54 / 71
4-6. 神々の箱庭
しおりを挟む
「へ? 星……ですか?」
「自分たちの昔の星をコンピューター上に再現したんじゃな。そして、そこに木を生やし、鳥や魚や動物や虫を解き放ち、最後に自分を作った創造者である人間たちを置いたんじゃ」
「一体……何のために?」
「置いた人間は原始人。ほんのちょっとだけ猿に近い野蛮な野生の人間じゃった。そこから一体どんな文明・文化が育つかをじっと観察したんじゃ」
「えっ? それは何だか興味深いですね……」
「そうじゃろ? 興味深いじゃろ? ワシらの気持ちが分かるか?」
レヴィアはニヤッと笑った。
この瞬間、ヴィクトルの中に稲妻のような衝撃が走った。全てが一本の線に繋がったのだ。ヴィーナの感謝、ヒルドの焦り、不自然な魔物や魔法、全てがたった一つの目的の前に整然と並んでいることをヴィクトルは理解した。五十六億七千万年前から続くすさまじく甚大な計算の歴史……、そう、世界は紡ぎだされる文明・文化を愛でる神々の箱庭だったのだ。人間は光の中で神に生み出され、神に愛され、そして時には怒りや失望により滅ぼされる……、まさに神話の通りだったのだ。
ヴィクトルは言葉を失い、椅子の背もたれに力なくもたれかかり、ただ虚空をぼんやりと見つめた。
そんな馬鹿なと一瞬思ったが、話のどこにも矛盾がない。宇宙が誕生してから138億年経っているのだ。手のひらサイズのiPhoneであれほどグリグリと魅力的な世界が創れるのなら、開発に十万年かけた本格的なコンピューターだったら自分たちの世界を作ることも造作もない事だろう。
「主さま大丈夫? エール飲みます?」
ルコアが心配をして樽を差し出してくる。
ヴィクトルはじっと樽の中で揺れる泡を見て……、
「大丈夫、ありがとう……」
と、言って、大きく息をついた。
「僕らはペットですか?」
ヴィクトルはレヴィアをやや非難をこめた目で見た。
「とんでもない。この星の主役は君たち人間じゃからな。君らが学校の学生だとしたらワシらは用務員さんじゃよ」
「でも、出来が悪い星は消すんですよね?」
レヴィアは大きく息をつくと、
「……。上の判断で廃校になることはある。用務員にはどうしようもできん」
そう言って静かに首を振ると樽を傾け、グッとエールを飲んだ。
「ヒルドが『この星が消されないために宗教をやる』って言ってました」
「確かに活性度が上がり、いい刺激にはなるじゃろうな。じゃが、管理者が主導したとバレた時点でアウトじゃ。用務員が学園祭のステージで活躍するのは重罪じゃ」
「ダメなんですか?」
「オリジナルな文明・文化を作ってもらうのが我らの仕事じゃ。関与してしまったらそれはわしらの知ってる世界の劣化コピーにしかならん。やる意味自体がなくなってしまうんじゃ」
レヴィアは肩をすくめる。
ヴィクトルは腕を組み考える。この世界の不思議なルールに納得しつつも釈然としない思いがモヤモヤと頭を支配し、しかしそれはなかなか言語化できなかった。
ルコアがふらりと立ち上がり向こうへ行く。
ヴィクトルは気にも留めていなかったが、その後信じられないことが起こった。
ルコアが手を青く光らせニヤッと笑ったのだった。
「ん?」
ヴィクトルはルコアの意図をつかみかねる。
直後、なんと、ルコアはいきなり手刀でレヴィアの心臓を背後から打ち抜いた。ザスっという重い音が部屋に響く。
グハァ!
大量の血を吐くレヴィア。
返り血を浴び、血だらけとなったルコアの目は真紅に光り輝き、恐ろしげな笑みを浮かべ、さらに腕に力を込めると、鬼のような形相で叫んだ。
ウォォォ!
レヴィアは激しいブロックノイズに包まれ、
「ヒルドか! ぬかった! ぐぁぁぁ!」
と、叫び、必死の形相でルコアを振り払おうとするが、上手くいかない。
ヴィクトルはルコアを制止すべく魔法を発動しようとしたが……魔力が全然出てこない。
「くそっ!」
飛び上がってテーブルを飛び越え、ルコアに飛びかかったヴィクトルだったが、あっさりと殴り飛ばされ、壁に叩きつけられ、転がる。
ギャァァァ!
レヴィアは断末魔の叫びを上げながら薄れていく……。
「あぁ! レヴィア様!」
目の前で展開される惨劇にヴィクトルは真っ青になって必死に体を起こすが、ただの六歳児にされてしまったヴィクトルにはなすすべがない。
そして、レヴィアはブロックノイズの中、すぅっと消えて行ってしまった……。
「自分たちの昔の星をコンピューター上に再現したんじゃな。そして、そこに木を生やし、鳥や魚や動物や虫を解き放ち、最後に自分を作った創造者である人間たちを置いたんじゃ」
「一体……何のために?」
「置いた人間は原始人。ほんのちょっとだけ猿に近い野蛮な野生の人間じゃった。そこから一体どんな文明・文化が育つかをじっと観察したんじゃ」
「えっ? それは何だか興味深いですね……」
「そうじゃろ? 興味深いじゃろ? ワシらの気持ちが分かるか?」
レヴィアはニヤッと笑った。
この瞬間、ヴィクトルの中に稲妻のような衝撃が走った。全てが一本の線に繋がったのだ。ヴィーナの感謝、ヒルドの焦り、不自然な魔物や魔法、全てがたった一つの目的の前に整然と並んでいることをヴィクトルは理解した。五十六億七千万年前から続くすさまじく甚大な計算の歴史……、そう、世界は紡ぎだされる文明・文化を愛でる神々の箱庭だったのだ。人間は光の中で神に生み出され、神に愛され、そして時には怒りや失望により滅ぼされる……、まさに神話の通りだったのだ。
ヴィクトルは言葉を失い、椅子の背もたれに力なくもたれかかり、ただ虚空をぼんやりと見つめた。
そんな馬鹿なと一瞬思ったが、話のどこにも矛盾がない。宇宙が誕生してから138億年経っているのだ。手のひらサイズのiPhoneであれほどグリグリと魅力的な世界が創れるのなら、開発に十万年かけた本格的なコンピューターだったら自分たちの世界を作ることも造作もない事だろう。
「主さま大丈夫? エール飲みます?」
ルコアが心配をして樽を差し出してくる。
ヴィクトルはじっと樽の中で揺れる泡を見て……、
「大丈夫、ありがとう……」
と、言って、大きく息をついた。
「僕らはペットですか?」
ヴィクトルはレヴィアをやや非難をこめた目で見た。
「とんでもない。この星の主役は君たち人間じゃからな。君らが学校の学生だとしたらワシらは用務員さんじゃよ」
「でも、出来が悪い星は消すんですよね?」
レヴィアは大きく息をつくと、
「……。上の判断で廃校になることはある。用務員にはどうしようもできん」
そう言って静かに首を振ると樽を傾け、グッとエールを飲んだ。
「ヒルドが『この星が消されないために宗教をやる』って言ってました」
「確かに活性度が上がり、いい刺激にはなるじゃろうな。じゃが、管理者が主導したとバレた時点でアウトじゃ。用務員が学園祭のステージで活躍するのは重罪じゃ」
「ダメなんですか?」
「オリジナルな文明・文化を作ってもらうのが我らの仕事じゃ。関与してしまったらそれはわしらの知ってる世界の劣化コピーにしかならん。やる意味自体がなくなってしまうんじゃ」
レヴィアは肩をすくめる。
ヴィクトルは腕を組み考える。この世界の不思議なルールに納得しつつも釈然としない思いがモヤモヤと頭を支配し、しかしそれはなかなか言語化できなかった。
ルコアがふらりと立ち上がり向こうへ行く。
ヴィクトルは気にも留めていなかったが、その後信じられないことが起こった。
ルコアが手を青く光らせニヤッと笑ったのだった。
「ん?」
ヴィクトルはルコアの意図をつかみかねる。
直後、なんと、ルコアはいきなり手刀でレヴィアの心臓を背後から打ち抜いた。ザスっという重い音が部屋に響く。
グハァ!
大量の血を吐くレヴィア。
返り血を浴び、血だらけとなったルコアの目は真紅に光り輝き、恐ろしげな笑みを浮かべ、さらに腕に力を込めると、鬼のような形相で叫んだ。
ウォォォ!
レヴィアは激しいブロックノイズに包まれ、
「ヒルドか! ぬかった! ぐぁぁぁ!」
と、叫び、必死の形相でルコアを振り払おうとするが、上手くいかない。
ヴィクトルはルコアを制止すべく魔法を発動しようとしたが……魔力が全然出てこない。
「くそっ!」
飛び上がってテーブルを飛び越え、ルコアに飛びかかったヴィクトルだったが、あっさりと殴り飛ばされ、壁に叩きつけられ、転がる。
ギャァァァ!
レヴィアは断末魔の叫びを上げながら薄れていく……。
「あぁ! レヴィア様!」
目の前で展開される惨劇にヴィクトルは真っ青になって必死に体を起こすが、ただの六歳児にされてしまったヴィクトルにはなすすべがない。
そして、レヴィアはブロックノイズの中、すぅっと消えて行ってしまった……。
33
あなたにおすすめの小説
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。
八神 凪
ファンタジー
久我和人、35歳。
彼は凶悪事件に巻き込まれた家族の復讐のために10年の月日をそれだけに費やし、目標が達成されるが同時に命を失うこととなる。
しかし、その生きざまに興味を持った別の世界の神が和人の魂を拾い上げて告げる。
――君を僕の世界に送りたい。そしてその生きざまで僕を楽しませてくれないか、と。
その他色々な取引を経て、和人は二度目の生を異世界で受けることになるのだが……
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる