65 / 123
65. お前もかぁぁぁぁ!
しおりを挟む
「へ……?」
レオンが固まった。思考が停止する。
「き、貴族には側室は普通に居るわ……」
シエルが顔を赤くしながら踏み込む。その声は、小さく震えていた。
「そう、私が正妻で、側室ワン、ツー、スリーでもいいのよ? ふふっ」
ミーシャが楽しそうにみんなを指さす。その笑顔は、まるで女王のようだった。
「なんであんたが正妻なのよ!?」
ルナが怒った。その緋色の瞳が、炎のように燃えている。
「まぁ、あくまで一例だわ」
ミーシャは優雅に微笑む。その余裕ある態度が、かえってルナの怒りを煽った。
「ぶーーっ!」
「はいはい、落ち着いて。どうなるかなんて未来のことは分からない。ただ……僕が好きなのは『仲良くできる優しい子』、これだけは言っておくよ」
「あら、私だわ!」
ミーシャがおどけた調子で言った。
「はぁっ!? あんた面白いわ! ははっ」
ルナが天を仰いで笑った。
そのやり取りがおかしくて、みんなつられて笑ってしまう。
重かった空気が、一気に軽くなる。笑い声が部屋に響き渡った。温かい空気が、テーブルを包む。
これでいい、とレオンは思った。
争うのではなく、笑い合える関係。それこそが、アルカナの在るべき姿だ。
「じゃあ、『レオン争奪優しい子選手権』ってこと? いいじゃない、楽しくやろ」
シエルは楽しそうに碧眼を輝かせた。
「そうよ? 楽しくね? レオンにキスとか……絶対ダメよ?」
エリナはギラリと瞳を光らせる。その黒曜石のような瞳には、明確な警告が込められていた。
「分かったわ」
「はぁい……」
「しょうがないわねぇ……」
三人の少女は渋々承諾する。
「ふぅ、良かった。エリナのおかげだよ。ありがとう」
レオンは優しい瞳で笑いかけた。
その笑顔を見た瞬間、エリナの心臓が跳ねた。
「え?」
男と距離を取り続けてきたエリナには、男女の距離感の機微が分からない。
この時エリナの中で、ある仮説が頭をもたげた。
こんなに可愛い女の子たち三人から言い寄られても、毅然とNOと言い放つレオン。
もしかして他に好きな人が居るのではないだろうか?
『アルカナのメンバーの誰か』で、三人以外と言えば……私?!
その瞬間エリナの中で勘違いが暴走した。
えっ!? うそ……。
その暴走した妄想に、エリナの心臓は早鐘のように高鳴った。
レオンは自分のことを好きだから三人をけん制している?
だから、自分に「ありがとう」と言ってくれる?
だから、自分を特別扱いしてくれる?
エリナの中で妄想がどんどん膨らんでいく。
いや、まさか、そんな……。
でも、もしかしたら……。
エリナはそっとレオンを見た。
レオンはにっこりと自分を見てほほ笑んでいる。
そののびやかな笑顔、美しい翠色の瞳。今まで気づかなかったが、レオンは整った顔立ちをしていた。優しげな眉、すっと通った鼻筋、柔らかな唇――。
(そうかも!?)
この瞬間、エリナの瞳にポゥっと桃色の輝きがともった。
◇
崩壊の危機が何とか回避できた――。
やれやれ、これで一段落だ。エリナがまともで良かった。
レオンは深くため息をつく。
その時だった――――。
ピロン!
【スキルメッセージ】
【好感度状況】
エリナ:70→110【ラブ】※注意
「……へ?」
レオンは固まった。
目の前のメッセージを、二度見する。
見間違いではない。
エリナの好感度が、一気に四十も上昇して、【ラブ】になっている。
(エリナ……お前もかぁぁぁぁ!)
思わずレオンは頭を抱えた。
いったいどこで地雷を踏んでしまったのだろうか?
普通に話しただけだ。感謝しただけだ。なのに、なぜ――。
レオンはキュッと口を結んだ。
「ふふふ……レオンの独り占めなんて……私が絶対許さないんだから……」
エリナは嬉しそうにレオンの腕をガシッとつかむ。
そのほほは紅潮し、心なしか息も荒かった。その黒曜石のような瞳には、今までにない熱が宿っている。
これは、さっきまでのクールな剣士ではない。
完全に、恋する乙女の目だ。
レオンは絶望した。
運命は――また、新たな試練をレオンに課したのだ。
四人。
四人全員が、自分に恋している。
世界一を目指すよりも、この少女たちの暴走を止める方が、よほど困難かもしれない――そんな予感が、彼の胸をよぎった。
だが――少女たちはみんなとても幸せそうな笑顔なのだ。
幸せなら……いいのかなぁ……。
それはレオンにとって唯一の救いだった。
こうして、英雄たちの夜は更けていく。
笑い声と、甘い空気と、そして――レオンの深いため息と共に。
伝説の始まりは、思いがけない方向へと転がり始めていた。
レオンが固まった。思考が停止する。
「き、貴族には側室は普通に居るわ……」
シエルが顔を赤くしながら踏み込む。その声は、小さく震えていた。
「そう、私が正妻で、側室ワン、ツー、スリーでもいいのよ? ふふっ」
ミーシャが楽しそうにみんなを指さす。その笑顔は、まるで女王のようだった。
「なんであんたが正妻なのよ!?」
ルナが怒った。その緋色の瞳が、炎のように燃えている。
「まぁ、あくまで一例だわ」
ミーシャは優雅に微笑む。その余裕ある態度が、かえってルナの怒りを煽った。
「ぶーーっ!」
「はいはい、落ち着いて。どうなるかなんて未来のことは分からない。ただ……僕が好きなのは『仲良くできる優しい子』、これだけは言っておくよ」
「あら、私だわ!」
ミーシャがおどけた調子で言った。
「はぁっ!? あんた面白いわ! ははっ」
ルナが天を仰いで笑った。
そのやり取りがおかしくて、みんなつられて笑ってしまう。
重かった空気が、一気に軽くなる。笑い声が部屋に響き渡った。温かい空気が、テーブルを包む。
これでいい、とレオンは思った。
争うのではなく、笑い合える関係。それこそが、アルカナの在るべき姿だ。
「じゃあ、『レオン争奪優しい子選手権』ってこと? いいじゃない、楽しくやろ」
シエルは楽しそうに碧眼を輝かせた。
「そうよ? 楽しくね? レオンにキスとか……絶対ダメよ?」
エリナはギラリと瞳を光らせる。その黒曜石のような瞳には、明確な警告が込められていた。
「分かったわ」
「はぁい……」
「しょうがないわねぇ……」
三人の少女は渋々承諾する。
「ふぅ、良かった。エリナのおかげだよ。ありがとう」
レオンは優しい瞳で笑いかけた。
その笑顔を見た瞬間、エリナの心臓が跳ねた。
「え?」
男と距離を取り続けてきたエリナには、男女の距離感の機微が分からない。
この時エリナの中で、ある仮説が頭をもたげた。
こんなに可愛い女の子たち三人から言い寄られても、毅然とNOと言い放つレオン。
もしかして他に好きな人が居るのではないだろうか?
『アルカナのメンバーの誰か』で、三人以外と言えば……私?!
その瞬間エリナの中で勘違いが暴走した。
えっ!? うそ……。
その暴走した妄想に、エリナの心臓は早鐘のように高鳴った。
レオンは自分のことを好きだから三人をけん制している?
だから、自分に「ありがとう」と言ってくれる?
だから、自分を特別扱いしてくれる?
エリナの中で妄想がどんどん膨らんでいく。
いや、まさか、そんな……。
でも、もしかしたら……。
エリナはそっとレオンを見た。
レオンはにっこりと自分を見てほほ笑んでいる。
そののびやかな笑顔、美しい翠色の瞳。今まで気づかなかったが、レオンは整った顔立ちをしていた。優しげな眉、すっと通った鼻筋、柔らかな唇――。
(そうかも!?)
この瞬間、エリナの瞳にポゥっと桃色の輝きがともった。
◇
崩壊の危機が何とか回避できた――。
やれやれ、これで一段落だ。エリナがまともで良かった。
レオンは深くため息をつく。
その時だった――――。
ピロン!
【スキルメッセージ】
【好感度状況】
エリナ:70→110【ラブ】※注意
「……へ?」
レオンは固まった。
目の前のメッセージを、二度見する。
見間違いではない。
エリナの好感度が、一気に四十も上昇して、【ラブ】になっている。
(エリナ……お前もかぁぁぁぁ!)
思わずレオンは頭を抱えた。
いったいどこで地雷を踏んでしまったのだろうか?
普通に話しただけだ。感謝しただけだ。なのに、なぜ――。
レオンはキュッと口を結んだ。
「ふふふ……レオンの独り占めなんて……私が絶対許さないんだから……」
エリナは嬉しそうにレオンの腕をガシッとつかむ。
そのほほは紅潮し、心なしか息も荒かった。その黒曜石のような瞳には、今までにない熱が宿っている。
これは、さっきまでのクールな剣士ではない。
完全に、恋する乙女の目だ。
レオンは絶望した。
運命は――また、新たな試練をレオンに課したのだ。
四人。
四人全員が、自分に恋している。
世界一を目指すよりも、この少女たちの暴走を止める方が、よほど困難かもしれない――そんな予感が、彼の胸をよぎった。
だが――少女たちはみんなとても幸せそうな笑顔なのだ。
幸せなら……いいのかなぁ……。
それはレオンにとって唯一の救いだった。
こうして、英雄たちの夜は更けていく。
笑い声と、甘い空気と、そして――レオンの深いため息と共に。
伝説の始まりは、思いがけない方向へと転がり始めていた。
49
あなたにおすすめの小説
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる