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66. 迫る悪意
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翌日、思いがけない知らせがレオンのもとに届いた。
国王陛下への謁見。
クーベルノーツの街を救った英雄として、王都への召喚状が届いたのだ。
しかし、その召喚状にはレオンの名前しかなかった。アルカナ全員ではなく、レオン一人だけが呼ばれているのだ。
(きな臭いな……)
レオンは眉をひそめた。
普通、パーティ全員で成し遂げた偉業なら、全員が召喚されるはずだ。それなのに、自分だけというのは、何か裏があるに違いない。
だが、考えようによっては都合が良かった。
シエルを王宮に連れていくわけにはいかない。彼女は逃亡している三大公爵家の令嬢だ。王宮に行けばさすがにつかまってしまうだろう。
そして何より、女の子たちには疲労が残っている。
命懸けの戦いを終えたばかりなのだ。丁度いい機会だから、ゆっくりと休んでもらおう。
「一人で行ってくるよ」
レオンがそう告げると、複雑な表情を浮かべるシエル以外は一斉に不満の声を上げた。
「えー、私も行きたい!」
「危ないですわ!」
「一人なんて心配よ……」
「大丈夫、【運命鑑定】があるからさ。何かあっても逃げられるよ」
レオンは笑顔で手を振り、馬車に乗り込んだ。
四人の少女たちが手を振る姿が、徐々に小さくなっていく。その姿を窓から見つめながら、レオンは小さくため息をついた。
(さて、何が待っているのやら……)
◇
馬車で二日の行程である。途中、宿場町に一泊する。
小さいながらも活気のある町で、旅人たちが行き交っている。レオンは安宿に部屋を取り、夕食を済ませて床についた。
だが、深夜――。
ピロン!
突然、【運命鑑定】が起動した。
【警告】
【襲撃者接近中】
【推奨行動:馬小屋の麦藁に身を隠せ】
レオンは飛び起きた。
心臓が激しく鳴っている。窓の外を見ると、複数の人影が宿に近づいてくるのが見えた。月明かりに照らされた彼らの手には、短剣が握られている。
(傭兵か……!?)
それぞれバラバラで粗野な風体。どこかの組織のチームという感じではなかった。
レオンは事前に想定していた通り、音を立てないように窓から抜け出すと裏口から馬小屋へと向かい、麦藁の山の中に潜り込む。
心臓が激しく鳴っている。息を殺し、暗闇の中で様子をうかがった。
「まだ遠くへは行ってないはずだ! 探せ!!」
だみ声の男の声が響いた。
複数の足音が、タッタッタと馬小屋の近くを通り過ぎていく。
レオンは麦藁の中で身を縮め、祈るような気持ちで息を潜めた。
【運命鑑定】によると、この場所にいる限りは安全らしい。だが、それでも恐怖は消えない。一人きりで、助けを呼ぶこともできない。仲間たちの温もりが、今ほど恋しく思えたことはなかった。
(拉致か、それとも……殺害か)
目的は分からない。だが、レオンの力を快く思わない勢力がいるということだけは確かだった。
クーベルノーツでは英雄として讃えられた。だが、それを妬む者、恐れる者、利用しようとする者もいるのだろう。
(これからは安全について、もっと真剣に考えないとな……)
レオンは深いため息を漏らした。
麦藁の匂いが鼻をくすぐる。馬たちの静かな息遣いが聞こえる。
やがて、馬車での疲れが出たのか、緊張の糸が切れたのか、レオンはうとうとと眠りに落ちていった。
◇
翌朝、未明のうちから宿場町を出て、なんとか王都へとたどり着く。
そこは、レオンの想像を遥かに超えた世界だった。
巨大な城壁が、街全体を取り囲んでいる。その高さは、クーベルノーツの城壁の倍以上はあるだろう。白い石造りの壁が、朝日を受けて輝いている。
人口三十万人。
クーベルノーツとは二回り以上も大きな街である。
城門をくぐると、その活気に圧倒された。
石畳の大通りには、馬車や荷車がひっきりなしに行き交っている。両側には豪華な店が立ち並び、色とりどりの看板が風に揺れていた。行き交う人々の服装も、クーベルノーツとは比べ物にならないほど華やかだ。
レオンは馬車の窓からキョロキョロと辺りを見回しながら、思いを巡らせた。
(ここがシエルとルナの暮らしていた街か……)
シエルは公爵令嬢として、きっと豪奢な屋敷で暮らしていたのだろう。召使いに囲まれ、何不自由ない生活を送っていたはずだ。
だが、その中で彼女は戦略結婚の「商品」として扱われていた。この華やかな街並みの裏で、彼女は絶望に震えていたのだ。
ルナも、名門魔法学院に通っていた。この街のどこかに、彼女が青春を過ごした学び舎があるのだろう。
だが、その学院で彼女は魔力暴走を起こし、親友を傷つけ、居場所を失った。
華やかな街の裏に、どれだけの悲しみが隠されているのだろう。
レオンはそんな彼女たちの複雑な胸の内を思い――深いため息をついた。
国王陛下への謁見。
クーベルノーツの街を救った英雄として、王都への召喚状が届いたのだ。
しかし、その召喚状にはレオンの名前しかなかった。アルカナ全員ではなく、レオン一人だけが呼ばれているのだ。
(きな臭いな……)
レオンは眉をひそめた。
普通、パーティ全員で成し遂げた偉業なら、全員が召喚されるはずだ。それなのに、自分だけというのは、何か裏があるに違いない。
だが、考えようによっては都合が良かった。
シエルを王宮に連れていくわけにはいかない。彼女は逃亡している三大公爵家の令嬢だ。王宮に行けばさすがにつかまってしまうだろう。
そして何より、女の子たちには疲労が残っている。
命懸けの戦いを終えたばかりなのだ。丁度いい機会だから、ゆっくりと休んでもらおう。
「一人で行ってくるよ」
レオンがそう告げると、複雑な表情を浮かべるシエル以外は一斉に不満の声を上げた。
「えー、私も行きたい!」
「危ないですわ!」
「一人なんて心配よ……」
「大丈夫、【運命鑑定】があるからさ。何かあっても逃げられるよ」
レオンは笑顔で手を振り、馬車に乗り込んだ。
四人の少女たちが手を振る姿が、徐々に小さくなっていく。その姿を窓から見つめながら、レオンは小さくため息をついた。
(さて、何が待っているのやら……)
◇
馬車で二日の行程である。途中、宿場町に一泊する。
小さいながらも活気のある町で、旅人たちが行き交っている。レオンは安宿に部屋を取り、夕食を済ませて床についた。
だが、深夜――。
ピロン!
突然、【運命鑑定】が起動した。
【警告】
【襲撃者接近中】
【推奨行動:馬小屋の麦藁に身を隠せ】
レオンは飛び起きた。
心臓が激しく鳴っている。窓の外を見ると、複数の人影が宿に近づいてくるのが見えた。月明かりに照らされた彼らの手には、短剣が握られている。
(傭兵か……!?)
それぞれバラバラで粗野な風体。どこかの組織のチームという感じではなかった。
レオンは事前に想定していた通り、音を立てないように窓から抜け出すと裏口から馬小屋へと向かい、麦藁の山の中に潜り込む。
心臓が激しく鳴っている。息を殺し、暗闇の中で様子をうかがった。
「まだ遠くへは行ってないはずだ! 探せ!!」
だみ声の男の声が響いた。
複数の足音が、タッタッタと馬小屋の近くを通り過ぎていく。
レオンは麦藁の中で身を縮め、祈るような気持ちで息を潜めた。
【運命鑑定】によると、この場所にいる限りは安全らしい。だが、それでも恐怖は消えない。一人きりで、助けを呼ぶこともできない。仲間たちの温もりが、今ほど恋しく思えたことはなかった。
(拉致か、それとも……殺害か)
目的は分からない。だが、レオンの力を快く思わない勢力がいるということだけは確かだった。
クーベルノーツでは英雄として讃えられた。だが、それを妬む者、恐れる者、利用しようとする者もいるのだろう。
(これからは安全について、もっと真剣に考えないとな……)
レオンは深いため息を漏らした。
麦藁の匂いが鼻をくすぐる。馬たちの静かな息遣いが聞こえる。
やがて、馬車での疲れが出たのか、緊張の糸が切れたのか、レオンはうとうとと眠りに落ちていった。
◇
翌朝、未明のうちから宿場町を出て、なんとか王都へとたどり着く。
そこは、レオンの想像を遥かに超えた世界だった。
巨大な城壁が、街全体を取り囲んでいる。その高さは、クーベルノーツの城壁の倍以上はあるだろう。白い石造りの壁が、朝日を受けて輝いている。
人口三十万人。
クーベルノーツとは二回り以上も大きな街である。
城門をくぐると、その活気に圧倒された。
石畳の大通りには、馬車や荷車がひっきりなしに行き交っている。両側には豪華な店が立ち並び、色とりどりの看板が風に揺れていた。行き交う人々の服装も、クーベルノーツとは比べ物にならないほど華やかだ。
レオンは馬車の窓からキョロキョロと辺りを見回しながら、思いを巡らせた。
(ここがシエルとルナの暮らしていた街か……)
シエルは公爵令嬢として、きっと豪奢な屋敷で暮らしていたのだろう。召使いに囲まれ、何不自由ない生活を送っていたはずだ。
だが、その中で彼女は戦略結婚の「商品」として扱われていた。この華やかな街並みの裏で、彼女は絶望に震えていたのだ。
ルナも、名門魔法学院に通っていた。この街のどこかに、彼女が青春を過ごした学び舎があるのだろう。
だが、その学院で彼女は魔力暴走を起こし、親友を傷つけ、居場所を失った。
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レオンはそんな彼女たちの複雑な胸の内を思い――深いため息をついた。
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