【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻

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37. 三つの戦場、運命の交差点

 それは、三つの戦場で同時に奏でられる、壮大な逆転劇の序曲――――。

 運命の糸が複雑に絡み合い、少女たちの覚醒が始まろうとしていた。

 最初に動いたのはエリナ。

 月光が森を銀色に染める中、黒髪の少女は砦の精鋭二十名と共に、死の行軍を始めた。

 隊を率いるのはAランク剣士ブラッド。その筋骨隆々とした背中を追いながら、エリナは【運命鑑定】が示した未来を反芻する。

 レオンから聞かされた、作戦の全容。

(火砕流は、魔物の大半を飲み込む)

 三万の魔物を一瞬で焼き尽くす神の炎。それは、確かに希望だった。

 でも、問題はその後だ。

(でも、ボスは逃げる)

 魔物の群れを統率している存在。

 ボスは夜になればリッチを召喚することができる。

 リッチとは死霊術を操る最悪の魔物であり、リッチが死者を蘇らせれば三万の死体は三万のアンデッドとなって襲い掛かってくることになる。

 エリナは、ぞっとした。

 火砕流で焼かれた魔物たちが、死体のまま蘇る。

 それは、最初の三万よりも、さらに厄介な敵だ。

 だから、ボスを逃がすわけにはいかない。

 退路を断ち、確実に仕留める。

 シンプルだが、困難極まりない作戦だった。

 暗い森を静かに進む一行。足音一つ立てない行軍。

 しかし――。

「グルルル……」

 赤い眼が、闇の中で光る。

「敵だ!」

 ブラッドの剣が、月光を反射して弧を描く。

 シュッ!

 最小限の動きで、ゴブリンの喉を切り裂く。斬撃音すら上がらない、完璧な太刀筋。

「すげぇ……」

 誰かが息を呑む。

 エリナは、その動きを瞳に焼き付けた。

(あの足運び、あの重心移動、あの呼吸――)

 全てを、頭に叩き込む。

 これが、Aランクの剣技。

 これが、砦最強の男の実力。

 次の敵が、現れた。

 犬の顔をした、二足歩行の魔物たち――コボルトの群れだ。

「行きます!」

 エリナは赤い剣をスラリと抜き、ブラッドの動きを真似ようとした。

 頭では分かっている。足を這わせ、腰を落とし、最短距離で――。

 だが。

「くっ!」

 剣が重い。体が追いつかない。

 まだレベルが低い身体は理想の動きを拒絶する。剣に振り回され、バランスを崩し――。

「危ない!」

 コボルトの爪が、エリナの頬をかすめる瞬間。

 ガキィン!

 ブラッドの剣が、横から敵を両断した。

「……ったく」

 冷たい視線が、エリナを射抜く。

「おい、お嬢ちゃん」

 侮蔑と苛立ちが混じった声。

「リーダー様のお気に入りなのかも知らんが、足を引っ張るなよ」

 その言葉が、胸に刺さる。

 エリナは唇を開きかけた。レオンと特別な関係だからと邪推されたことは心外である。あんな優男やさおとこなど眼中にないのだ。けれど――。

(……足を引っ張っているのは事実だ)

 奥歯を噛み締める。

(もっとパワーさえあれば……)

 幾度となく繰り返される遭遇戦。その度に、ブラッドの剣が魔物たちを薙ぎ払う。銀の軌跡が闇を裂き、血飛沫が宙を舞う。エリナはその神速の剣技を瞳に焼き付け、己の身体に刻み込もうと試みる。だが現実は残酷だった。頭では理解できても、身体がついてこない。剣を振るえば剣速不足で空を切り、踏み込めばワンテンポ遅れて体勢を崩す――――。

 積み重なっていく挫折の山。膨れ上がっていく屈辱の澱。それでも時間だけは無情に流れていく。

 やがて、東の地平線に仄かな光が差し込み始めた頃――。

「着いたぞ」

 ブラッドの重い声が、静寂を破った。

 目の前に広がるのは、両側を切り立った岩壁に挟まれた細い道。まるで大地が巨人の剣で切り裂かれたかのような、天然の隘路あいろ。朝靄が立ち込め、その奥は深い闇に沈んでいる。

「ここが、奴らの死に場所となる」

 【運命鑑定】が示した、宿命の戦場。

 間もなく、火砕流から逃れた数百の魔物が、ボスと共にこの狭い道へ雪崩れ込んでくるはずだ。多勢に無勢の戦いを覆す太古より伝わる戦術――隘路での待ち伏せ。ボスをしとめるにはこの作戦しかなかった。

「陣形を敷け! 一匹たりとも通すな!」

 ブラッドの号令が谷間に響き渡る。

 兵士たちが素早く散開していく。岩陰に身を潜め、弓に矢をつがえ、剣を月光に煌めかせる。殺気と緊張が、薄明の空気を震わせた。

 エリナも定められた位置へと足を運ぶ。だが、剣を構えようとしたその手が、小刻みに震えていることに気づく。

(私に……本当にできるのだろうか?)

 薄明の光を受けた赤い刀身が、まるで血に濡れているかのように、妖しく輝いた。それは彼女自身の不安を映し出す鏡のようでもあった。

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