水と言霊と

みぃうめ

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第176話    遺伝子とは①

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 外に出てくれていたあっくん達を呼び戻す。
 全員がまた部屋に集まる。
「待たせてごめんね。」
「いいや、俺達は俺達で土について再考してたから大丈夫だよ。」
「あのね、わかったことと、わからなくなったことがあるの。みんなにもそれを聞いて考えを教えてほしい。
 まず確認なんだけど、あっくんはアルビノが遺伝子異常だって言ってたよね?」
「うん。アルビノは遺伝子の異常だ。」
「ここに来て目の色が変わって視力も劇的に良くなったから、絢音のアルビノは治ったと思ってたんだけど…治ってない可能性が出てきたの。」
「え?それはどうして?
 実際絢音は普通に見えてるみたいだけど…」
「麗もね、病気を持ってたの。」
「「「は?」」」
「麗の病気はターナー症候群って言って、第二次性徴期がこない病気で、その見た目の特徴が低身長でポッチャリなの。
 でも麗見てわかると思うけど、細身の身体に普通くらいの身長になってる。
 身長は麗本人はあんまり変わってるって思ってなかったみたいなんだけど、地球では140cmしかなくて、体系の変化の自覚はあったみたい。
 でも、女の子特有の丸みのある体型をしてないし、生理は変わらずきてない。
 で、カオリンが、ただの病気なら治ったのかもしれないけど、遺伝子の異常の先天性の病気は遺伝子をイジらないと根本的には治らないんじゃないか。でも遺伝子をイジると全くの別の人になっちゃうからイジれない。
 この世界に身体を馴染ませる時に何が原因で死んじゃうかわからないから、マイナス部分の悪い所を平均値まで補填したんじゃないかって仮説を立ててくれて…」
「何でこの短時間でそんなに話がぶっ飛んでるの!?
 情報量が多過ぎるよ!

 とりあえず麗は体調不良はないか?」
「ない。大丈夫。」
「それならとりあえずは安心だな。
 で?何だったか…
 先天性の病気は治らない、か。
 香織さんの仮説を聞いたら納得だな。
 遺伝子弄って別人になられたら、そもそもここに呼んだ意味がなくなる。
 下手すりゃ記憶も何もない廃人が出来上がる可能性もあるからな。
 ……でもそれなら、絢音が見えるようになったのはおかしくないか?」
「私も思ったんだけど…」
「私の仮説では、盲目だったのなら見えるようにはなっていなかったと思うのよ。
 でも弱視だっただけなら、弱視の原因はとりあえず置いておいて、することは補填だけ。
 麗ちゃんの身長も、小さかっただけなら補填するだけ。
 でも生理は実際きていない。
 元々ないモノは補填しようがない。
 だから、絢音君もメラニン色素が全くなかったわけではないと思うのよ。実際目の色は変わっているんだし。
 ただね………紫愛ちゃんと川端君だけが若返った理由がわからないのよ。」

 あっ!!!
 忘れてた!
 完璧に忘れてたよ!
 病気のことばっかりに囚われてた!

「………もしかして、ですけど……
 魔力量が関係してるんじゃないですか?」
「どういうことかしら?」
「俺としーちゃんはみんなに比べてもズバ抜けて魔力量が多いと皇帝にも言われるくらいでした。ラルフにも、この国一番の魔力量だった皇帝が俺と比べると赤子のようだと言われたこともあります。
 対して絢音は?
 他の地球人と比べても漏れ出る魔力量はかなり少ない。
 俺としーちゃんは本当はもっと魔力量が高かったけれど、それを馴染ませることができずに若返りとして作用されたんだとしたら?
 絢音は魔力量が少なくて、逆に足りない魔力量を細胞なりなんなりの生命力で補っていたんだとしたら?」
「そんなっ!!!私の余った魔力なんて絢音に使ってくれれば良かったのに!私は若返りなんて望んでない!!!」
「紫愛ちゃん、仮説なのよ。
 本当にそうかは誰にもわからないわ。」

 そうだった…誰にも正解なんてわからない。

「俺の仮説ですが、地球人全員が気がついていないだけで、少しずつ若返ったり歳をとってたりはするんだと思います。
 しーちゃんが気付いた目覚めの時間の比例。
 一番初めに目覚めたのはシューさんだと言ってましたよね?シューさんが基準なのでは?
 シューさんは若返りに固執していた。
 自分が少しでも若返ったと感じていたなら歓喜していたはず。逆に歳をとったと感じたなら発狂していたでしょう。
 でもそれはなかった。
 変化を感じていないからです。」
「それはその通りだわ…
 彼は異常とも言えるほど寿命に固執していた。そんな彼が自身の変化に気が付かないはずがないわね。」
「香織さんは麗の前に目覚めたんですよね?
 何か変化は感じていますか?」
「何も感じていないわ。」
「じゃあ麗の辺りから実感するほどの変化を感じるようになったってことですよね?
 二、三歳くらいの変化ならわからなくて当然ですから。」
「魔力量の説はかなり納得できる答えだわ。
 それなら遅く目覚めた順に若返るか老いるかの差がどちらに開くかの説明もつく。」
 ほとんどあっくんとカオリンのやり取りだったけど
「病気に寿命が使われた可能性はないの?」
 と、金谷さんが質問してきた。
「確かにそれも考えられるかもしれないわ。
 でも、病気が治っていないと仮定するなら、麗ちゃんと絢音君にここまで老いに差が出ることがおかしいと思うの。
 病気が治っていれば、その症状と程度に合わせて差が出るのはわかるわ。」

 そっか…治っていれば差が出るのはわかるよね。
 だとすると、私の原因不明の病気も治っているなら老いているはず。余りある魔力量で相殺したとしても、ここまで若返るものだろうか…
 やっぱり治っていない可能性のが断然高い。

「金谷さん、私は病気は治ってないと思う。」
「なんで?」
「カオリンが病気が治ってるなら差が出るのもわかるって考えが間違ってないと思うから。

 魔力量にどれだけ差があろうが、地球人はみんな平均して魔力量は高いはず。
 もし病気が治ってるなら、余りある魔力量で老いをどれだけカバーできるかわかんないけど、私は老いずにかなり若返っている。
 いくらなんでも私だけこんなに若返るのはおかしくない?」
「しーちゃん!!!???」
「まさか紫愛ちゃんも何か病気があるの!?」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ!!!!」
「聞いてないわ!」
「ちょっと体調崩しやすいってだけなんだけどね。」
「「ちょっとってどれくらい!?」」
「ん~若い時は結構頻発してて、それが歳をとる毎に病状も期間も少しずつ減っていく感じ。
 だから大人になってからはそれほど酷いことはなかったよ。」
 あっくんは呆然としている。
「それは何の病気なの?」
「わからない。原因は不明。
 私の父親もそうだったって弟子から聞いたことあったの。
 だから遺伝性の病気かなって片っ端から調べたりしてた。
 結果はやっぱり分からず仕舞いだったけどね。」
「今は!?こっちに来てから体調不良とか変わったことはないの!!??」
「それはないよ。
 大人になってからは入院したことないから大丈夫。」
「そうかもしれないけど!
 身体が若返っちゃってるんだからどうなるかわからないでしょ!?
 何か少しでも変化感じたらすぐ言って!」
「でもこっちに来てから体調崩したことないよ?」
「しーちゃんは人の心配ばかりして自分に頓着がなさすぎる!!
 もう少し自分を大切にしてよ!」














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