【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻

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29. 素敵な舞台

 窓の外では、逃げ惑う人々の声が聞こえる。

 子供の泣き声。

 母親の叫び声。

 荷馬車の車輪が急いで石畳を転がる音。

 街は、混乱の渦中にあった。

 その時、レオンが笑った。

「ははっ!」

 明るい、吹っ切れたような笑い声。

「十分です。ありがとうございます! すぐに準備をします!」

「待て……」

 ギルドマスターが、立ち上がった。

「君たち、本当に……」

 その目に、涙が浮かんでいた。

 長年ギルドを預かってきた男。

 数えきれないほどの冒険者を送り出し、少なくない数を失ってきた男。

 でも、こんな感情を見せるのは、初めてだった。

「何を言ってるんですか」

 レオンが、ぎゅっと拳を握る。

「祝賀会の準備、お願いしますよ?」

「……は?」

「凱旋するんですから」

「が、凱旋……?」

 ギルドマスターは、目を大きく見開いた。

 この少年は、何を言っているのか。

 三万の魔物を相手に、凱旋?

 正気の沙汰ではない。

「そんなに驚かないでください」

 レオンの翠色の瞳が、輝いていた。

「僕らには、秘策があるんです」

「秘策……?」

「そう。三万の魔物たちを、一掃する秘策が」

 その言葉に、ギルドマスターは絶句した。

(ありえない……)

 いったいどこの世界に三万の魔物を一層できる新人パーティがいる?

 嘘だと思った。

 虚勢だと思った。

 でも、この少年の目は、嘘をついていないのだ。

「いったい……、何をするつもりだ……?」

「今は言えません」

 レオンが、人差し指を唇に当てる。

 秘密、というジェスチャー。

「でも、勝てるんです。僕らは、勝ちに行くんです」

 その言葉を受けて、エリナが不敵に微笑んだ。

「そうですよ。私たちは『アルカナ』」

 黒髪を翻し、胸を張る。黒曜石のような瞳には炎が宿っていた。

「不可能を可能にするパーティなんです」

 ルナが、杖を高く掲げた。

「祝賀会、絶対開いてくださいね! あたし、美味しいもの食べたいんだから!」

 シエルが、弓を抱きしめた。

 銀髪が、窓から差し込む光を受けて輝いている。

「ボクたちを信じて、任せてください」

 凛とした声。

 ミーシャが、優雅に頷いた。

 金髪が、さらりと揺れる。

「これは私たちのためにあるような、素敵な舞台ですわ」

 聖女の微笑み。

 でも、その奥には、本物の覚悟が宿っていた。

 ギルドマスターは、その光景を見つめていた。

 死地に赴く者たちの顔ではない。

 まるで、輝かしい冒険の始まりを前にした、英雄たちのような――。

 気がつくと、ギルドマスターは手を差し出していた。

 震える手を。

「お前たち……」

 声が、かすれていた。

 一人、また一人と、その手を握っていく。

 最初は、エリナ。

 その手は、剣だこで硬かった。

 何年も剣を振り続けてきた証。

 でも、その手には確かな温もりがあった。

 次は、ルナ。

 その手は、小さくて、まだ震えていた。

 でも、緋色の瞳には希望が燃えていた。

 怖いけど、逃げない。

 その決意が、小さな手から伝わってきた。

 そして、シエル。

 その手は、意外に柔らかかった。

 でも、そこには確かな決意が満ちていた。

 自分の人生を、自分で切り拓く決意が。

 次に、ミーシャ。

 その手は、優雅で、少しひんやりとしていた。

 聖女の手。

 でも、その冷たさの奥に、確かな意志があった。

 そして最後に、レオン。

 茶髪の青年が、手を差し出す。

 その手を握った瞬間、ギルドマスターは確信した。

 この少年は、本物だ。

 何の根拠もない。

 でも、この手には、人を導く力があると感じたのだ。

 だから、信じてみよう。

 この若者たち――『アルカナ』を。

「必ず……」

 ギルドマスターは、握手の手を力強く揺らした。

 涙が、頬を伝っていく――老兵の、熱い涙が。

「必ず、生きて帰ってこい」

 その言葉に、レオンは力強く頷いた。

「はい」

 翠色の瞳が、未来を見据えていた。

「この街は、『アルカナ』が守ってみせます」


       ◇


 執務室を出て、ギルドの階段を下りていく。

 五人の足音が、静かに響いた。

 ホールには、まだ多くの冒険者たちが残っている。

 彼らは、遠巻きに五人を見つめていた。

 ひそひそと、囁き合う声が聞こえる。

「新人どもが、死にに行くらしいぜ」

「馬鹿な奴らだ」

「目立ちたがり屋め」

「せめて、苦しまずに死ねるといいな」

 憐れみ。

 嘲笑。

 そして、ほんの少しの罪悪感。

 自分たちが行かない代わりに、この若者たちが死ぬのだという、後ろめたさ。

 それを誤魔化すために、彼らは笑っていた。
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