお二人の歓迎パーティーが開かれます。国中の貴族が参加しておりますので、お楽しみ下さい。王女とエリック殿下を歓迎したいとの事で、滞在中に三件パーティーに出席なさって下さい。女王陛下の意見を取り入れて散策などの予定もありますので詳しくはまた後ほど。お疲れでしょうからしばらく休憩なさってください」

 事務的な内容だが、パーティー会場の警備の確認へ行かなくてはならない。

「わたくしは今日のパーティーで何度ダンスをする予定ですか?」

「それは別の者から説明があります」


 こういった時には誰と踊るかが既に決まっている。エリック殿下、陛下、王太子殿下といった無難な感じ。顔見知りがいた場合はダンスに応える事もあるが交流をメインとしているから挨拶で終わるだろう。


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