水と言霊と

みぃうめ

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第122話    異臭騒ぎ①

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 あっくんとの抱擁を終え
「そういえばさ、この部屋ってどこの部屋にもお風呂とかトイレとかついてるの?」
「あ、そうか。俺としーちゃんは部屋の中の確認せずに因子検査に行っちゃって、結局そのまま話し合ってばかりで何も見てないね。俺の部屋で良ければ見てみようか?」
「うん!」
 結果、トイレはあった。
 でもお風呂はなかった。
「お風呂ない!!
 どうすればいいの?
 やっとお風呂入れると思ってたのに!」
「へ?シャワーあったけど、しーちゃんは湯船に浸かりたいってこと?」
「シャワー!?
 どこにあったの??」
「え?トイレの隣にあったよ?」
 トイレの横にダッシュする!
「ねぇあっくん………まさかこれがシャワーなの?」
 そこには確かに二人くらい人が立てる狭いスペースがあった。てっきりクローゼットか何かと思って気にも留めなかったその狭いスペース。
 さっきは適当に見ていたけど…
 でも、これ本当にシャワーなの?
 ホースもなければシャワーヘッドも何もかもない。
 よく見れば壁にも天井にも5cmほどの黒い丸い物がついている。
「そうだよ。しーちゃんはこういうタイプのシャワー入ったことない?
 水を浴びるっていうより吹きかけられるような感じではあると思うけど、海外ではたまに見かけるよ。」
「知らなかった!!
 入ってみたい!」
「じゃあ一度香織さんの所へ戻って、男子と女子で部屋別れようか。
 男子はこっちに引き上げさせるからさ、香織さんの所で入っておいでよ。」
「そうする!カオリンとこ行こう!」


「カオリン!お風呂入りたい!」
 カオリンの部屋に着くなり開口一番目的を告げた。
「あらあら、じゃあ男性は出て行ってね。
 川端君の所へ連れて行ってちょうだい。」
「はい、そのつもりです。
 優汰、金谷さん、行くぞ。」
「えー!?めっちゃ急じゃんか!」
「いいから来い!
 それとも女性の入浴を覗くつもりか!?」
 金谷さんは静かに出て行った。
「ほら、金谷さんは出て行ったぞ。
 俺も出ていく。お前はここに残ればいいさ。
 覗き魔として女性にボコボコにされろ!」
「ちょっと待ってよ!
 出て行かないなんて言ってないだろ!?
 出てくよ!」
 そう言って優汰は慌てて出て行った。
「男どもは責任を持って部屋に待機させますので安心してください。」
「ふふっ、お願いね。」
 最後にあっくんが出て行った。

 私はウキウキしながら
「カオリン!入ってきてもいい?」
 と聞く。
「紫愛ちゃん、入るのはいいけど着替えはあるの?」
「着替えなんてまだできてないでしょ?」
「さすがに上の下着は出来ていないみたいだけれど、下はドロワーズみたいよ。Tシャツも届いているんじゃないかしら?」
「ドロワーズって何?」
「そうねぇ、薄手の短パンみたいな感じかしら?
 膝丈の物もあったわよ?」
「じゃ、短パン下に履いてその上に膝丈履く!」
「えっ…それはどうかと思うけど………
 上はTシャツ?」
「うん!上に長いの着たらわかんなくない?」
「Tシャツは比較的ぴったりサイズだと思うんだけど…」
「えっ!?大きめで作れって言ったのに!
 部屋で確認してくる!」

 そして自分の部屋に戻り、カオリンの言った通りドロワーズなる物を発見。Tシャツを身体にあてて…こんなもん着れるか!!と投げ捨てる!
 なんつーピチピチサイズ!
 身体のラインが丸わかり!
 嫌がらせか!!!

 どうする!?
 シャワーは浴びたい!
 でも服がない!
 カオリンも麗もは背は大きいけど身体は細身。
 多分サイズ的にはあんまり変わらない。
 借りても意味ない!!
 あっ!優汰のもらおう!

 あっくんの部屋に逆戻りする。
 コンコン
「あっくん!優汰呼んで!」
「しーちゃん!?どうしたの?」
「優汰呼んで!」
 あっくんの後ろから優汰がひょっこり顔を出し
「紫愛ちゃん!?俺何もしてないよ!?」
「優汰の部屋にTシャツ届いてるでしょ?
 それ一枚ちょうだい!」
「しーちゃん?それもらってどうするの?」
「どうするって、勿論着るんだよ!
 私に持ってこられたTシャツちっさくて着れないの!」
「そうなの!?じゃあ俺の部屋からTシャ「駄目だ!Tシャツが欲しいなら俺の持っていきなよ。いくらでもあげるから!」
「えっ!?あっくんのはいらない。大きすぎる。」
「シャワー浴びてからの着替えでしょ?
 ワンピースっぽくなるから楽になるよ?
 ね?俺のにして!」
「えーーー!おっきすぎて邪魔そうだからヤダ。」
「着てみないとわかんないよ?ね?
 はいこれ!!」
 そう言ってあっくんは私に自分のTシャツを押しつけて
「じゃあシャワーいってらっしゃい!」
 と言い、バタンっと扉が閉められた。

 優汰のサイズのやつが良かったのに!!
 ワンピースもいらないんだけど!!
 ……でも、ドロワーズ見えてたらカオリンに怒られそうだな。
 仕方ない、これでいいか…


 カオリンの部屋に戻り
「カオリン、着替え持ってきた!」
「おかえりなさい。Tシャツはどうだったの?」
「ピッチピチで着れないから優汰のを貰いに行ったらあっくんのを無理矢理渡された。」
「あら?あらあらまぁ。それは仕方ないわねぇ。
 でもそれならドロワーズは隠れそうで安心したわ。
 シャワー浴びてらっしゃい。」
「はーい!」

 裸になりシャワー室に入り、いざ!………
 水どうやって出すの?
 辺りをキョロキョロ。
 壁にボタンを発見!
 これかな?ボタンを押し込む。

 パシュンッ!!
 ………………………………は?

 水は出た。
 出たよ確かにね。
 でもさぁ、凄い勢いで一瞬出て終わりって何よ!!
 壊れてんのか!?
 私のイメージでは上からも横からも水がシャーーっと出るもんだと思ってたよ!!!

 まぁ、いい。クレームは後だ。
 とりあえず身体は濡れた。
 身体を洗おう。
 足元には固形石鹸が三種類。
 青、薄い青、クリーム色。
 とりあえず全部少しずつ泡立ててみよう。
 青を手に取り泡立てる。
 ほとんど泡立たない。
 ほんの少しの泡も真っ青。しかも変なクサい臭いがする。
 却下!洗い流そうとするけど
 水ないじゃん!
 ボタンを何回も押し、やっと手の泡が流れたけど…洗い流したはずの手がほんのり青く染まっている。
 なんじゃこりゃ!!
 こんなもんで身体洗えるわけないだろ!
 薄い青を手に取り、まずは匂いを嗅ぐ。
 クサい!!
 泡立てるのもやめ!!
 残るのはクリーム色のみ。
 恐る恐る手に取り匂いを嗅ぐ。
 これもクサいじゃん!!!
 シャワー室の中でキョロキョロするけど、他には何もない。
 待って!待ってよ!!
 シャンプーは?コンディショナーは?
 まさかこのクサい固形石鹸で洗えと?
 絶対無理!!!
 でも身体は…仕方ない、今はこれで我慢して洗おう。
 これもほとんど泡立たない。
 でも汗もかいたし水で流すだけは無理だ。
 我慢して腕に石鹸を塗り付ける。
 だって泡立たないんだもん!
 腕についた石鹸を手で身体に伸ばしてすぐさま洗い流す。
 くっっっさーーーい!


 ねぇ、まさか、これ……石鹸使った方が身体が臭くなるんじゃないの?
 わざわざ風呂入って臭くするって何よっ!!


 髪の毛は諦め、さっさとシャワー室から出る。
 気分は最低。
 タオルでワシャワシャ髪を拭き着替えてカオリンの元へ!
「カオリーン!
 私臭くなっちゃったよぉ!!」
 もう嫌だ!!!
 味覚障害の私は、味覚で感じられない代わりに嗅覚がかなり鋭い。
 匂いが弱点と言っても過言ではないほどだ。
「あらまぁ、どうしたの?」
「石鹸がめっちゃ臭かったの!青い石鹸は身体が青くなったから使えないし!
 それにシャンプーもなかったの!」
「紫愛ちゃん、ちょっとこっちに来て。」
 近づきたくなかったけど、渋々カオリンに近づくと匂いを嗅がれた。
「うん、石鹸の油の匂いね。
 そこのドレッサーの上に香油があるわ。
 それにはそれぞれ匂いがついているから、それを使ったらどう?」
 カオリンに言われ、ドレッサーの上の香油の瓶を開けて匂いを嗅ぐ。
「くっっっさーーーい!!」
 激臭!!!強烈な臭い!
 臭いが強過ぎて最早悪臭だ。
 香油は四本。残りはあと三本。
 もしかしたらマシなやつがあるかもと全て匂いを嗅ぐけれど、撃沈しただけだった。
 全部が強烈な臭さ!!!
 しかも私のせいで部屋の中は悪臭の海。
 吐き気がしてきて
「くさーーーい!!!」
 と叫びながら部屋から飛び出た。
















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