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43. 剥き出しの本性
それでも、レオンは微笑みを崩さない。
手も離さない。
(どうして……どうして、そこまで……)
ルナの瞳から、涙が溢れ出す。
あの日、魔法学院で暴走した時、誰もがルナから逃げていった。親友さえも、最後には背を向けた。
当然だ。
化け物から逃げるのは、当たり前のことだ。
でも、この人は――。
この人だけは、逃げない。
火傷を負いながら、激痛に耐えながら、それでも自分を抱きしめ続けている。
「できると信じてごらん? 本当のキミには簡単なことなんだから……」
「本当の……私……?」
本当の私。
それは、どんな私だろう。
化け物? 災厄? 呪われた存在?
違う。
レオンが見ているのは、そんな私じゃない。
『僕は本当のルナを知ってるよ』
来る途中に聞いた言葉が、心の奥底で響く。
『暴走する力も、それにおびえる弱さも全部含めて、僕にはルナが必要なんだ』
そう口説かれながら山道を登ってきていたのだ。
なぜかは知らないが、ずっと前からルナは知っていた。
この人のためなら、何でもできる、と。
この人のためなら、どんな恐怖にも立ち向かえる、と。
「くっ!」
ルナは涙を拭い、大きく息を吸い込む。レオンの吐息が、痛みと共に確かな信頼を伝えてくる。
何度か大きく深呼吸を繰り返すと、上空で暴れる炎龍を睨みつけた。
緋色の瞳が、龍殺しの魔力を宿して妖しく輝く。その瞬間、少女の中に眠っていた真の力が目覚める。
恐怖は、消えていなかった。
トラウマは、癒えていなかった。
でも、それでいい。
怖くても、震えていても、立ち向かうことはできる。
大切な人を守るために。
信じてくれた人に応えるために。
「炎龍よ!」
小さな体から、神をも畏怖させる威圧感が放たれる。大地が震え、空気がきしむ。
「戯れはこれまで! 我が命に従え!」
そして、凄まじい殺気を込めて叫んだ。
「従わなければ……ぶっ殺す!」
その瞬間、ルナの殺意が紫電となって炎龍を貫いた。龍を殺すために生まれた魔力が、その本性を露わにする。
これが、竜殺しの魔力。
これが、ルナ・クリムゾンの真の姿。
可愛らしい少女の外見の奥に潜む、古代龍さえも屠る殺戮の本能。
ギョワァァァ!
炎龍が怯えたような咆哮を上げる。まるで天敵に出会った獣のように、身を縮こまらせる。
自分が生み出した龍が、自分を恐れている。
それは、ルナにとって初めての経験だった。
(私は……龍を従えられる……!)
歓喜と共に、新たな力が全身を駆け巡る。
「行きなさい! あの穴に!」
次の瞬間、炎龍が主人に従う忠犬のように、素直に噴気孔へと突っ込んでいった。
「ヨシッ!」
ルナが小さくガッツポーズ。
その瞬間、全身から力が抜けて、膝から崩れ落ちそうになる。
「ルナ!」
レオンが、焼けただれた腕でルナを支えた。
「やった……私、やったよ……」
振り返ると、レオンの腕は酷い有様だった。赤く腫れ上がり、所々に水膨れができている。
「ご、ごめん……! 私のせいで……!」
涙が溢れ出す。また、大切な人を傷つけてしまった。
だが、レオンは笑っていた。
「ルナ、やったな」
「で、でも、腕が……!」
「こんなの、大したことないよ」
そう言って、レオンは焼けただれた腕を震わせながら上げた。
「君が成功したんだ。それに比べたら、こんな傷なんて……」
「馬鹿……! 馬鹿、馬鹿、馬鹿……!」
ルナはレオンの胸に顔を埋めて、声を上げて泣いた。
嬉しくて。
悔しくて。
そして、何より――この人のことが、どうしようもなく大切に思えて。
「べ、別に……あんたのためにやったわけじゃ、ないんだからね……」
涙声で、いつもの台詞を呟く。
レオンは優しく笑って、ルナの頭を撫でた。
「ああ、分かってる」
その手は、火傷で真っ赤に腫れ上がっていた。
それでも、その温もりは、どんな魔法よりも心地よかった。
◇
炎龍が噴気孔へと突っ込んでいった直後、ミーシャは一瞬の躊躇もなく前に踊り出た。
全身から黄金色の聖なる光が溢れ出し、まるで女神が降臨したかのような神々しさ。
「聖なる封印!」
両手を天に掲げ、全魔力を解放する。黄金の光が巨大な盾となって、炎龍が突っ込んでいった噴気孔を完全に塞いだ。
噴気孔の奥深くで炎龍が大爆発する轟音が響き、凄まじい衝撃が聖なる盾を揺るがす。
山全体が、巨人が目覚めるかのように震動し始める。火山が、三百年の眠りから目覚め始めていた。
手も離さない。
(どうして……どうして、そこまで……)
ルナの瞳から、涙が溢れ出す。
あの日、魔法学院で暴走した時、誰もがルナから逃げていった。親友さえも、最後には背を向けた。
当然だ。
化け物から逃げるのは、当たり前のことだ。
でも、この人は――。
この人だけは、逃げない。
火傷を負いながら、激痛に耐えながら、それでも自分を抱きしめ続けている。
「できると信じてごらん? 本当のキミには簡単なことなんだから……」
「本当の……私……?」
本当の私。
それは、どんな私だろう。
化け物? 災厄? 呪われた存在?
違う。
レオンが見ているのは、そんな私じゃない。
『僕は本当のルナを知ってるよ』
来る途中に聞いた言葉が、心の奥底で響く。
『暴走する力も、それにおびえる弱さも全部含めて、僕にはルナが必要なんだ』
そう口説かれながら山道を登ってきていたのだ。
なぜかは知らないが、ずっと前からルナは知っていた。
この人のためなら、何でもできる、と。
この人のためなら、どんな恐怖にも立ち向かえる、と。
「くっ!」
ルナは涙を拭い、大きく息を吸い込む。レオンの吐息が、痛みと共に確かな信頼を伝えてくる。
何度か大きく深呼吸を繰り返すと、上空で暴れる炎龍を睨みつけた。
緋色の瞳が、龍殺しの魔力を宿して妖しく輝く。その瞬間、少女の中に眠っていた真の力が目覚める。
恐怖は、消えていなかった。
トラウマは、癒えていなかった。
でも、それでいい。
怖くても、震えていても、立ち向かうことはできる。
大切な人を守るために。
信じてくれた人に応えるために。
「炎龍よ!」
小さな体から、神をも畏怖させる威圧感が放たれる。大地が震え、空気がきしむ。
「戯れはこれまで! 我が命に従え!」
そして、凄まじい殺気を込めて叫んだ。
「従わなければ……ぶっ殺す!」
その瞬間、ルナの殺意が紫電となって炎龍を貫いた。龍を殺すために生まれた魔力が、その本性を露わにする。
これが、竜殺しの魔力。
これが、ルナ・クリムゾンの真の姿。
可愛らしい少女の外見の奥に潜む、古代龍さえも屠る殺戮の本能。
ギョワァァァ!
炎龍が怯えたような咆哮を上げる。まるで天敵に出会った獣のように、身を縮こまらせる。
自分が生み出した龍が、自分を恐れている。
それは、ルナにとって初めての経験だった。
(私は……龍を従えられる……!)
歓喜と共に、新たな力が全身を駆け巡る。
「行きなさい! あの穴に!」
次の瞬間、炎龍が主人に従う忠犬のように、素直に噴気孔へと突っ込んでいった。
「ヨシッ!」
ルナが小さくガッツポーズ。
その瞬間、全身から力が抜けて、膝から崩れ落ちそうになる。
「ルナ!」
レオンが、焼けただれた腕でルナを支えた。
「やった……私、やったよ……」
振り返ると、レオンの腕は酷い有様だった。赤く腫れ上がり、所々に水膨れができている。
「ご、ごめん……! 私のせいで……!」
涙が溢れ出す。また、大切な人を傷つけてしまった。
だが、レオンは笑っていた。
「ルナ、やったな」
「で、でも、腕が……!」
「こんなの、大したことないよ」
そう言って、レオンは焼けただれた腕を震わせながら上げた。
「君が成功したんだ。それに比べたら、こんな傷なんて……」
「馬鹿……! 馬鹿、馬鹿、馬鹿……!」
ルナはレオンの胸に顔を埋めて、声を上げて泣いた。
嬉しくて。
悔しくて。
そして、何より――この人のことが、どうしようもなく大切に思えて。
「べ、別に……あんたのためにやったわけじゃ、ないんだからね……」
涙声で、いつもの台詞を呟く。
レオンは優しく笑って、ルナの頭を撫でた。
「ああ、分かってる」
その手は、火傷で真っ赤に腫れ上がっていた。
それでも、その温もりは、どんな魔法よりも心地よかった。
◇
炎龍が噴気孔へと突っ込んでいった直後、ミーシャは一瞬の躊躇もなく前に踊り出た。
全身から黄金色の聖なる光が溢れ出し、まるで女神が降臨したかのような神々しさ。
「聖なる封印!」
両手を天に掲げ、全魔力を解放する。黄金の光が巨大な盾となって、炎龍が突っ込んでいった噴気孔を完全に塞いだ。
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