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12. 腹ペコグリフォン亭
レオンは両手を上げて彼女たちを制した。
「まあまあ、落ち着いて。とりあえず、何か美味しいものでも食べよう。今後のことは、そこで……」
「やったぁ!」
ルナが両手を挙げてぴょんと飛び跳ねた。
「あたし、お肉がいい! 大きいお肉! こーんなの!」
両手を広げて肉の大きさを示す。その仕草が、なんとも愛らしい。
「無駄遣いはダメよ!」
エリナが腕を組んで釘を刺す。だが、その表情は緩んでいた。
「でも……今日だけは、特別ね。ふふっ」
「ふふふ、ならちょっとだけエールも飲ませてもらおうかしら」
ミーシャが、悪戯っぽく微笑む。
「一杯だけよ!」
エリナはジト目でミーシャをにらんだ。
その視線には、何か過去の出来事を感じさせるものがあった。
ミーシャの酒癖には要注意かもしれない。
「あのお店にしようよ、大通りの!」
シエルが商店街の方を指差した。
「ずっと行きたかったの! いつも外から見るだけだったんだけど……」
「よーし、じゃあ決まりだ!」
レオンは、拳を突き上げた。
「今日はパーッと行こう! 僕たちの門出を祝って!」
「おー!」「やったぁ!」「うーれしー!」「ふふっ、飲むわよぉ!」
四人の声が重なる。
バラバラだった声が、初めて一つになった瞬間だった。
一行は、賑やかに商店街の方へと歩き出す。
レオンと四人の元気な美少女たち――――。
傍から見れば、仲の良いパーティに見えるだろうか。
まだ、そこまでの信頼関係はない。
でも、確かに、第一歩を踏み出せた。
その時だった。
ピロン。
脳裏に、軽やかな音と共にメッセージが浮かんだ。
【スキルメッセージ】
【好感度変動検知】
エリナ・ブラックソード
好感度:10→25
状態:【警戒】→【一安心】
ミーシャ・ホーリーベル
好感度:5→20
状態:【無関心】→【観察】
ルナ・クリムゾン
好感度:5→15
状態:【敵意】→【感謝】
シエル・フォン・アステリア
好感度:10→30
状態:【不信】→【安堵】
レオンは、思わず足を止めた。
――こんなことまで分かるのか!?
好感度が、数値で見える。
しかも、心の中の評価まで。
これは……とんでもないスキルだ。
レオンは驚きながら、前を歩く四人の後ろ姿を見つめた。
黒、金、赤、銀。
四色の髪が、陽の光を受けて揺れている。
それぞれに、まだ距離を感じる。
エリナは警戒を解いただけで、まだ心を開いてはいない。
ミーシャは興味を持っただけで、信頼には程遠い。
ルナは感謝してくれてはいるが、本質的に彼女の不安定さという問題が残っている。
シエルが一番信頼度が高いが、それでもまだ三十。「安堵」はしているが、「信頼」にはまだ届かない。
でも、確かな一歩を踏み出せた。
ゼロから始まった関係が、少しずつ、少しずつ、前に進んでいる。
こうして、全てを失った朝は、新たな仲間と希望を得た朝へと変わった。
カインよ。セリナよ。
見ていろ。
僕は必ず、最高のパーティを作ってみせる。
そして、いつか――お前たちの届かぬ高みへと達して見せる。
レオンは、ぎゅっと固く拳を握った。
それは、運命への反逆の、第一歩だった。
◇
一行はとりとめもない話をしながら石畳の道を歩いていく。
「ねえ、レオンって普段何食べてたの?」
「普通に食堂とか……」
「Aランクパーティだったんでしょ? もっと豪華なもの食べてたんじゃないの?」
「いや、僕は軍師だから、報酬の取り分は少なくて……」
「えー、ひどーい!」
「あらあら、搾取されていたのね。可哀想に」
「ボクなんか三日間何も食べてなかったんだから!」
「それはお前が方向音痴で迷子になったからだろ」
「う、うるさいな!」
姦しい少女たちの声を聞きながら、レオンは胸の奥が温かくなるのを感じていた。
つい数時間前まで、孤独だった。
仲間に裏切られ、恋人に捨てられ、家族に見放された。
世界中で、誰一人として自分の味方がいなかった。
なのに今、隣には四人の仲間がいる。
足取りが心なしか弾んでしまう。
これが、新しい人生の始まりなのだ。
「ここよ!」
シエルが足を止めて、一軒の店を指し示した。
煙突から、香ばしい白煙が立ち昇っている。
歴史を感じさせる木造建築。年季の入った梁と柱が、幾多の冒険者たちを見守ってきた証だった。
看板には、よだれを垂らしながら肉を見つめるグリフォンの、どこか愛嬌のある姿が描かれている。
『腹ペコグリフォン亭』
冒険者たちの間では、「少し値は張るが、間違いなく美味い店」として知られていた。
「まあまあ、落ち着いて。とりあえず、何か美味しいものでも食べよう。今後のことは、そこで……」
「やったぁ!」
ルナが両手を挙げてぴょんと飛び跳ねた。
「あたし、お肉がいい! 大きいお肉! こーんなの!」
両手を広げて肉の大きさを示す。その仕草が、なんとも愛らしい。
「無駄遣いはダメよ!」
エリナが腕を組んで釘を刺す。だが、その表情は緩んでいた。
「でも……今日だけは、特別ね。ふふっ」
「ふふふ、ならちょっとだけエールも飲ませてもらおうかしら」
ミーシャが、悪戯っぽく微笑む。
「一杯だけよ!」
エリナはジト目でミーシャをにらんだ。
その視線には、何か過去の出来事を感じさせるものがあった。
ミーシャの酒癖には要注意かもしれない。
「あのお店にしようよ、大通りの!」
シエルが商店街の方を指差した。
「ずっと行きたかったの! いつも外から見るだけだったんだけど……」
「よーし、じゃあ決まりだ!」
レオンは、拳を突き上げた。
「今日はパーッと行こう! 僕たちの門出を祝って!」
「おー!」「やったぁ!」「うーれしー!」「ふふっ、飲むわよぉ!」
四人の声が重なる。
バラバラだった声が、初めて一つになった瞬間だった。
一行は、賑やかに商店街の方へと歩き出す。
レオンと四人の元気な美少女たち――――。
傍から見れば、仲の良いパーティに見えるだろうか。
まだ、そこまでの信頼関係はない。
でも、確かに、第一歩を踏み出せた。
その時だった。
ピロン。
脳裏に、軽やかな音と共にメッセージが浮かんだ。
【スキルメッセージ】
【好感度変動検知】
エリナ・ブラックソード
好感度:10→25
状態:【警戒】→【一安心】
ミーシャ・ホーリーベル
好感度:5→20
状態:【無関心】→【観察】
ルナ・クリムゾン
好感度:5→15
状態:【敵意】→【感謝】
シエル・フォン・アステリア
好感度:10→30
状態:【不信】→【安堵】
レオンは、思わず足を止めた。
――こんなことまで分かるのか!?
好感度が、数値で見える。
しかも、心の中の評価まで。
これは……とんでもないスキルだ。
レオンは驚きながら、前を歩く四人の後ろ姿を見つめた。
黒、金、赤、銀。
四色の髪が、陽の光を受けて揺れている。
それぞれに、まだ距離を感じる。
エリナは警戒を解いただけで、まだ心を開いてはいない。
ミーシャは興味を持っただけで、信頼には程遠い。
ルナは感謝してくれてはいるが、本質的に彼女の不安定さという問題が残っている。
シエルが一番信頼度が高いが、それでもまだ三十。「安堵」はしているが、「信頼」にはまだ届かない。
でも、確かな一歩を踏み出せた。
ゼロから始まった関係が、少しずつ、少しずつ、前に進んでいる。
こうして、全てを失った朝は、新たな仲間と希望を得た朝へと変わった。
カインよ。セリナよ。
見ていろ。
僕は必ず、最高のパーティを作ってみせる。
そして、いつか――お前たちの届かぬ高みへと達して見せる。
レオンは、ぎゅっと固く拳を握った。
それは、運命への反逆の、第一歩だった。
◇
一行はとりとめもない話をしながら石畳の道を歩いていく。
「ねえ、レオンって普段何食べてたの?」
「普通に食堂とか……」
「Aランクパーティだったんでしょ? もっと豪華なもの食べてたんじゃないの?」
「いや、僕は軍師だから、報酬の取り分は少なくて……」
「えー、ひどーい!」
「あらあら、搾取されていたのね。可哀想に」
「ボクなんか三日間何も食べてなかったんだから!」
「それはお前が方向音痴で迷子になったからだろ」
「う、うるさいな!」
姦しい少女たちの声を聞きながら、レオンは胸の奥が温かくなるのを感じていた。
つい数時間前まで、孤独だった。
仲間に裏切られ、恋人に捨てられ、家族に見放された。
世界中で、誰一人として自分の味方がいなかった。
なのに今、隣には四人の仲間がいる。
足取りが心なしか弾んでしまう。
これが、新しい人生の始まりなのだ。
「ここよ!」
シエルが足を止めて、一軒の店を指し示した。
煙突から、香ばしい白煙が立ち昇っている。
歴史を感じさせる木造建築。年季の入った梁と柱が、幾多の冒険者たちを見守ってきた証だった。
看板には、よだれを垂らしながら肉を見つめるグリフォンの、どこか愛嬌のある姿が描かれている。
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