59 / 123
59. 沈まなかった『沈没船』
しおりを挟む
レオンは、そんな少女たちの姿を見つめながら、静かに涙を流した。
たった数日前、全てを失った。
仲間に裏切られ、恋人に捨てられ、家族に見放され、奴隷寸前にまで追い込まれたあの日――ギルドの冷たい床に転がって、自分の人生は終わったと思った。
だが今、新しい仲間と共に、英雄として凱旋している。
運命は、確かに変えられたのだ。
もちろんそれは【運命鑑定】のおかげではある。だが、それだけではない。
この少女たちが自分の限界を超え、未来をつかみ取ってくれたから。
一人では、何も成し遂げられなかった。でも、五人なら。このアルカナなら、運命すら覆すことができる。
レオンは涙を拭い、窓の外の群衆に手を振った。
今、素敵な仲間とともに大勢の人に祝福され、明るい未来への確かな手ごたえを感じていた。
◇
馬車が冒険者ギルドの前に到着すると、そこには更なる群衆が待ち構えていた。
ギルドの前の広場は、人で埋め尽くされている。身動きが取れないほどの人々が、馬車の到着を今か今かと待っていたのだ。
ギルドマスターが、涙を流しながらアルカナを迎える。あの厳格な顔が、今は感動で歪んでいた。
「よくぞ……よくぞ帰ってきてくれた!」
その声は震えていた。十万の命を守ってくれた若者たちへの、心からの感謝が滲んでいる。
その横には、かつて『アルカナ』を嘲笑っていた冒険者たちが、頭を下げて立っていた。
「すまなかった!」
「俺たちが間違っていた!」
「あんたらこそ、本物の英雄だ!」
彼らの顔には、羞恥と後悔、そして純粋な尊敬が浮かんでいた。落ちこぼれだと馬鹿にしていた者たちが、自分たちには到底できないことをやってのけた。その事実を、彼らは素直に認めていた。
五人は馬車から降り立つ。
うぉぉぉぉ!
その瞬間、歓声が上がり、街中から割れんばかりの拍手が沸き起こった。
地鳴りのような歓声。雷鳴のような拍手。空気そのものが震えているかのような、圧倒的な熱狂。
レオンたちはその迫力に一瞬気おされ、お互い顔を見合わせる。
たった数日前、この同じ場所で馬鹿にされていたのだ。「落ちこぼれパーティ」と嘲笑われ、「自殺行為だ」と罵られていた。
それが今、英雄として讃えられている。
その変化があまりにも劇的で、現実感が湧かない。
しかし、クスッと笑いあうと、みんなにっこりと笑いながら群衆に向かって大きく手を振った。
うぉぉぉぉぉ! わぁぁぁぁ!
花吹雪が舞い、魔法の光が空を彩り、ひときわ大きな歓声が天まで届く。
レオンは、隣に立つ四人の少女たちを見つめた。
シエルが涙を流しながら手を振っている。ミーシャが聖女の微笑みではない、本物の笑顔を浮かべている。ルナが照れくさそうに頬を染めながら、それでも嬉しそうに群衆に応えている。エリナが、クールな表情の奥で、確かに微笑んでいる。
この少女たちと出会えて、本当に良かった。
心の底から、そう思った。
だが、これは終わりではない。
始まりなのだ。
これから先、どんな運命が待ち受けているのかは分からない。新たな敵が現れるかもしれない。より困難な試練が待っているかもしれない。
それでも、この仲間となら乗り越えられる。
レオンはそう確信しながら、青く澄み渡った空を見上げた。
花びらが舞い、歓声が響き、そして未来への希望が、胸の奥で静かに燃えていた。
◇
だが、この凱旋を忌々しそうに睨む者たちがいた。
レオンを追放した『太陽の剣』のリーダー、カインとセリナである。
二人は少し離れたカフェの二階のテラスから、花吹雪の舞う凱旋パレードを見つめていた。歓声と拍手に包まれた通りは、まるで祭りのような熱狂に満ちている。
だが、カインの目には、その光景が地獄絵図のように映っていた。
「ケッ! たまたま火山が噴火しただけで英雄気取りかよ!」
吐き捨てるように言う。だが、その声は震えていた。
「ラッキーだけの新人の小娘たち……。あームカつく!」
セリナも眉を吊り上げて毒づく。栗色の髪が、苛立ちで揺れた。
カインたちはスタンピードの報を受けた時、なんと、我先にクーベルノーツを逃げ出していた。
Aランクパーティのリーダーとして、街を守るべき立場にありながら、真っ先に逃げ出したのだ。三万の魔物が迫っていると聞いた瞬間、カインの頭に浮かんだのは「沈没船からは逃げねば」という計算だけだった。
英雄として散るなんて馬鹿のやること。命あっての物種だと、カインたちは街を後にした。
だが昨日、いきなり魔物全滅の報を受けて、慌てて戻ってきたのだ。
まさか、と思った。
三万の魔物が、たった一夜で全滅するなど、あり得るはずがない。何かの間違いだ。誤報だ。そう信じたかった。
しかし――それがレオンたちのパーティの成果だと聞いた瞬間、カインとセリナに戦慄が走った。
「あの無能にこんなことできるわけがない」
カインは唸るように言った。
たった数日前、全てを失った。
仲間に裏切られ、恋人に捨てられ、家族に見放され、奴隷寸前にまで追い込まれたあの日――ギルドの冷たい床に転がって、自分の人生は終わったと思った。
だが今、新しい仲間と共に、英雄として凱旋している。
運命は、確かに変えられたのだ。
もちろんそれは【運命鑑定】のおかげではある。だが、それだけではない。
この少女たちが自分の限界を超え、未来をつかみ取ってくれたから。
一人では、何も成し遂げられなかった。でも、五人なら。このアルカナなら、運命すら覆すことができる。
レオンは涙を拭い、窓の外の群衆に手を振った。
今、素敵な仲間とともに大勢の人に祝福され、明るい未来への確かな手ごたえを感じていた。
◇
馬車が冒険者ギルドの前に到着すると、そこには更なる群衆が待ち構えていた。
ギルドの前の広場は、人で埋め尽くされている。身動きが取れないほどの人々が、馬車の到着を今か今かと待っていたのだ。
ギルドマスターが、涙を流しながらアルカナを迎える。あの厳格な顔が、今は感動で歪んでいた。
「よくぞ……よくぞ帰ってきてくれた!」
その声は震えていた。十万の命を守ってくれた若者たちへの、心からの感謝が滲んでいる。
その横には、かつて『アルカナ』を嘲笑っていた冒険者たちが、頭を下げて立っていた。
「すまなかった!」
「俺たちが間違っていた!」
「あんたらこそ、本物の英雄だ!」
彼らの顔には、羞恥と後悔、そして純粋な尊敬が浮かんでいた。落ちこぼれだと馬鹿にしていた者たちが、自分たちには到底できないことをやってのけた。その事実を、彼らは素直に認めていた。
五人は馬車から降り立つ。
うぉぉぉぉ!
その瞬間、歓声が上がり、街中から割れんばかりの拍手が沸き起こった。
地鳴りのような歓声。雷鳴のような拍手。空気そのものが震えているかのような、圧倒的な熱狂。
レオンたちはその迫力に一瞬気おされ、お互い顔を見合わせる。
たった数日前、この同じ場所で馬鹿にされていたのだ。「落ちこぼれパーティ」と嘲笑われ、「自殺行為だ」と罵られていた。
それが今、英雄として讃えられている。
その変化があまりにも劇的で、現実感が湧かない。
しかし、クスッと笑いあうと、みんなにっこりと笑いながら群衆に向かって大きく手を振った。
うぉぉぉぉぉ! わぁぁぁぁ!
花吹雪が舞い、魔法の光が空を彩り、ひときわ大きな歓声が天まで届く。
レオンは、隣に立つ四人の少女たちを見つめた。
シエルが涙を流しながら手を振っている。ミーシャが聖女の微笑みではない、本物の笑顔を浮かべている。ルナが照れくさそうに頬を染めながら、それでも嬉しそうに群衆に応えている。エリナが、クールな表情の奥で、確かに微笑んでいる。
この少女たちと出会えて、本当に良かった。
心の底から、そう思った。
だが、これは終わりではない。
始まりなのだ。
これから先、どんな運命が待ち受けているのかは分からない。新たな敵が現れるかもしれない。より困難な試練が待っているかもしれない。
それでも、この仲間となら乗り越えられる。
レオンはそう確信しながら、青く澄み渡った空を見上げた。
花びらが舞い、歓声が響き、そして未来への希望が、胸の奥で静かに燃えていた。
◇
だが、この凱旋を忌々しそうに睨む者たちがいた。
レオンを追放した『太陽の剣』のリーダー、カインとセリナである。
二人は少し離れたカフェの二階のテラスから、花吹雪の舞う凱旋パレードを見つめていた。歓声と拍手に包まれた通りは、まるで祭りのような熱狂に満ちている。
だが、カインの目には、その光景が地獄絵図のように映っていた。
「ケッ! たまたま火山が噴火しただけで英雄気取りかよ!」
吐き捨てるように言う。だが、その声は震えていた。
「ラッキーだけの新人の小娘たち……。あームカつく!」
セリナも眉を吊り上げて毒づく。栗色の髪が、苛立ちで揺れた。
カインたちはスタンピードの報を受けた時、なんと、我先にクーベルノーツを逃げ出していた。
Aランクパーティのリーダーとして、街を守るべき立場にありながら、真っ先に逃げ出したのだ。三万の魔物が迫っていると聞いた瞬間、カインの頭に浮かんだのは「沈没船からは逃げねば」という計算だけだった。
英雄として散るなんて馬鹿のやること。命あっての物種だと、カインたちは街を後にした。
だが昨日、いきなり魔物全滅の報を受けて、慌てて戻ってきたのだ。
まさか、と思った。
三万の魔物が、たった一夜で全滅するなど、あり得るはずがない。何かの間違いだ。誤報だ。そう信じたかった。
しかし――それがレオンたちのパーティの成果だと聞いた瞬間、カインとセリナに戦慄が走った。
「あの無能にこんなことできるわけがない」
カインは唸るように言った。
64
あなたにおすすめの小説
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる