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52. 吊り橋効果
「えぇ……?」
「ダメ! まだ危ないですわ!」
少女たちはぎゅっとレオンの腕を掴んで渋った。
ルナは上目遣いで睨みつけ、ミーシャは困ったような笑みを浮かべている。だが、どちらの瞳にも、レオンを離したくないという強い意志が宿っていた。
ピロン!
その時、脳裏に驚くべきメッセージが浮かんだ。
【スキルメッセージ】
【好感度上昇】
ミーシャ:20→120【ラブ】※要注意
ルナ:15→115【ラブ】※要注意
エリナ:25→85【強い関心】
シエル:30→90【好意】
(……は?)
レオンは固まった。
好感度120や115とは一体どういうことだろうか? 一般にこの手の属性ステータスは100が上限のはずだ。つまりこれは、上限を突破して自分に好意を寄せているということではないだろうか?
それは、つまり――まずくないだろうか?
いや、まずい。非常にまずい。
冷静に考えてみれば、当然のことかもしれなかった。
――【吊り橋効果】。
極限状態で芽生えた感情は、平時のそれとは比べ物にならないほど強烈だ。
落ちこぼれて絶望していた世界に訪れた英雄的覚醒の成功――そんなとんでもない体験をこんな極限状態で浴びたら感情が暴走したっておかしくない。
しかし――その感情を爆発させかけている少女たちと、狭い穴の中で密着しているという状況はきわめてまずい。
気づけばミーシャはその豊満な双丘をぎゅっと押し付けてきているし、ルナに至っては自分の胸に顔をうずめたまま、荒い息をしている。
華やかな女の子の匂いで穴の中は満たされ、フェロモンに誘われるように頭がくらくらしてくる。甘い香り、柔らかい感触、そして静かに響く少女たちの吐息――――。
理性という名の城壁が、音を立てて崩れかけていた。
「ほ、ほら、みんな待ってるからね?」
レオンは慌てて身をよじり、何とか逃げ出そうとする。このままでは、自分の理性がどうにかなってしまいそうだった。
「も、もうちょっとぉ……」
「もう少し休まないと山を下りられませんわ……」
二人はガシッとレオンの身体にしがみつき、まったく放そうとしない。その瞳には、薄っすらと涙すら浮かんでいた。
ルナの潤んだ緋色の瞳がレオンを見上げている。いつもの強がりはどこへやら、そこにいるのは、大好きな人に甘えたいだけの、年相応の少女だった。
ミーシャも、聖女の仮面をかなぐり捨てていた。空色の瞳には、孤児院で誰にも見せられなかった本当の感情が、剥き出しになっている。
「いや、ちょっと……。こんなぴったりくっついておく必要ないよね?」
レオンは必死に説得しようとする。
このままだと、自分もフェロモンに負けて何をしでかすのか分からなくなっていたのだ。十八歳の男に、これ以上の理性を求めるのは酷というものだった。
「くっついたっていいじゃない! レオンが私を守ってくれたんだから!」
ルナが叫ぶ。その声には、必死さが滲んでいた。
暴走した時、誰もが逃げていく中で、レオンだけが逃げなかった。火傷を負いながら、それでも自分を抱きしめ続けてくれた。
あの温もりを、あの安心感を、もう一度味わいたい。
その想いが、ルナの理性を吹き飛ばしていた。
「なんでそんな逃げようとするのよ! 私は傷つけちゃったあなたを癒さなきゃいけないの!!」
ミーシャも負けじと主張する。
レオンを殴ってしまった罪悪感が、彼女の心を苛んでいた。それだけではない。殴られても、怒られても、それでも自分を見捨てなかったレオンへの感謝と愛情が、溢れ出して止まらない。
今まで誰にも見せられなかった本当の自分を、彼だけが受け入れてくれた。
その事実が、ミーシャの心を完全に虜にしていた。
二人はもう言葉が通じなくなっていた。その瞳には、不安と、拒絶への恐怖と、そして抑えがたい想いが渦巻いている。
(これは……本当にまずい)
レオンの額に冷や汗が流れる。
だが、こんなに必死に求めてくる少女たちを、無下に突き放すこともできなかった。
二人とも、今日、途轍もない重圧と戦ってきたのだ。トラウマと向き合い、失敗の恐怖を乗り越え、命懸けで戦い抜いた。その疲労と緊張が、今、一気に解放されようとしている。
くっついているだけなら害もないだろう。
むしろ、ここで突き放す方が、彼女たちの心を傷つけてしまう。
「分かった、分かった、じゃあ少し上の方へ移動して、外の空気を入れよう」
レオンは根負けし、少し上の方へとポジションを移した。穴が広くなったところで、観念したように二人に両手を広げる。
「おいで」
その言葉を聞いた瞬間、二人の顔がぱっと輝いた。
「ふふっ!」
ルナが嬉しそうに笑って飛び込んでくる。いつものツンデレはどこへやら、満面の笑みで、レオンの胸に顔を埋めた。
「たっぷり癒しますわ……♡」
ミーシャも、甘い声でささやきながらレオンの腕の中に入り込み、ぴったりと身体を押し付けながら火傷の跡が残るレオンの腕に、そっと治癒魔法をかけ始めた。
「ダメ! まだ危ないですわ!」
少女たちはぎゅっとレオンの腕を掴んで渋った。
ルナは上目遣いで睨みつけ、ミーシャは困ったような笑みを浮かべている。だが、どちらの瞳にも、レオンを離したくないという強い意志が宿っていた。
ピロン!
その時、脳裏に驚くべきメッセージが浮かんだ。
【スキルメッセージ】
【好感度上昇】
ミーシャ:20→120【ラブ】※要注意
ルナ:15→115【ラブ】※要注意
エリナ:25→85【強い関心】
シエル:30→90【好意】
(……は?)
レオンは固まった。
好感度120や115とは一体どういうことだろうか? 一般にこの手の属性ステータスは100が上限のはずだ。つまりこれは、上限を突破して自分に好意を寄せているということではないだろうか?
それは、つまり――まずくないだろうか?
いや、まずい。非常にまずい。
冷静に考えてみれば、当然のことかもしれなかった。
――【吊り橋効果】。
極限状態で芽生えた感情は、平時のそれとは比べ物にならないほど強烈だ。
落ちこぼれて絶望していた世界に訪れた英雄的覚醒の成功――そんなとんでもない体験をこんな極限状態で浴びたら感情が暴走したっておかしくない。
しかし――その感情を爆発させかけている少女たちと、狭い穴の中で密着しているという状況はきわめてまずい。
気づけばミーシャはその豊満な双丘をぎゅっと押し付けてきているし、ルナに至っては自分の胸に顔をうずめたまま、荒い息をしている。
華やかな女の子の匂いで穴の中は満たされ、フェロモンに誘われるように頭がくらくらしてくる。甘い香り、柔らかい感触、そして静かに響く少女たちの吐息――――。
理性という名の城壁が、音を立てて崩れかけていた。
「ほ、ほら、みんな待ってるからね?」
レオンは慌てて身をよじり、何とか逃げ出そうとする。このままでは、自分の理性がどうにかなってしまいそうだった。
「も、もうちょっとぉ……」
「もう少し休まないと山を下りられませんわ……」
二人はガシッとレオンの身体にしがみつき、まったく放そうとしない。その瞳には、薄っすらと涙すら浮かんでいた。
ルナの潤んだ緋色の瞳がレオンを見上げている。いつもの強がりはどこへやら、そこにいるのは、大好きな人に甘えたいだけの、年相応の少女だった。
ミーシャも、聖女の仮面をかなぐり捨てていた。空色の瞳には、孤児院で誰にも見せられなかった本当の感情が、剥き出しになっている。
「いや、ちょっと……。こんなぴったりくっついておく必要ないよね?」
レオンは必死に説得しようとする。
このままだと、自分もフェロモンに負けて何をしでかすのか分からなくなっていたのだ。十八歳の男に、これ以上の理性を求めるのは酷というものだった。
「くっついたっていいじゃない! レオンが私を守ってくれたんだから!」
ルナが叫ぶ。その声には、必死さが滲んでいた。
暴走した時、誰もが逃げていく中で、レオンだけが逃げなかった。火傷を負いながら、それでも自分を抱きしめ続けてくれた。
あの温もりを、あの安心感を、もう一度味わいたい。
その想いが、ルナの理性を吹き飛ばしていた。
「なんでそんな逃げようとするのよ! 私は傷つけちゃったあなたを癒さなきゃいけないの!!」
ミーシャも負けじと主張する。
レオンを殴ってしまった罪悪感が、彼女の心を苛んでいた。それだけではない。殴られても、怒られても、それでも自分を見捨てなかったレオンへの感謝と愛情が、溢れ出して止まらない。
今まで誰にも見せられなかった本当の自分を、彼だけが受け入れてくれた。
その事実が、ミーシャの心を完全に虜にしていた。
二人はもう言葉が通じなくなっていた。その瞳には、不安と、拒絶への恐怖と、そして抑えがたい想いが渦巻いている。
(これは……本当にまずい)
レオンの額に冷や汗が流れる。
だが、こんなに必死に求めてくる少女たちを、無下に突き放すこともできなかった。
二人とも、今日、途轍もない重圧と戦ってきたのだ。トラウマと向き合い、失敗の恐怖を乗り越え、命懸けで戦い抜いた。その疲労と緊張が、今、一気に解放されようとしている。
くっついているだけなら害もないだろう。
むしろ、ここで突き放す方が、彼女たちの心を傷つけてしまう。
「分かった、分かった、じゃあ少し上の方へ移動して、外の空気を入れよう」
レオンは根負けし、少し上の方へとポジションを移した。穴が広くなったところで、観念したように二人に両手を広げる。
「おいで」
その言葉を聞いた瞬間、二人の顔がぱっと輝いた。
「ふふっ!」
ルナが嬉しそうに笑って飛び込んでくる。いつものツンデレはどこへやら、満面の笑みで、レオンの胸に顔を埋めた。
「たっぷり癒しますわ……♡」
ミーシャも、甘い声でささやきながらレオンの腕の中に入り込み、ぴったりと身体を押し付けながら火傷の跡が残るレオンの腕に、そっと治癒魔法をかけ始めた。
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