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18. 戦わない強さ
カルロスの仲間たちが真っ青になる。
「くっ……! 何やってんだよ、カルロス!」
「情けねぇ……俺たちまで笑いもんじゃねぇか……!」
「ち、治療院に連れてってくれぇぇぇ!!」
顔を真っ赤に腫らしたカルロスが、涙声で叫ぶ。
トマトソースまみれの顔は、もはや見る影もない。
さっきまでの威勢は、どこへやら。ただの惨めな酔っ払いに成り下がっていた。
「ほら、立てよ……! 行くぞ……!」
仲間たちは、恥ずかしさと怒りで顔をしかめながら、トマトまみれのカルロスを引きずって店を出ていった。
扉が閉まる音。
そして、再び爆笑。
店内は、すっかりお祭り騒ぎになっていた。
「いやぁ、今日一番の見世物だったな!」
「あのカルロスがあんな目に遭うとは……!」
「お嬢ちゃんたち、よくやった! 次の飲み物は俺が奢るぜ!」
客たちが、口々に声をかけてくる。
レオンたちのテーブルには、差し入れのエールやつまみが積み上がっていく。
エリナは、ゆっくりと剣を鞘に収めた。
カチン、と金属音が響く。
「一体これは……?」
エリナが、呆然とした顔でレオンを見つめた。
さっきまで、本当に斬る気でいた。本気で、あの男の喉を掻き切るつもりだったのに。
それが、こんな形で終わるなんて。
「今の……」
エリナの声が、震えていた。
漆黒の瞳には、驚愕と、困惑と、そして――畏怖に近い感情が渦巻いていた。
「見えてたの? こうなるって、全部」
「ああ。【運命鑑定】は、こういう時にも役立つんだ」
レオンは、肩をすくめてみせる。
まるで、大したことではないかのように。
だが、これがどれほど凄いことなのか、少女たちには分かっていた。
数秒先の未来が見えれば、それだけで戦況は一変する。
まさに、軍師として究極の能力だ。
「戦闘力はゼロだけど」
レオンが、苦笑を浮かべた。
「戦わずに勝つこともできる。これが、僕なりの戦い方なんだ」
戦わずに勝つ。
その言葉が、エリナの胸に深く響いた。
五年間、ずっと剣を振るってきた。
復讐のために、敵を斬ることこそが自分の道だと信じてきたのだ。
力で敵を倒す。それ以外の方法など、考えたこともなかった。
でも、この男は違う。
剣を振るわずに、敵を無力化した。
血を一滴も流さずに、勝利を収めた。
「……戦わない強さ、か」
エリナが呟いた。
その漆黒の瞳に、新しい光が宿っている。
今まで見えなかったものが、見え始めていた。
力だけが、強さではない。
この男は、別の形の強さを持っている。
そして、それは――自分に欠けているものかもしれない。
「うふふ」
ミーシャが、くすくすと笑った。
聖女の仮面は相変わらずだが、その空色の瞳には、本物の輝きが宿っていた。
興味。好奇心。そして、期待。
「とっても面白いわ」
ミーシャが、レオンをじっと見つめる。
観察するような、品定めするような、それでいてどこか楽しそうな視線。
「あなた、本当に面白い人ね。こんな人、初めて会ったわ」
今までミーシャが出会ってきた男たちは、みんな同じだった。
下心を持って近づき、自分の力を誇示する。
でも、この男は違う。
こんな奇跡のような力を持っているのに、それを見せつけない。
まるで、物語の中の英雄のようだ。
もっと知りたい。もっと観察したい。
ミーシャの中で、好奇心がふつふつと湧き上がっていた。
「すごい!」
ルナが、子供のように目を輝かせた。
「すごい、すごい! まるで予言者みたい!」
両手を握りしめ、興奮気味に声を上げる。
「未来が見えるなんて、魔法学院でも聞いたことない! そんなスキル、本当にあるんだ!」
ルナにとって、レオンの力は、まさに奇跡だった。
レオンが導いてくれるなら、もしかしたら自分も力を制御できるようになるかも――。
小さな希望が、ルナの胸に芽生えていた。
「ボクたち、とんでもない人と組んだんだね」
シエルが、感嘆の息を漏らした。
碧眼が、驚きに見開かれている。
「未来が見える軍師……。こんな人がいるなんて、思わなかった」
公爵家にいた頃、様々な人間を見てきた。
将軍、魔法使い、商人、政治家。
だが、未来を見通す力を持つ者など、一人もいなかった。
そんな力があれば、家を逃げ出すような自分の運命も変えられただろう。
でも今、自分の隣には、その力を持つ男がいる。
そして、その男は、自分を「仲間」と呼んでくれた。
――本当に、自由になれるかもしれない。
シエルの胸に、確かな希望が灯っていた。
「くっ……! 何やってんだよ、カルロス!」
「情けねぇ……俺たちまで笑いもんじゃねぇか……!」
「ち、治療院に連れてってくれぇぇぇ!!」
顔を真っ赤に腫らしたカルロスが、涙声で叫ぶ。
トマトソースまみれの顔は、もはや見る影もない。
さっきまでの威勢は、どこへやら。ただの惨めな酔っ払いに成り下がっていた。
「ほら、立てよ……! 行くぞ……!」
仲間たちは、恥ずかしさと怒りで顔をしかめながら、トマトまみれのカルロスを引きずって店を出ていった。
扉が閉まる音。
そして、再び爆笑。
店内は、すっかりお祭り騒ぎになっていた。
「いやぁ、今日一番の見世物だったな!」
「あのカルロスがあんな目に遭うとは……!」
「お嬢ちゃんたち、よくやった! 次の飲み物は俺が奢るぜ!」
客たちが、口々に声をかけてくる。
レオンたちのテーブルには、差し入れのエールやつまみが積み上がっていく。
エリナは、ゆっくりと剣を鞘に収めた。
カチン、と金属音が響く。
「一体これは……?」
エリナが、呆然とした顔でレオンを見つめた。
さっきまで、本当に斬る気でいた。本気で、あの男の喉を掻き切るつもりだったのに。
それが、こんな形で終わるなんて。
「今の……」
エリナの声が、震えていた。
漆黒の瞳には、驚愕と、困惑と、そして――畏怖に近い感情が渦巻いていた。
「見えてたの? こうなるって、全部」
「ああ。【運命鑑定】は、こういう時にも役立つんだ」
レオンは、肩をすくめてみせる。
まるで、大したことではないかのように。
だが、これがどれほど凄いことなのか、少女たちには分かっていた。
数秒先の未来が見えれば、それだけで戦況は一変する。
まさに、軍師として究極の能力だ。
「戦闘力はゼロだけど」
レオンが、苦笑を浮かべた。
「戦わずに勝つこともできる。これが、僕なりの戦い方なんだ」
戦わずに勝つ。
その言葉が、エリナの胸に深く響いた。
五年間、ずっと剣を振るってきた。
復讐のために、敵を斬ることこそが自分の道だと信じてきたのだ。
力で敵を倒す。それ以外の方法など、考えたこともなかった。
でも、この男は違う。
剣を振るわずに、敵を無力化した。
血を一滴も流さずに、勝利を収めた。
「……戦わない強さ、か」
エリナが呟いた。
その漆黒の瞳に、新しい光が宿っている。
今まで見えなかったものが、見え始めていた。
力だけが、強さではない。
この男は、別の形の強さを持っている。
そして、それは――自分に欠けているものかもしれない。
「うふふ」
ミーシャが、くすくすと笑った。
聖女の仮面は相変わらずだが、その空色の瞳には、本物の輝きが宿っていた。
興味。好奇心。そして、期待。
「とっても面白いわ」
ミーシャが、レオンをじっと見つめる。
観察するような、品定めするような、それでいてどこか楽しそうな視線。
「あなた、本当に面白い人ね。こんな人、初めて会ったわ」
今までミーシャが出会ってきた男たちは、みんな同じだった。
下心を持って近づき、自分の力を誇示する。
でも、この男は違う。
こんな奇跡のような力を持っているのに、それを見せつけない。
まるで、物語の中の英雄のようだ。
もっと知りたい。もっと観察したい。
ミーシャの中で、好奇心がふつふつと湧き上がっていた。
「すごい!」
ルナが、子供のように目を輝かせた。
「すごい、すごい! まるで予言者みたい!」
両手を握りしめ、興奮気味に声を上げる。
「未来が見えるなんて、魔法学院でも聞いたことない! そんなスキル、本当にあるんだ!」
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レオンが導いてくれるなら、もしかしたら自分も力を制御できるようになるかも――。
小さな希望が、ルナの胸に芽生えていた。
「ボクたち、とんでもない人と組んだんだね」
シエルが、感嘆の息を漏らした。
碧眼が、驚きに見開かれている。
「未来が見える軍師……。こんな人がいるなんて、思わなかった」
公爵家にいた頃、様々な人間を見てきた。
将軍、魔法使い、商人、政治家。
だが、未来を見通す力を持つ者など、一人もいなかった。
そんな力があれば、家を逃げ出すような自分の運命も変えられただろう。
でも今、自分の隣には、その力を持つ男がいる。
そして、その男は、自分を「仲間」と呼んでくれた。
――本当に、自由になれるかもしれない。
シエルの胸に、確かな希望が灯っていた。
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