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79. 完全なる崩壊
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重い足取りで、アルカナの屋敷に戻ってきた一行――。
夜の静寂が、屋敷全体を包み込んでいた。
普段なら賑やかな声が響くはずの玄関ホールも、今は墓場のように静まり返っている。魔法ランプの明かりだけが、ちらちらと五人の影を壁に映し出していた。
懸念だったカインとの因縁を断ち切れたものの、勝利の余韻などどこにもなかった。
それどころか、重苦しい空気が五人を包み込み、皆押し黙るばかりである。
スキルを失ったレオンは、何も言わずにヨロヨロと自室へと向かう。
その足取りは、まるで何十キロもの鎖を引きずっているかのように重い。一歩、また一歩と、階段を上る背中がとても小さく見える。
いつもの頼もしさは影を潜め、ただ疲弊しきった少年の姿だけがそこにあった。
少女たちは、見ているだけで胸が締め付けられ、誰も声をかけられない。
「あぁ……」
「レオン……」
少女たちの声が、か細く漏れる。
エリナは唇を強く噛み締め、その黒曜石のような瞳には悔恨の色が浮かんでいた。
自分をかばって――レオンはあの呪いを受けた。
もし、自分がもっと早く反応できていれば。もし、自分がもっと強ければ。あの時、セリナの殺意に気づいていれば――。
後悔が胸を焼き、手が震えていた。
いつも冷静なミーシャも動揺し、不安そうな表情を隠そうともしない。
空色の瞳が揺れ、唇が震えている。
治癒魔法を何度もかけた。あらゆる回復呪文を試した。けれど、レオンの中で砕けたものは、どうしても元に戻せなかった。
――私の力では、救えなかった。
その事実が、ミーシャの心を深く抉る。
ルナは涙を浮かべながら拳を握りしめ、その小さな体を震わせていた。
――レオンがいなければ、私は今も暴走する力に怯えて生きていた。
あんなに優しくて、あんなに強くて、あんなに頼りになる人が。
世界は、なんて残酷なんだろう。
シエルは今にも泣き出しそうな顔で何度も言葉を飲み込む。
「レオン」と呼びかけたい。「大丈夫だよ」と言いたい。でも、声が出ない。
どんな言葉をかければいいのか――何度考えても、わからなかったのだ。
ただ、見送ることしかできなかった――。
バタン。
扉が閉まる音が、重く、冷たく響く。
その音は、まるで世界との断絶を告げるかのように――少女たちの胸に突き刺さった。
◇
レオンはベッドに腰を下ろした。
月明かりすら差し込まない部屋の漆黒の闇。
それはまるで、今のレオンの心を映しているかのようだった。
深呼吸をする。
一度、二度、三度――。
心を落ち着かせようとするが、鼓動は速まるばかり。胸の奥で渦巻く不安が止まらない。
それでも――確かめなければならなかった。
目を閉じ、意識を内側に向ける。そして、スキルにつながる回路を――ゆっくりと開いてみる。
以前なら、ここで意識の奥底に広がる豊かな感覚があった。
まるで無限の可能性が広がる大海原のような、満ち溢れる力の奔流。温かく、力強く、そして優しく――自分を包み込んでくれる存在。それがスキルを司る心の領域だった。
あの夜、絶望の淵で覚醒した【運命鑑定】。
それは神からの贈り物だった。
全てを失った自分に、もう一度立ち上がる力をくれた、奇跡の力だった。
しかし――。
今は何も、ない。
以前のような心の奥に広がる豊かな感覚が、どうしても得られない。
いくら意識を集中させても、いくら深く潜ろうとしても――そこには、何もなかった。
まるで、かつて宝物が眠っていた宝箱を開けたら、空っぽだったような。
あるべきものが、ない。
その喪失感が、レオンの心を蝕んでいく。
【運命鑑定】は元々パッシブスキルで、自分で起動できるようなタイプのスキルではない。常に運命を監視し続け、要所でレオンを導く情報をくれるだけだ。
だが、それでも――機械仕掛けの時計がカチカチと動くような、微かな鼓動のような感覚が、常に胸の奥にあったのだ。
それが、今は――。
虚無。
まるで、心臓が止まってしまったかのような明らかに今までとは違う感覚。
不安が、恐怖が、絶望が――じわじわとレオンを苛んでいく。
「頼む……頼むから……」
レオンは、祈るように呟いた。
両手を組んで、目を固く閉じて。
まるで、神に縋る子供のように。
その時だった――。
ポロン。
聞き覚えのある、スキル発動の電子音。
「……!」
レオンの心臓が、高鳴った。
期待に胸を膨らませ――ハッと目を見開く。
視界に、半透明の文字が浮かび上がる。
ああ――良かった! まだ、動いて――。
【繧ケ繧ュ繝ォ繝。繝?そ繝シ繧ク】
【驕ク謚槭↓繧医▲縺ヲ縲∽】
【ク也阜邱壹′螟牙虚縺励∪縺】
「……は?」
レオンの思考が、止まった。
夜の静寂が、屋敷全体を包み込んでいた。
普段なら賑やかな声が響くはずの玄関ホールも、今は墓場のように静まり返っている。魔法ランプの明かりだけが、ちらちらと五人の影を壁に映し出していた。
懸念だったカインとの因縁を断ち切れたものの、勝利の余韻などどこにもなかった。
それどころか、重苦しい空気が五人を包み込み、皆押し黙るばかりである。
スキルを失ったレオンは、何も言わずにヨロヨロと自室へと向かう。
その足取りは、まるで何十キロもの鎖を引きずっているかのように重い。一歩、また一歩と、階段を上る背中がとても小さく見える。
いつもの頼もしさは影を潜め、ただ疲弊しきった少年の姿だけがそこにあった。
少女たちは、見ているだけで胸が締め付けられ、誰も声をかけられない。
「あぁ……」
「レオン……」
少女たちの声が、か細く漏れる。
エリナは唇を強く噛み締め、その黒曜石のような瞳には悔恨の色が浮かんでいた。
自分をかばって――レオンはあの呪いを受けた。
もし、自分がもっと早く反応できていれば。もし、自分がもっと強ければ。あの時、セリナの殺意に気づいていれば――。
後悔が胸を焼き、手が震えていた。
いつも冷静なミーシャも動揺し、不安そうな表情を隠そうともしない。
空色の瞳が揺れ、唇が震えている。
治癒魔法を何度もかけた。あらゆる回復呪文を試した。けれど、レオンの中で砕けたものは、どうしても元に戻せなかった。
――私の力では、救えなかった。
その事実が、ミーシャの心を深く抉る。
ルナは涙を浮かべながら拳を握りしめ、その小さな体を震わせていた。
――レオンがいなければ、私は今も暴走する力に怯えて生きていた。
あんなに優しくて、あんなに強くて、あんなに頼りになる人が。
世界は、なんて残酷なんだろう。
シエルは今にも泣き出しそうな顔で何度も言葉を飲み込む。
「レオン」と呼びかけたい。「大丈夫だよ」と言いたい。でも、声が出ない。
どんな言葉をかければいいのか――何度考えても、わからなかったのだ。
ただ、見送ることしかできなかった――。
バタン。
扉が閉まる音が、重く、冷たく響く。
その音は、まるで世界との断絶を告げるかのように――少女たちの胸に突き刺さった。
◇
レオンはベッドに腰を下ろした。
月明かりすら差し込まない部屋の漆黒の闇。
それはまるで、今のレオンの心を映しているかのようだった。
深呼吸をする。
一度、二度、三度――。
心を落ち着かせようとするが、鼓動は速まるばかり。胸の奥で渦巻く不安が止まらない。
それでも――確かめなければならなかった。
目を閉じ、意識を内側に向ける。そして、スキルにつながる回路を――ゆっくりと開いてみる。
以前なら、ここで意識の奥底に広がる豊かな感覚があった。
まるで無限の可能性が広がる大海原のような、満ち溢れる力の奔流。温かく、力強く、そして優しく――自分を包み込んでくれる存在。それがスキルを司る心の領域だった。
あの夜、絶望の淵で覚醒した【運命鑑定】。
それは神からの贈り物だった。
全てを失った自分に、もう一度立ち上がる力をくれた、奇跡の力だった。
しかし――。
今は何も、ない。
以前のような心の奥に広がる豊かな感覚が、どうしても得られない。
いくら意識を集中させても、いくら深く潜ろうとしても――そこには、何もなかった。
まるで、かつて宝物が眠っていた宝箱を開けたら、空っぽだったような。
あるべきものが、ない。
その喪失感が、レオンの心を蝕んでいく。
【運命鑑定】は元々パッシブスキルで、自分で起動できるようなタイプのスキルではない。常に運命を監視し続け、要所でレオンを導く情報をくれるだけだ。
だが、それでも――機械仕掛けの時計がカチカチと動くような、微かな鼓動のような感覚が、常に胸の奥にあったのだ。
それが、今は――。
虚無。
まるで、心臓が止まってしまったかのような明らかに今までとは違う感覚。
不安が、恐怖が、絶望が――じわじわとレオンを苛んでいく。
「頼む……頼むから……」
レオンは、祈るように呟いた。
両手を組んで、目を固く閉じて。
まるで、神に縋る子供のように。
その時だった――。
ポロン。
聞き覚えのある、スキル発動の電子音。
「……!」
レオンの心臓が、高鳴った。
期待に胸を膨らませ――ハッと目を見開く。
視界に、半透明の文字が浮かび上がる。
ああ――良かった! まだ、動いて――。
【繧ケ繧ュ繝ォ繝。繝?そ繝シ繧ク】
【驕ク謚槭↓繧医▲縺ヲ縲∽】
【ク也阜邱壹′螟牙虚縺励∪縺】
「……は?」
レオンの思考が、止まった。
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