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99. 純粋な殺意
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ルナは杖を天に掲げた。その瞬間、杖に埋め込まれたルビーに閃光が走り、彼女の小さな体から想像もつかないほどの魔力が渦を巻いた。
大気が震え、灼熱の風が巻き起こり、ルナの赤い髪が炎のように舞い上がる――。
その瞳には紅蓮の光が宿り、まるで別人のような威厳を纏っていた。
「我が名はルナ・クリムゾン! 竜殺しの血を継ぐ者!」
詠唱が森に響き渡る。その声には、かつての不安定さは微塵もない。
「我が命に従え、炎の化身よ! 現れよ――」
次の瞬間、彼女の頭上に顕現したのは燃え盛る鱗を持つ巨大な炎の龍だった。その威容に全員が息を呑む。それはスタンピードの時に噴火を引き起こした龍よりも一回り大きく見える。これがルナの力。レオンが見出し、レオンが信じ、レオンが育てた才能の結晶。
「いっけえええええええ!」
ルナの号令一下、炎龍は咆哮と共に洞窟内へと突撃した。
グオォォォォォーー!!
大気が振動し、大地が揺れる。内部からゴブリンたちの断末魔の叫びが響き渡り、刹那、ドオォォォンッ!!と地を揺るがす大爆発が起こった。入り口から、崖のひび割れから、まるで火山の噴火のように炎が噴き出し、凄まじい熱波と衝撃波が森の木々を激しく揺らす。あちこちから噴き出した炎の柱が天高く昇り、その光景はまさに地獄の門が開いたかのようだった。
「……すごい」
シエルが呆然と呟いた。
「ルナ……あなた、いつの間にこんなに……」
ミーシャも口をポカンと開けている。普段は冷静な彼女でさえ、この圧倒的な火力には驚きを隠せないようだった。
「当然でしょ!」
ルナが得意げに胸を張る。その笑顔には、かつての劣等感の影は微塵もなかった。
「あたしたち、もう――あの頃とは違うんだから!」
その言葉に全員が微笑んだ。そうだ、自分たちは変わった。レオンに導かれたことで、格段に強くなっていた。
ポゥ……と一行の身体に聖なる光が満ち、力が漲るのを感じた。これは神の加護、大量の魔物を倒したことで得られる力の奔流だ。レベルアップの感覚が全身に広がっていく。
「よし……これで――」
エリナが剣を鞘に収めようとした、その時だった。
グルァァァァ!!!!
洞窟の奥から炎をかき消すほどの怒りと憎悪に満ちた咆哮が響き渡った。
ドガァァンッ!!と轟音を上げて洞窟の入り口辺りが内側から吹っ飛び、岩の破片が四方に飛び散る。
「キャァ!」「うわぁ!」「何よこれぇ!」
黒煙の中から姿を現したのは、全身に火傷を負いながらも殺意の光を爛々と宿す巨大なゴブリンロードだった。その体躯は通常の個体の二倍以上あり、手にした巨大な石斧が不気味に赤く光っている。全身から立ち上る湯気、焼けただれた皮膚、けれどその瞳にはまだ生命の炎が燃えていた。
◇
「嘘……まだ生きてるの……!?」
ルナの声が裏返った。彼女の赤い瞳が恐怖に見開かれる。あれほどの炎を浴びながらまだ立っているなんて。焼けただれた緑色の皮膚から白い湯気が立ち上り、溶けかけた肉がドロドロと地面に滴り落ちているというのに、ゴブリンロードは憎悪に満ちた黄色い目を光らせてこちらを睨んでいる。その瞳には理性のかけらもなく、ただ純粋な殺意だけが渦巻いていた。
グルルルルァァァ……!
喉の奥から絞り出されるような純粋な怒りと憎しみの咆哮が空気を震わせ、木々の葉が震える。
「まだ元気なんて、しぶといわね!」
シエルが即座に矢を番えた。深呼吸ひとつで心臓の鼓動を落ち着かせ、狙いを定める。矢じりがかすかに青白く光り始めたのは魔力が込められた証だ。レオンに教わった呼吸法、レオンに鍛えられた集中力、その全てを今この瞬間に注ぎ込む。
ヒュヒュヒュンッ!
三矢斉射。風を切り裂く音と共に三本の矢は青い光の尾を引きながらゴブリンロードへと殺到する。けれどキキキキィィィンッ!とゴブリンロードは巨体に見合わぬ速度で石斧を振るい、飛来する矢を一気に弾き落とした。火花が散り、金属音が森に響き渡る。
それでもひるまずシエルは三矢斉射を続けていく。さすがのゴブリンロードも全部は落とせず、数本の矢が肩や腕に突き刺さる。しかしまるで痛みを感じていないかのようにその勢いは一切衰えない。逆に加速していく。地面を踏みしめるたびにズシン、ズシンと重い音が響き、距離がどんどん縮まっていく。
「くっ……!」
シエルが歯噛みする。
「させませんわ!」
その瞬間、ミーシャの澄んだ声が響いた。彼女は杖を高く掲げ、その先端から眩い光が溢れ出す。金色の魔力粒子が空中で渦を巻き、幾何学的な魔法陣を形成していく。
「慈悲深き光よ、我らを守護せよ。ホーリーシールド!」
詠唱と共にゴブリンロードの眼前に光り輝く障壁が出現した。それは透明な水晶のように美しく、しかし鋼鉄よりも堅牢な防壁。神聖な力が凝縮されたその盾は空気を震わせながら輝きを増していく。
ロードの動きが止まり、その顔に初めて戸惑いの色が浮かぶ。けれどそれも長くは続かなかった。
大気が震え、灼熱の風が巻き起こり、ルナの赤い髪が炎のように舞い上がる――。
その瞳には紅蓮の光が宿り、まるで別人のような威厳を纏っていた。
「我が名はルナ・クリムゾン! 竜殺しの血を継ぐ者!」
詠唱が森に響き渡る。その声には、かつての不安定さは微塵もない。
「我が命に従え、炎の化身よ! 現れよ――」
次の瞬間、彼女の頭上に顕現したのは燃え盛る鱗を持つ巨大な炎の龍だった。その威容に全員が息を呑む。それはスタンピードの時に噴火を引き起こした龍よりも一回り大きく見える。これがルナの力。レオンが見出し、レオンが信じ、レオンが育てた才能の結晶。
「いっけえええええええ!」
ルナの号令一下、炎龍は咆哮と共に洞窟内へと突撃した。
グオォォォォォーー!!
大気が振動し、大地が揺れる。内部からゴブリンたちの断末魔の叫びが響き渡り、刹那、ドオォォォンッ!!と地を揺るがす大爆発が起こった。入り口から、崖のひび割れから、まるで火山の噴火のように炎が噴き出し、凄まじい熱波と衝撃波が森の木々を激しく揺らす。あちこちから噴き出した炎の柱が天高く昇り、その光景はまさに地獄の門が開いたかのようだった。
「……すごい」
シエルが呆然と呟いた。
「ルナ……あなた、いつの間にこんなに……」
ミーシャも口をポカンと開けている。普段は冷静な彼女でさえ、この圧倒的な火力には驚きを隠せないようだった。
「当然でしょ!」
ルナが得意げに胸を張る。その笑顔には、かつての劣等感の影は微塵もなかった。
「あたしたち、もう――あの頃とは違うんだから!」
その言葉に全員が微笑んだ。そうだ、自分たちは変わった。レオンに導かれたことで、格段に強くなっていた。
ポゥ……と一行の身体に聖なる光が満ち、力が漲るのを感じた。これは神の加護、大量の魔物を倒したことで得られる力の奔流だ。レベルアップの感覚が全身に広がっていく。
「よし……これで――」
エリナが剣を鞘に収めようとした、その時だった。
グルァァァァ!!!!
洞窟の奥から炎をかき消すほどの怒りと憎悪に満ちた咆哮が響き渡った。
ドガァァンッ!!と轟音を上げて洞窟の入り口辺りが内側から吹っ飛び、岩の破片が四方に飛び散る。
「キャァ!」「うわぁ!」「何よこれぇ!」
黒煙の中から姿を現したのは、全身に火傷を負いながらも殺意の光を爛々と宿す巨大なゴブリンロードだった。その体躯は通常の個体の二倍以上あり、手にした巨大な石斧が不気味に赤く光っている。全身から立ち上る湯気、焼けただれた皮膚、けれどその瞳にはまだ生命の炎が燃えていた。
◇
「嘘……まだ生きてるの……!?」
ルナの声が裏返った。彼女の赤い瞳が恐怖に見開かれる。あれほどの炎を浴びながらまだ立っているなんて。焼けただれた緑色の皮膚から白い湯気が立ち上り、溶けかけた肉がドロドロと地面に滴り落ちているというのに、ゴブリンロードは憎悪に満ちた黄色い目を光らせてこちらを睨んでいる。その瞳には理性のかけらもなく、ただ純粋な殺意だけが渦巻いていた。
グルルルルァァァ……!
喉の奥から絞り出されるような純粋な怒りと憎しみの咆哮が空気を震わせ、木々の葉が震える。
「まだ元気なんて、しぶといわね!」
シエルが即座に矢を番えた。深呼吸ひとつで心臓の鼓動を落ち着かせ、狙いを定める。矢じりがかすかに青白く光り始めたのは魔力が込められた証だ。レオンに教わった呼吸法、レオンに鍛えられた集中力、その全てを今この瞬間に注ぎ込む。
ヒュヒュヒュンッ!
三矢斉射。風を切り裂く音と共に三本の矢は青い光の尾を引きながらゴブリンロードへと殺到する。けれどキキキキィィィンッ!とゴブリンロードは巨体に見合わぬ速度で石斧を振るい、飛来する矢を一気に弾き落とした。火花が散り、金属音が森に響き渡る。
それでもひるまずシエルは三矢斉射を続けていく。さすがのゴブリンロードも全部は落とせず、数本の矢が肩や腕に突き刺さる。しかしまるで痛みを感じていないかのようにその勢いは一切衰えない。逆に加速していく。地面を踏みしめるたびにズシン、ズシンと重い音が響き、距離がどんどん縮まっていく。
「くっ……!」
シエルが歯噛みする。
「させませんわ!」
その瞬間、ミーシャの澄んだ声が響いた。彼女は杖を高く掲げ、その先端から眩い光が溢れ出す。金色の魔力粒子が空中で渦を巻き、幾何学的な魔法陣を形成していく。
「慈悲深き光よ、我らを守護せよ。ホーリーシールド!」
詠唱と共にゴブリンロードの眼前に光り輝く障壁が出現した。それは透明な水晶のように美しく、しかし鋼鉄よりも堅牢な防壁。神聖な力が凝縮されたその盾は空気を震わせながら輝きを増していく。
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