上 下
102 / 124
8

8-4

しおりを挟む
「なっ……何?」

「戻るって、みんなのところに? それとも、あなたの故郷のワード国のことですか、ルージュ様?」

「っ! 一体どういうつもりだ?」

 ワード国、そして本当の名前。綾子は知らないはずのことを口にしていた。

 ルージュは思わずその手を払い、彼女に掴み掛かった。

 驚いた様子は一切見せず、この反応が当然である、と受け入れているように冷静である。

「答えろ! どうして俺のことを知っている? 貴様は俺を、俺たちを殺すためにここにいるのか?」

 身体を揺さぶる勢いでルージュは迫る。だが、綾子は表情を変えずにただ見つめているだけであった。

「おーい、大丈夫か? ……って、何やってるんだ!?」

 そんなとき、ルージュの姿を探していたリージュが、部屋の中を覗き込んでいた。ルージュの見慣れない行動に驚きながら、二人の元へと駆け寄る。
しおりを挟む

処理中です...