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 そんな中、動かずにいたカイルがゆっくりと動き出した。

 二人の表情に焦りが現れる。

「おや、さっきまでの勢いはどうしたのですか? 引き返せと言ったのは嘘だったのですか?」

 ニヤリと浮かべた笑みがやけに不気味であった。二人の背中に嫌な感覚を与える。

「うわっ!!」

 すると、今までなんとか凌いでいたキールが地面に倒れた。意識はあるものの、斬られたような痕跡が見られる。

「キール!!」

 ポールの視界にも入っていた。だが、自分のことで精一杯のようで、近付けるような気配はなかった。

 ルージュとリージュも彼まで気遣うことはできなかった。

「もうやめて!」

 背後からこの場にいないはずの高い声が響く。
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