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 中へ入ったところでリージュの歩みがようやく止まる。そして、掴んでいたルージュの手を引っ張ってぎゅっと身体を抱き締める。

「リージュ……?」

「辛かったよな。俺も辛かったよ……」

 今まで王子らしく、威厳を持って振る舞っていたリージュが、突然弱気を見せていた。顔は見えていないが、恐らく少し言葉を掛けただけで泣きそうなほどになっているのだろう。

 ルージュは優しくその身体を抱き返す。

 互いが互いを包み込み、その温もりが少しばかりの癒やしとなっている。その場から動こうとせず、ゆっくりと静かな時間が過ぎていく。

 時折、ルージュの手がリージュの背中をそっと叩き、優しい刺激を与えている。

 それに反応するように、ルージュに相槌を打つように顔を擦り付けていく。

 何度かそれが続いたところで、二人はゆっくりと離れていった。少し表情が晴れやかになっていたが、リージュの目は少し潤んでいた。
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