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86. 名状しがたい柔らかな
「レオン……大丈夫?」
「ご、ごめんなさい、私……」
ルナが申し訳なさそうに、レオンの顔を覗き込んでくる。
さっきまでの怒りはどこへやら、今は純粋に心配している表情だった。
緋色の瞳が、不安そうに揺れている。
レオンはにっこりとほほ笑みながら、心配そうに見つめてくる四人の美少女を見回した。
エリナの黒曜石のような瞳。
ミーシャの空色の瞳。
ルナの緋色の瞳。
シエルの碧眼。
四人四様の美しさが、湯気の中に浮かび上がっている。
それぞれが違う色、違う輝きを持ち、それぞれが違う魅力を放っている。
そして、その全てがレオンを心配し、レオンを想っている。
「胸のサイズなんてどうでもいいんだよ。みんな、一人一人、眩しいくらい素敵なんだ……」
心の底からの言葉が、自然と口をついて出た。
お世辞ではない。本心である。
自分のことを考えてくれる四人の全てが、レオンにとってかけがえのない宝物だった。
「え?」
「あら……」
「ほ、本当……?」
頬を赤らめる女の子たち。
それぞれが、嬉しそうに、恥ずかしそうに、照れくさそうに微笑んでいる。
しかし、ミーシャだけは眉をひそめ、ガシッとシャワーヘッドを掴んだ。
「何をそんな優等生っぽいこと言ってんのよ! この誑しがぁぁ!」
なんと、ミーシャはシャワーを最大出力でレオンの顔にぶっかけた。
「ぶはぁ!!」
「ダメよ! 何してるのよぉ!」
「そうよ、せっかく【素敵】って言ってくれてるのにぃ」
他の子は慌てて制止する。
「あんたたちは本当にチョロいわねぇ!」
ミーシャが呆れたように言う。
しかし、その頬もほんのり赤く染まっているのは、本当は彼女も嬉しかったからだろう。
「チョロくたっていいの! シャワーを渡しなさい!」
エリナがミーシャの腕を引っ張る。
「止めてよぉ!」
「危ない! 危ないって! 落ち着いて! ぶはぁ!!」
「何すんのよぉ!」
「キャァ! 冷たいって!!」
「ミーシャ! ダメってばぁ!」
四人がもみ合いになって、エリナがミーシャのシャワーヘッドを奪った時だった――。
つるっ。
エリナの足が舞い上がる。
大理石の床は滑りやすかった。
「おわぁ!」
「ひゃぁ!」
「ちょっともぉ!」
「いやぁぁぁ!」
四人は折り重なるようにレオンの上に倒れこんだ。
ドサ、ドサッ!
鈍い音と共に、レオンの体に四人分の柔らかな重みが一気に圧し掛かる。
甘い香り。
濡れた髪。
温かな体温。
そして少女たちの柔肌――。
エリナの黒髪がレオンの顔にかかり、ミーシャの金髪が胸元に絡みつく。
ルナの赤い髪が頬をくすぐり、シエルの銀髪が肩に触れる。
全身のあらゆる場所から、名状しがたい柔らかな感触が押し寄せてくる。
右腕には誰かの胸が。左腕には誰かの腿が。腹部には誰かの体重が。
これは――これは――。
(なんで、こんなことになってるの……僕?)
あまりの刺激の強さに、レオンは鼻血をブフっと吹くと、意識が徐々に薄らいでいった。
視界が白く霞んでいく。
耳鳴りがする。
心臓が、今度こそ本当に止まりそうだ――。
「レオン!?」
「し、しっかりして!」
「大丈夫!?」
「ダメ! ヒールよ! ヒールかけて!!」
少女たちの心配そうな声が、遠くから聞こえてくる。
しかし、その声すらも、次第に遠ざかっていく――。
◇
――その後、レオンは少女たちに介抱され、何とか意識を取り戻した。
スキルは失った。
けれど、こんな風に自分を心配してくれる仲間がいる。
それだけで、レオンは十分に幸せだと思えた。
賑やかで、騒がしくて、落ち着かない日常。
心臓に悪いことばかりで、理性を保つのに必死で、いつ倒れてもおかしくない毎日。
けれど、これこそが――レオンが守りたいと願った、大切な仲間との時間なのだ。
失われた運命を嘆くより、今ここにある絆を大切にしよう。
スキルがなくても、彼女たちと一緒にいられるなら、それでいい。
レオンは、そう心に誓った。
少女たちの姦しい笑い声と、レオンの悲鳴で彩られた新生活――。
スキルを失った軍師と、彼を慕う四人の少女たちの、新たな物語が始まろうとしていた。
窓の外では、夕焼けが夜の帳に変わろうとしている。
一番星が、そっと瞬いていた。
明日も、きっと騒がしい一日になるだろう。
けれど、それでいい。
この温かさが、この絆が――レオンの新たな力になる。
砕けた運命の先に、新たな希望が芽生えようとしていた――。
「ご、ごめんなさい、私……」
ルナが申し訳なさそうに、レオンの顔を覗き込んでくる。
さっきまでの怒りはどこへやら、今は純粋に心配している表情だった。
緋色の瞳が、不安そうに揺れている。
レオンはにっこりとほほ笑みながら、心配そうに見つめてくる四人の美少女を見回した。
エリナの黒曜石のような瞳。
ミーシャの空色の瞳。
ルナの緋色の瞳。
シエルの碧眼。
四人四様の美しさが、湯気の中に浮かび上がっている。
それぞれが違う色、違う輝きを持ち、それぞれが違う魅力を放っている。
そして、その全てがレオンを心配し、レオンを想っている。
「胸のサイズなんてどうでもいいんだよ。みんな、一人一人、眩しいくらい素敵なんだ……」
心の底からの言葉が、自然と口をついて出た。
お世辞ではない。本心である。
自分のことを考えてくれる四人の全てが、レオンにとってかけがえのない宝物だった。
「え?」
「あら……」
「ほ、本当……?」
頬を赤らめる女の子たち。
それぞれが、嬉しそうに、恥ずかしそうに、照れくさそうに微笑んでいる。
しかし、ミーシャだけは眉をひそめ、ガシッとシャワーヘッドを掴んだ。
「何をそんな優等生っぽいこと言ってんのよ! この誑しがぁぁ!」
なんと、ミーシャはシャワーを最大出力でレオンの顔にぶっかけた。
「ぶはぁ!!」
「ダメよ! 何してるのよぉ!」
「そうよ、せっかく【素敵】って言ってくれてるのにぃ」
他の子は慌てて制止する。
「あんたたちは本当にチョロいわねぇ!」
ミーシャが呆れたように言う。
しかし、その頬もほんのり赤く染まっているのは、本当は彼女も嬉しかったからだろう。
「チョロくたっていいの! シャワーを渡しなさい!」
エリナがミーシャの腕を引っ張る。
「止めてよぉ!」
「危ない! 危ないって! 落ち着いて! ぶはぁ!!」
「何すんのよぉ!」
「キャァ! 冷たいって!!」
「ミーシャ! ダメってばぁ!」
四人がもみ合いになって、エリナがミーシャのシャワーヘッドを奪った時だった――。
つるっ。
エリナの足が舞い上がる。
大理石の床は滑りやすかった。
「おわぁ!」
「ひゃぁ!」
「ちょっともぉ!」
「いやぁぁぁ!」
四人は折り重なるようにレオンの上に倒れこんだ。
ドサ、ドサッ!
鈍い音と共に、レオンの体に四人分の柔らかな重みが一気に圧し掛かる。
甘い香り。
濡れた髪。
温かな体温。
そして少女たちの柔肌――。
エリナの黒髪がレオンの顔にかかり、ミーシャの金髪が胸元に絡みつく。
ルナの赤い髪が頬をくすぐり、シエルの銀髪が肩に触れる。
全身のあらゆる場所から、名状しがたい柔らかな感触が押し寄せてくる。
右腕には誰かの胸が。左腕には誰かの腿が。腹部には誰かの体重が。
これは――これは――。
(なんで、こんなことになってるの……僕?)
あまりの刺激の強さに、レオンは鼻血をブフっと吹くと、意識が徐々に薄らいでいった。
視界が白く霞んでいく。
耳鳴りがする。
心臓が、今度こそ本当に止まりそうだ――。
「レオン!?」
「し、しっかりして!」
「大丈夫!?」
「ダメ! ヒールよ! ヒールかけて!!」
少女たちの心配そうな声が、遠くから聞こえてくる。
しかし、その声すらも、次第に遠ざかっていく――。
◇
――その後、レオンは少女たちに介抱され、何とか意識を取り戻した。
スキルは失った。
けれど、こんな風に自分を心配してくれる仲間がいる。
それだけで、レオンは十分に幸せだと思えた。
賑やかで、騒がしくて、落ち着かない日常。
心臓に悪いことばかりで、理性を保つのに必死で、いつ倒れてもおかしくない毎日。
けれど、これこそが――レオンが守りたいと願った、大切な仲間との時間なのだ。
失われた運命を嘆くより、今ここにある絆を大切にしよう。
スキルがなくても、彼女たちと一緒にいられるなら、それでいい。
レオンは、そう心に誓った。
少女たちの姦しい笑い声と、レオンの悲鳴で彩られた新生活――。
スキルを失った軍師と、彼を慕う四人の少女たちの、新たな物語が始まろうとしていた。
窓の外では、夕焼けが夜の帳に変わろうとしている。
一番星が、そっと瞬いていた。
明日も、きっと騒がしい一日になるだろう。
けれど、それでいい。
この温かさが、この絆が――レオンの新たな力になる。
砕けた運命の先に、新たな希望が芽生えようとしていた――。
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