【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻

文字の大きさ
33 / 186

33. 僕たちの物語

 城門が近づくにつれ、空気が変わっていった。

 温度が下がったようにすら感じられる。

 死の気配が、風に乗って漂ってくるのだ。

 ゴゴゴゴゴ……。

 遠雷のような地鳴りが、足元から伝わってくる。

 それは、三万の魔物が大地を踏み砕く音だった。

 無数の足が、地面を蹴っている。

 無数の爪が、土を抉っている。

 その振動が、こんな遠くにまで伝わってくるのだ。

 グォォォォォ……。

 理性を失った獣たちの咆哮が、死の風となって吹き寄せてくる。

 肌がヒリヒリするような、不吉な風。

 その風に乗って、血の匂いが漂ってくる。

 門をくぐってくる避難民たちの顔は、みんな絶望に染まっていた。

 血まみれの農夫が、虚ろな目で歩いてくる。

 無傷で生き残ってしまった。

 家族を失い、仲間を失い、それでも生き残ってしまった。

「村が……」

 虚ろな声で、呟く。

「一瞬で、消えた……」

 心が壊れかけ、その目には何も映っていなかった。

 子供を抱いた母親が、涙を流しながら走ってくる。

 その子供はぐったりとしていた。

「もうダメよ……この街も、すぐに出ないと……!」

 悲鳴のような声。

 その目には、狂気に近い恐怖が宿っていた。

 老人が、杖にすがりながら歩いてくる。

 一歩ごとに、膝が震えている。

 でも、彼の目には、恐怖ではなく、諦めが浮かんでいた。

「二十年前と、同じだ……。また、全てが灰になる……」

 呟く声は、枯れていた。

 もう、これ以上逃げる気力も残っていない。

 誰もが怯えていた。

 この街もやがて魔物の胃袋に消えることを。

 三万の魔物。

 千の牙。

 万の爪。

 凄まじき暴力の津波が、全てを飲み込もうと迫っている。

 普通なら足がすくみ、逃げ出すことしか考えない。

 でも――。

 レオンの翠色の瞳には、迷いがなかった。

 むしろ、その輝きは増していく。

 恐怖を超えた先にある、静かな覚悟の光。

「行くぞ」

 城門をくぐりながら静かに、しかし雷鳴のような力強さで告げた。

 振り返れば四人の仲間が、そこにいる。

 エリナ、ミーシャ、ルナ、シエル。

 全員の顔に、同じ覚悟が宿っている。

「僕たちの物語を、始めよう」

「行こう!」

 エリナが、剣の柄をぎゅっと握りしめた。

 その顔には、戦士の笑みが浮かんでいる。

 五年間、復讐のために生きてきた。

 でも今は違う。

 仲間を守るため、街を守るために戦う。

 その決意が、彼女を強くしていた。

「伝説を作るわよー!」

 ルナが、杖を天に掲げた。

「やってやるんだから!」

 シエルがぎゅっとこぶしを握り、碧眼を輝かせた。

「畜生たち、覚悟してなさい……うふふ」

 三万の魔物を「畜生」呼ばわりする大胆さ。

 でも、その瞳は期待に満ちていた。

 とてつもない試練。でもこの仲間となら、新たな景色が見られるに違いない。

 五人の足音が、石畳に響く。

 逃げ惑う人々の流れに逆らって、死地へと向かう若者たち。

 その姿は、小さかった。

 装備はピカピカの新品で、まだ未使用だ。

 経験も実績もない。

 どこから見ても、ただのド素人冒険者だ。

 でも――。

 朝日の黄金の光の中で、五人は祝福されるように輝いていた。

 避難民たちが、ふと足を止めた。

「あの子たち……」

 誰かが、呟いた。

「まさか、砦へ向かうのか……?」

 別の誰かが、驚きの声を上げる。

「正気か……?」

 みんなが、振り返っていた。

 逃げる足を止めて、五人の背中を見つめていた。

 そして、静かに手を合わせた。

 神に祈るように。

 奇跡を願うように。

 門番の老兵が、震える手を胸に当てた。

 長年、この門を守ってきた男。

 厳しい戦場へ数えきれないほどの冒険者を見送り、その多くが帰らなかった。

 でも、こんな若者たちは初めてだった。

 死地に向かうというのに、笑っている。

 恐怖に怯えるどころか、輝いている。

「……ご武運を」

 涙声だった。

 老兵の目から、涙が零れ落ちる。

 この若者たちが、帰ってくることを。

 奇跡を起こしてくれることを。

 心の底から、祈っていた。


       ◇


 振り返りもせず、前だけを見て、ただ真っ直ぐに進んでいく五人。

 その背中を見送る人々は、後にこう語り継いだ。

       ――

「あの朝、私たちは見たのよ」

 美しい湖畔の公園のベンチで白髪の老婆が、膝の上の孫娘に語りかける。

 皺だらけの顔に、懐かしそうな微笑みが浮かんでいた。

「五人の若者が、朝日に包まれていたの」

 孫は、大きな目を見開いて聞いている。

 この話を聞くのは、もう何度目だろう。

 でも、何度聞いても飽きない。

 おばあちゃんの目が、いつもキラキラ輝くから。

「死の大地へ向かうというのに、まるでお祭りにでも行くかのように笑っていたわ」

 老婆の声が、少し震える。

「怖くないはずがないのに。死ぬかもしれないのに。それでも、笑っていたの」

 老婆は、湖面を見つめた。

 あの日と同じ朝日がキラキラと煌めいている。

 孫が、首を傾げる。

「なんで笑ってたの?」

「女神様に導かれていた……のかしらね? おばあちゃんにも、分からないわ」

 老婆の瞳に、あの日の光景が蘇る。

「彼らは、輝いていたの」

 声が、震えた。

「まるで、光そのものになろうとしているかのように」

 老婆は恍惚とした表情で、青空に向かって遥か高く屹立する純白の塔を見上げた。

      ――

感想 1

あなたにおすすめの小説

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜

グリゴリ
ファンタジー
 木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。  SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。  祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。  恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。  蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。  そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。  隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。

追放された宮廷魔導師、実は王国の防衛結界を一人で維持していた

やんやんつけばー
ファンタジー
「成果が見えない者に、宮廷の席は与えられない」――十年間、王国の防衛結界を独力で維持してきた宮廷魔導師ルクスは、無能の烙印を押されて追放された。だが彼が去った翌日から、王都を守る六つの楔は崩壊を始める。魔物が辺境を襲い、大臣たちが混乱する中、ルクスは静かに旅に出ていた。もう結界は自分の仕事ではない。そう決めたはずなのに、行く先々で人々の危機に遭遇し、彼は再び魔法を使う。追放×ざまぁ×再起の王道ファンタジー。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!

竜鳴躍
ファンタジー
気が付いたら転生していました。 でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。 何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。 王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。 僕は邪魔なんだよね。分かってる。 先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。 そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。 だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。 僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。 従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。 だけど、みんな知らなかったんだ。 僕がいなくなったら困るってこと…。 帰ってきてくれって言われても、今更無理です。 2026.03.30 内容紹介一部修正

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!