129 / 186
129. 無謀で絶望的な抵抗
「そんな……」「くっ……!」「どうしたら……」
動揺の声が、あちこちから上がる。それはつまり、彼らが信じていた「正義」や「秩序」が、既に内側から腐り落ちていたという事実だった。王国という巨大な組織が見えない寄生虫に蝕まれ、もはや健全な部分がどこにあるのか、誰が味方で誰が敵なのか、まったく分からない状態。
「やはり……そうだったのか……」
レオンが震える声で呟いた。その手は小刻みに震え、顔からは血の気が引いている。
「じゃあ、あたしたちは……誰を信じればいいの? 誰に助けを求めればいいの?」
ルナが、今にも泣き出しそうな声で尋ねた。
「報告すれば、十中八九もみ消される」
ギルドマスターが、冷徹な現実を告げる。
「いや、もみ消されるだけならまだいい。最悪の場合、我々の方が『反逆者』『国家転覆を企む危険分子』として、国家権力に追われることになるだろう」
その言葉が、まるで鉛のように重く、全員の肩に圧し掛かってくる。
「証拠を出したところで『捏造だ』と一蹴されて終わり。我々は逮捕され、牢に入れられ、最悪の場合……処刑されるか……寄生体を埋め込まれるか……」
「そんな……ひどい……あんまりよ!」
シエルが唇を強く噛んだ。その目には怒りと無力感、そして深い絶望が浮かんでいる。
「社会とは、往々にしてそういうものだ」
エルウィン博士が、長年の経験から来る苦々しい表情で言った。
「力ある者が正義を定義する。真実がどうであろうと、力ある者の言葉が真実になる。そして今、この王国で力を持つ者たちの多くが、敵に操られている。ならば正義は、奴らの側にあるということだ」
我々は巨大な陰謀の核心に触れてしまった。けれど助けを求める先はどこにもない。警備隊も、魔塔も、王宮も、全てが敵かもしれない。いや、敵である可能性が高い。信じられるのは、今この場所にいる仲間だけ。
絶望が、地下室を満たしていく。まるで冷たい霧のように――――。
その時、レオンが動いた。
震える手で涙を拭い、ゆっくりと立ち上がる。
「レオン……」
エリナが、心配そうに眉を寄せる。
レオンは深く息を吸い込む。
悲嘆してても事態は悪くなる一方だ。
妹を殺し、仲間を傷つけ、敬愛する主君を操り、この国を蝕む見えざる敵。
個人的な復讐の炎は今、国を救うという大義の炎と重なり、彼の魂の中でかつてないほど激しく燃え上がっていた。
妹のため。仲間のため。この国のため。そして、これ以上誰も失わないために――――。
「敵は、この国に巣食う闇……」
レオンの声が、静かに響く。けれどその声には、揺るぎない意志が込められている。
レオンは、仲間たちを一人一人見回した。みんな、疲れている。絶望している。けれど、心はまだ折れていない。その目には、戦う意志が残っている。
「――上等だ」
レオンの唇が、僅かに笑みの形を作る。それは悲しみを湛えつつも挑戦的な笑み。
「ならば僕たちが、この腐りきった国を、悪意の全てを、ひっくり返してやろう!」
その言葉が、部屋に響き渡った。
それは社会そのものへの宣戦布告だった。敵は【運命鑑定】を超えるスキルを持ち、【核】を操り王国を裏から支配しているという鉄壁の布陣。どう考えても勝ち目などなかった。
けれど、それでも戦うと決めた者の、魂の叫び。
沈黙。
そう、沈黙せざるを得ない。もはや自殺行為だ。
しかし――。
「……いいね」
エリナが、カチャっと剣の柄に手をかけた。
「私も……ですわ」
ミーシャが、ロッドを握りしめる。
「あたしも! 絶対に許さない!」
ルナが、拳を掲げる。
「レオンのため、父様のためなら……どこまでも」
シエルが、弓をぎゅっと握る。
「蒼き獅子騎士団も、共に戦おう」
ギルバートが、力強く頷いた。
「老いぼれだが、知識なら提供できる」
エルウィン博士が、眼鏡を押し上げる。
「ギルドも、できる限りの支援をしよう」
ギルドマスターが、サムアップした。
全員の目が、不敵に輝く――。
それは、絶望の淵に立ちながらも、それでも戦うことを選んだ者たちの目。
長く、困難な戦いが始まる。
けれど、彼らは一人ではない。
仲間がいる。信じ合える仲間が。
その事実が、彼らに力を与えてくれる。
レオンは、仲間たちの顔を見回し、そして静かに頷いた。
「ありがとう……みなさん」
その声には感謝と――そしてもう引き返せない困難な道への覚悟が込められていた。
ここに自殺行為ともいえる、無謀で絶望的な抵抗の幕が上がったのだった。
動揺の声が、あちこちから上がる。それはつまり、彼らが信じていた「正義」や「秩序」が、既に内側から腐り落ちていたという事実だった。王国という巨大な組織が見えない寄生虫に蝕まれ、もはや健全な部分がどこにあるのか、誰が味方で誰が敵なのか、まったく分からない状態。
「やはり……そうだったのか……」
レオンが震える声で呟いた。その手は小刻みに震え、顔からは血の気が引いている。
「じゃあ、あたしたちは……誰を信じればいいの? 誰に助けを求めればいいの?」
ルナが、今にも泣き出しそうな声で尋ねた。
「報告すれば、十中八九もみ消される」
ギルドマスターが、冷徹な現実を告げる。
「いや、もみ消されるだけならまだいい。最悪の場合、我々の方が『反逆者』『国家転覆を企む危険分子』として、国家権力に追われることになるだろう」
その言葉が、まるで鉛のように重く、全員の肩に圧し掛かってくる。
「証拠を出したところで『捏造だ』と一蹴されて終わり。我々は逮捕され、牢に入れられ、最悪の場合……処刑されるか……寄生体を埋め込まれるか……」
「そんな……ひどい……あんまりよ!」
シエルが唇を強く噛んだ。その目には怒りと無力感、そして深い絶望が浮かんでいる。
「社会とは、往々にしてそういうものだ」
エルウィン博士が、長年の経験から来る苦々しい表情で言った。
「力ある者が正義を定義する。真実がどうであろうと、力ある者の言葉が真実になる。そして今、この王国で力を持つ者たちの多くが、敵に操られている。ならば正義は、奴らの側にあるということだ」
我々は巨大な陰謀の核心に触れてしまった。けれど助けを求める先はどこにもない。警備隊も、魔塔も、王宮も、全てが敵かもしれない。いや、敵である可能性が高い。信じられるのは、今この場所にいる仲間だけ。
絶望が、地下室を満たしていく。まるで冷たい霧のように――――。
その時、レオンが動いた。
震える手で涙を拭い、ゆっくりと立ち上がる。
「レオン……」
エリナが、心配そうに眉を寄せる。
レオンは深く息を吸い込む。
悲嘆してても事態は悪くなる一方だ。
妹を殺し、仲間を傷つけ、敬愛する主君を操り、この国を蝕む見えざる敵。
個人的な復讐の炎は今、国を救うという大義の炎と重なり、彼の魂の中でかつてないほど激しく燃え上がっていた。
妹のため。仲間のため。この国のため。そして、これ以上誰も失わないために――――。
「敵は、この国に巣食う闇……」
レオンの声が、静かに響く。けれどその声には、揺るぎない意志が込められている。
レオンは、仲間たちを一人一人見回した。みんな、疲れている。絶望している。けれど、心はまだ折れていない。その目には、戦う意志が残っている。
「――上等だ」
レオンの唇が、僅かに笑みの形を作る。それは悲しみを湛えつつも挑戦的な笑み。
「ならば僕たちが、この腐りきった国を、悪意の全てを、ひっくり返してやろう!」
その言葉が、部屋に響き渡った。
それは社会そのものへの宣戦布告だった。敵は【運命鑑定】を超えるスキルを持ち、【核】を操り王国を裏から支配しているという鉄壁の布陣。どう考えても勝ち目などなかった。
けれど、それでも戦うと決めた者の、魂の叫び。
沈黙。
そう、沈黙せざるを得ない。もはや自殺行為だ。
しかし――。
「……いいね」
エリナが、カチャっと剣の柄に手をかけた。
「私も……ですわ」
ミーシャが、ロッドを握りしめる。
「あたしも! 絶対に許さない!」
ルナが、拳を掲げる。
「レオンのため、父様のためなら……どこまでも」
シエルが、弓をぎゅっと握る。
「蒼き獅子騎士団も、共に戦おう」
ギルバートが、力強く頷いた。
「老いぼれだが、知識なら提供できる」
エルウィン博士が、眼鏡を押し上げる。
「ギルドも、できる限りの支援をしよう」
ギルドマスターが、サムアップした。
全員の目が、不敵に輝く――。
それは、絶望の淵に立ちながらも、それでも戦うことを選んだ者たちの目。
長く、困難な戦いが始まる。
けれど、彼らは一人ではない。
仲間がいる。信じ合える仲間が。
その事実が、彼らに力を与えてくれる。
レオンは、仲間たちの顔を見回し、そして静かに頷いた。
「ありがとう……みなさん」
その声には感謝と――そしてもう引き返せない困難な道への覚悟が込められていた。
ここに自殺行為ともいえる、無謀で絶望的な抵抗の幕が上がったのだった。
あなたにおすすめの小説
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜
グリゴリ
ファンタジー
木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。
SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。
祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。
恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。
蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。
そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。
隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。
追放された宮廷魔導師、実は王国の防衛結界を一人で維持していた
やんやんつけばー
ファンタジー
「成果が見えない者に、宮廷の席は与えられない」――十年間、王国の防衛結界を独力で維持してきた宮廷魔導師ルクスは、無能の烙印を押されて追放された。だが彼が去った翌日から、王都を守る六つの楔は崩壊を始める。魔物が辺境を襲い、大臣たちが混乱する中、ルクスは静かに旅に出ていた。もう結界は自分の仕事ではない。そう決めたはずなのに、行く先々で人々の危機に遭遇し、彼は再び魔法を使う。追放×ざまぁ×再起の王道ファンタジー。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。
夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!
虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!
竜鳴躍
ファンタジー
気が付いたら転生していました。
でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。
何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。
王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。
僕は邪魔なんだよね。分かってる。
先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。
そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。
だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。
僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。
従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。
だけど、みんな知らなかったんだ。
僕がいなくなったら困るってこと…。
帰ってきてくれって言われても、今更無理です。
2026.03.30 内容紹介一部修正
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!