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18. 光陰の杖
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翌朝、おじいさんのお店へ行こうとユータは心躍らせながら街を歩いていた。
すると、突然――――。
ピロローン! ピロローン! ピロローン!
頭の中に鮮やかな音が鳴り響く。
「キターーーー!!」
俺は思わずピョンと跳び、ガッツポーズを決めた。通りがかりの人々が不思議そうに振り返るが、そんなことどうでもいいくらい俺は喜びが爆発していた。
急いでステータスを確認すると、レベルが五に上がっている。予想通り、エドガーたちが倒した敵の経験値が、ユータにも分配され始めたのだ。
俺は勝手にレベルが上がる環境を手に入れたのだ。これでもう寝ててもレベルが勝手に上がっていく。それはまさにバグ技。禁断のチートだった。
今後さらに武器を売り広めていけば、経験値の蓄積速度は加速度的に上がっていくはずだ。
例えば、冒険者千人に武器を使ってもらえたら、家に居ながらにして普通の冒険者の千倍の速さで強くなっていく。そうなれば人族最強どころか、この世界の秩序さえも揺るがすほどの存在になってしまうかもしれない――――。
「『商人』が、この世界を揺るがす仙人のような存在に……」その考えに、俺は痛快な喜びを感じた。
確かに、これはチートでインチキかもしれない。しかし、孤児が異世界で生き抜くために、きれいごとを言っている場合ではないのだ。できることは何でもやる。それが前世で何もできず人生を無駄にしてしまった俺の反省の結論だった。
ガッツポーズを繰り返し、ピョンピョンと飛び跳ねながら道を歩く。いつもの石畳の道が、今日は特別に輝いて見えた。まるで栄光への道のように。
◇
「おぅ、いらっしゃい!」
朝の光が差し込む店先で、おじいさんはにこやかな笑顔でユータを迎えた。その温かな表情に、ユータは安心感を覚える。
倉庫の扉が開かれると、ユータの目の前に広がったのは、まさに宝の山だった。数千本もの武器が、まるで眠りについたように静かに並んでいる。
「うぉぉぉ! すごい!」
俺は思わず声を上げてしまった。
「何百年も前から代々続けてきたからね」
おじいさんは少し照れくさそうに説明する。
「でも、ほとんどが錆びついてしまってなぁ……」
「大丈夫です! 僕がちゃんと研ぎますんで!」
他人には単なる古い武器の山でも、俺の目には無限の可能性を秘めた宝の山に見えるのだ。
夕暮れまで黙々と鑑定を続けたユータは、★四つを二十本、★三つを百五十本も見つけ出した。
そんなにたくさん買いたいという俺の言葉に、おじいさんは驚いた様子だった。
「ほとんどがジャンク品だからね」
おじいさんは優しく微笑んだ。
「全部で金貨十枚でいいよ」
その言葉に、ユータは一瞬躊躇した。あまりにも安すぎる。商売というのはみんながハッピーでなければならない。自分だけ儲けようとすればいつか必ず破綻するものだ。
「儲かり次第、追加でお支払いします」
と約束をして、その代わり、その多くを倉庫にしばらく保管してもらうことにした。
今回、目に留まったのは、特殊効果付きの小さな魔法の杖だった。
光陰の杖 レア度:★★★★
魔法杖 MP:+10、攻撃力:+20、知力:+5、魔力:+20
特殊効果: HPが10以上の時、致死的攻撃を受けてもHPが1で耐える
その効果に、俺は息を呑んだ。これは例えばメチャクチャに潰されて死んでも生き返るという意味であり、まるでゲームのような特殊効果だ。この世界の不思議さを改めて実感する。
「これを使うと……一体どうなるんだろう……」
俺は杖を振りながら首をかしげる。しかし、試しに死ぬわけにもいかない。
でもきっといつか何かの役に立つかもしれないと、懐にそっとしまった。
「さて、誰に何をどう売って行こうか……? やっぱり強い人に持ってもらいたいよなぁ……」
夕日に照らされた街路を歩きながら、ユータの頭の中はこれからの壮大なプランでいっぱいだった。
◇
商材が揃い、ユータの武器商人としての日々が本格的に始まった。毎日、黙々と武器を研ぎ、整備し、売る。その単調な作業の中に、彼は確かな充実感を見出していた。
『すごい武器だ』
そんな噂が口コミで広がり、ユータの元には次々と購入希望者が訪れる。リストはあっという間に埋まり、まさに順風満帆の船出となった。
二ヶ月が経つ頃には、売った武器は百本を超えていた。それに比例するように、ユータの経験値もぐんぐんと増加していく。
ピロローン!
レベルアップの音が、ほぼ毎日のように頭の中に響く。気がつけば、一度も戦ったことがないのに、レベルは八十を超えていた。Aランクのベテラン冒険者クラス。まさにチートと呼ぶにふさわしい急成長だった。
「本当にこれ、意味があるのかな……」
俺は不思議に思いながら、試しに剣を振ってみた。すると、重くて大きな剣を、まるで軽い棒のように器用に扱えるではないか。
「す、すごい……。これって……ダンジョンでも無双できるんじゃ?」
俺は心臓の高鳴りを感じた。【商人】だから諦めていた冒険者への道。確かに同じレベルなら商人は弱いのだろう。でもレベルが倍もあれば例え剣士と言えど、商人の方が強いに違いない。そして一桁上だったら……? もはや誰も、勇者でさえも自分には勝てないだろう。
俺はグッとこぶしを握る。前代未聞の高レベル。そこに達した時の景色がどうなるのか楽しみでたまらなくなってくる。
すると、突然――――。
ピロローン! ピロローン! ピロローン!
頭の中に鮮やかな音が鳴り響く。
「キターーーー!!」
俺は思わずピョンと跳び、ガッツポーズを決めた。通りがかりの人々が不思議そうに振り返るが、そんなことどうでもいいくらい俺は喜びが爆発していた。
急いでステータスを確認すると、レベルが五に上がっている。予想通り、エドガーたちが倒した敵の経験値が、ユータにも分配され始めたのだ。
俺は勝手にレベルが上がる環境を手に入れたのだ。これでもう寝ててもレベルが勝手に上がっていく。それはまさにバグ技。禁断のチートだった。
今後さらに武器を売り広めていけば、経験値の蓄積速度は加速度的に上がっていくはずだ。
例えば、冒険者千人に武器を使ってもらえたら、家に居ながらにして普通の冒険者の千倍の速さで強くなっていく。そうなれば人族最強どころか、この世界の秩序さえも揺るがすほどの存在になってしまうかもしれない――――。
「『商人』が、この世界を揺るがす仙人のような存在に……」その考えに、俺は痛快な喜びを感じた。
確かに、これはチートでインチキかもしれない。しかし、孤児が異世界で生き抜くために、きれいごとを言っている場合ではないのだ。できることは何でもやる。それが前世で何もできず人生を無駄にしてしまった俺の反省の結論だった。
ガッツポーズを繰り返し、ピョンピョンと飛び跳ねながら道を歩く。いつもの石畳の道が、今日は特別に輝いて見えた。まるで栄光への道のように。
◇
「おぅ、いらっしゃい!」
朝の光が差し込む店先で、おじいさんはにこやかな笑顔でユータを迎えた。その温かな表情に、ユータは安心感を覚える。
倉庫の扉が開かれると、ユータの目の前に広がったのは、まさに宝の山だった。数千本もの武器が、まるで眠りについたように静かに並んでいる。
「うぉぉぉ! すごい!」
俺は思わず声を上げてしまった。
「何百年も前から代々続けてきたからね」
おじいさんは少し照れくさそうに説明する。
「でも、ほとんどが錆びついてしまってなぁ……」
「大丈夫です! 僕がちゃんと研ぎますんで!」
他人には単なる古い武器の山でも、俺の目には無限の可能性を秘めた宝の山に見えるのだ。
夕暮れまで黙々と鑑定を続けたユータは、★四つを二十本、★三つを百五十本も見つけ出した。
そんなにたくさん買いたいという俺の言葉に、おじいさんは驚いた様子だった。
「ほとんどがジャンク品だからね」
おじいさんは優しく微笑んだ。
「全部で金貨十枚でいいよ」
その言葉に、ユータは一瞬躊躇した。あまりにも安すぎる。商売というのはみんながハッピーでなければならない。自分だけ儲けようとすればいつか必ず破綻するものだ。
「儲かり次第、追加でお支払いします」
と約束をして、その代わり、その多くを倉庫にしばらく保管してもらうことにした。
今回、目に留まったのは、特殊効果付きの小さな魔法の杖だった。
光陰の杖 レア度:★★★★
魔法杖 MP:+10、攻撃力:+20、知力:+5、魔力:+20
特殊効果: HPが10以上の時、致死的攻撃を受けてもHPが1で耐える
その効果に、俺は息を呑んだ。これは例えばメチャクチャに潰されて死んでも生き返るという意味であり、まるでゲームのような特殊効果だ。この世界の不思議さを改めて実感する。
「これを使うと……一体どうなるんだろう……」
俺は杖を振りながら首をかしげる。しかし、試しに死ぬわけにもいかない。
でもきっといつか何かの役に立つかもしれないと、懐にそっとしまった。
「さて、誰に何をどう売って行こうか……? やっぱり強い人に持ってもらいたいよなぁ……」
夕日に照らされた街路を歩きながら、ユータの頭の中はこれからの壮大なプランでいっぱいだった。
◇
商材が揃い、ユータの武器商人としての日々が本格的に始まった。毎日、黙々と武器を研ぎ、整備し、売る。その単調な作業の中に、彼は確かな充実感を見出していた。
『すごい武器だ』
そんな噂が口コミで広がり、ユータの元には次々と購入希望者が訪れる。リストはあっという間に埋まり、まさに順風満帆の船出となった。
二ヶ月が経つ頃には、売った武器は百本を超えていた。それに比例するように、ユータの経験値もぐんぐんと増加していく。
ピロローン!
レベルアップの音が、ほぼ毎日のように頭の中に響く。気がつけば、一度も戦ったことがないのに、レベルは八十を超えていた。Aランクのベテラン冒険者クラス。まさにチートと呼ぶにふさわしい急成長だった。
「本当にこれ、意味があるのかな……」
俺は不思議に思いながら、試しに剣を振ってみた。すると、重くて大きな剣を、まるで軽い棒のように器用に扱えるではないか。
「す、すごい……。これって……ダンジョンでも無双できるんじゃ?」
俺は心臓の高鳴りを感じた。【商人】だから諦めていた冒険者への道。確かに同じレベルなら商人は弱いのだろう。でもレベルが倍もあれば例え剣士と言えど、商人の方が強いに違いない。そして一桁上だったら……? もはや誰も、勇者でさえも自分には勝てないだろう。
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