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75. 『まだ』って何?
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その横で、セリナもまた蒼白になっていた。
「ま、まさか……嘘でしょ……?」
栗色の髪が汗で額に張り付き、施していた化粧も崩れている。
このままでは『太陽の剣』は終わってしまう。
自分が掴み取った夢の世界が――!
くっ!
セリナは意を決したように懐から手榴弾型の魔道具を取り出す。
「死ねぇぇぇぇっ!」
セリナの金切り声とともに、魔道具は宙を舞った。
それは闇市場で大金を叩いて買った、違法な爆裂魔法の結晶だ。投げつければ、建物だって吹き飛ばせる凶悪な爆弾。
「マズい!」
レオンはその想定外のセリナの行動に慌てた。
放物線を描いてこちらに向かって飛んでくる爆弾。
が、次の瞬間。
黄金色の光が一行を覆い、同時にシュッ!と、風を切る音が――。
シエルの矢が魔道具を射抜く。
完璧な軌道、完璧なタイミング。
薄暗い街灯の照らす中、小さな魔道具を正確に捉えた神弓の腕前。スタンピードで覚醒した彼女の才能は、もはや人間の域を超えていた。
ドガァァァンッ!
空中で大爆発を起こし、赤い炎が夜空を染める。
爆風が地面を揺らし、屋敷の窓が全部吹き飛んだ。
だが、アルカナの面々はミーシャのシールドの下で傷一つついていない。
爆煙の中から姿を現した五人は、まるで伝説の英雄のように凛々しく、カインとセリナの目に映った。
「そんな……そんなバカな……!」
セリナの声が裏返る。
膝が笑い、ガクガクと震えた。涙すら、浮かんでいる。
レオンが、一歩前に出た。
「カイン! これ以上罪を重ねるな!」
その声は、氷のように冷たかった。
かつて仲間として、共に戦場を駆けた男。その男への最後の警告――いや、もはや宣告だった。
「くそ、くそぉぉぉぉっ!」
カインが、雄叫びを上げる。
シャリィィィンと金属音を奏でながら太陽の剣を抜き放ったカインは、理性を失った獣のようにレオンへと襲いかかった。
その剣閃には、もはや技術も戦略もない。
ただ、目の前の男を殺すことだけを考えた、純粋な殺意――――。
憎い。憎い。憎い。
カインの胸中で、黒い感情が渦巻いていた。
なぜお前が、こんな力を手に入れた?
なぜお前が、英雄になった?
なぜお前が、俺より上に立っている?
お前は――戦えもしない、ただの鑑定士だったじゃないか。
俺が拾ってやって、俺が使ってやって、俺のおかげでパーティにいられたんじゃないか。
理不尽だ。
間違っている。
こんなの、絶対におかしい――!
全ての嫉妬と憎悪を込めた一撃が、レオンの首を狙う。
だが。
キィィィィンッ!
甲高い金属音が夜の屋敷に響き渡り、火花が散る。
エリナが赤い剣で、その剣を受け止めていた。
レオンを守るように、その前に立ちはだかる。黒髪が風に揺れ、その凛とした横顔は街灯の柔らかな光を浴びて神々しいほどだった。
「邪魔すんな、小娘ぇぇぇっ!」
カインが歯噛みしながら吠える。剣に力を込め、押し切ろうとするが――エリナは微動だにしない。
「レオンには……指一本、触れさせないわ」
その声は静かだったが、揺るぎない意志に満ちていた。
黒曜石のような瞳が、カインを睨む。
もう二度と、大切な人を失わない。
絶対に。
「なんだ? レオンに抱かれて、いいように使われてんのか? このヘタレ野郎に! 戦えもしねぇ腰抜けに、股開いて雌に堕ちたのか!?」
下劣な侮蔑の言葉を吐き捨てる。
「まだ抱かれてなんて無いわよっ!」
エリナは思わず叫び返すが――――。
瞬間、空気が凍った。
別の意味で。
「『まだ』って何よぉぉぉっ!?」
ルナの金切り声が響く。
「抱かれる気満々じゃないっ! ちょっとエリナ、どういうこと!?」
シエルも碧眼を見開いて叫ぶ。
「あらあら、私が先だからね? ふふっ」
ミーシャだけは余裕の笑みを浮かべているが、その空色の瞳には明確な対抗心が燃えていた。
女の子たちはエリナの本音が漏れた一言に噛みついた。
「う、うるさいわね! 今は戦闘中でしょうが! 黙ってなさい!」
エリナは顔を真っ赤にして一喝すると、剣を弾いて距離を取り、再びカインと対峙した。
だが、その頬は――まだ、僅かに赤い。
「なめやがって……小娘どもがぁっ!」
カインは太陽の剣に気合を込めた。
ゴウッ、と剣身が黄金色の輝きを纏う。それは彼の代名詞とも言える、魔力を込めた必殺の一撃の前兆。
場の空気が、一変した。
恋の鞘当てから、命を賭けた真剣勝負へ。
二人の剣士が、互いを睨み合う。
カインはAランク冒険者として名を馳せた剣の名手。数百の戦場を駆け抜け、無数の魔物を屠ってきた歴戦の勇者だ。
一方のエリナは、わずか数日前に覚醒したばかりの新人。実戦経験も、まだ片手で数えられるほどしかない。
だが――。
その瞳に宿る光は、まるで違った。
「ま、まさか……嘘でしょ……?」
栗色の髪が汗で額に張り付き、施していた化粧も崩れている。
このままでは『太陽の剣』は終わってしまう。
自分が掴み取った夢の世界が――!
くっ!
セリナは意を決したように懐から手榴弾型の魔道具を取り出す。
「死ねぇぇぇぇっ!」
セリナの金切り声とともに、魔道具は宙を舞った。
それは闇市場で大金を叩いて買った、違法な爆裂魔法の結晶だ。投げつければ、建物だって吹き飛ばせる凶悪な爆弾。
「マズい!」
レオンはその想定外のセリナの行動に慌てた。
放物線を描いてこちらに向かって飛んでくる爆弾。
が、次の瞬間。
黄金色の光が一行を覆い、同時にシュッ!と、風を切る音が――。
シエルの矢が魔道具を射抜く。
完璧な軌道、完璧なタイミング。
薄暗い街灯の照らす中、小さな魔道具を正確に捉えた神弓の腕前。スタンピードで覚醒した彼女の才能は、もはや人間の域を超えていた。
ドガァァァンッ!
空中で大爆発を起こし、赤い炎が夜空を染める。
爆風が地面を揺らし、屋敷の窓が全部吹き飛んだ。
だが、アルカナの面々はミーシャのシールドの下で傷一つついていない。
爆煙の中から姿を現した五人は、まるで伝説の英雄のように凛々しく、カインとセリナの目に映った。
「そんな……そんなバカな……!」
セリナの声が裏返る。
膝が笑い、ガクガクと震えた。涙すら、浮かんでいる。
レオンが、一歩前に出た。
「カイン! これ以上罪を重ねるな!」
その声は、氷のように冷たかった。
かつて仲間として、共に戦場を駆けた男。その男への最後の警告――いや、もはや宣告だった。
「くそ、くそぉぉぉぉっ!」
カインが、雄叫びを上げる。
シャリィィィンと金属音を奏でながら太陽の剣を抜き放ったカインは、理性を失った獣のようにレオンへと襲いかかった。
その剣閃には、もはや技術も戦略もない。
ただ、目の前の男を殺すことだけを考えた、純粋な殺意――――。
憎い。憎い。憎い。
カインの胸中で、黒い感情が渦巻いていた。
なぜお前が、こんな力を手に入れた?
なぜお前が、英雄になった?
なぜお前が、俺より上に立っている?
お前は――戦えもしない、ただの鑑定士だったじゃないか。
俺が拾ってやって、俺が使ってやって、俺のおかげでパーティにいられたんじゃないか。
理不尽だ。
間違っている。
こんなの、絶対におかしい――!
全ての嫉妬と憎悪を込めた一撃が、レオンの首を狙う。
だが。
キィィィィンッ!
甲高い金属音が夜の屋敷に響き渡り、火花が散る。
エリナが赤い剣で、その剣を受け止めていた。
レオンを守るように、その前に立ちはだかる。黒髪が風に揺れ、その凛とした横顔は街灯の柔らかな光を浴びて神々しいほどだった。
「邪魔すんな、小娘ぇぇぇっ!」
カインが歯噛みしながら吠える。剣に力を込め、押し切ろうとするが――エリナは微動だにしない。
「レオンには……指一本、触れさせないわ」
その声は静かだったが、揺るぎない意志に満ちていた。
黒曜石のような瞳が、カインを睨む。
もう二度と、大切な人を失わない。
絶対に。
「なんだ? レオンに抱かれて、いいように使われてんのか? このヘタレ野郎に! 戦えもしねぇ腰抜けに、股開いて雌に堕ちたのか!?」
下劣な侮蔑の言葉を吐き捨てる。
「まだ抱かれてなんて無いわよっ!」
エリナは思わず叫び返すが――――。
瞬間、空気が凍った。
別の意味で。
「『まだ』って何よぉぉぉっ!?」
ルナの金切り声が響く。
「抱かれる気満々じゃないっ! ちょっとエリナ、どういうこと!?」
シエルも碧眼を見開いて叫ぶ。
「あらあら、私が先だからね? ふふっ」
ミーシャだけは余裕の笑みを浮かべているが、その空色の瞳には明確な対抗心が燃えていた。
女の子たちはエリナの本音が漏れた一言に噛みついた。
「う、うるさいわね! 今は戦闘中でしょうが! 黙ってなさい!」
エリナは顔を真っ赤にして一喝すると、剣を弾いて距離を取り、再びカインと対峙した。
だが、その頬は――まだ、僅かに赤い。
「なめやがって……小娘どもがぁっ!」
カインは太陽の剣に気合を込めた。
ゴウッ、と剣身が黄金色の輝きを纏う。それは彼の代名詞とも言える、魔力を込めた必殺の一撃の前兆。
場の空気が、一変した。
恋の鞘当てから、命を賭けた真剣勝負へ。
二人の剣士が、互いを睨み合う。
カインはAランク冒険者として名を馳せた剣の名手。数百の戦場を駆け抜け、無数の魔物を屠ってきた歴戦の勇者だ。
一方のエリナは、わずか数日前に覚醒したばかりの新人。実戦経験も、まだ片手で数えられるほどしかない。
だが――。
その瞳に宿る光は、まるで違った。
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