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 そして次の瞬間、勢いのついたまま弾丸はエリーゼルの胸を貫いた。

 穴が開いたそこから、じんわりと赤い血が服へと滲んでいく。

 たった一発の弾丸が、彼女から力を奪っていき、後ろへと倒れ込んでいく。

「貴様ーーー!!」

 リージュの中には怒りが広がっていた。それを込めて兵士へと近付いていき、無防備になっている状態の兵士を思い切り斬り込む。

 バタリと倒れたその姿を見届けると、リージュはエリーゼルの元へと駆けていった。

 一発の弾丸で力を失っていった彼女の身体を、ルージュは優しく触れる。

「おい……エリーゼル……。嘘だと言ってくれ……どうして……」

「ルージュ様……。私の力は……全て、ここにあるのです……。どんどん力が……抜けて……」

「しっかりしろ! 俺たちにはお前が必要なんだ!」

「リージュ様……。お二人なら……大丈夫です……。この、国は……」

 ふぅ、と息を吐いたと思ったが、一気に彼女の身体から力が抜けていった。そしてそのまま、エリーゼルは動かなくなってしまった。
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