水と言霊と

みぃうめ

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第175話    side金谷 土の定義

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 いつものように香織さんの部屋で魔力制御をしていると、部屋を訪ねてきた川端さんの態度の悪さに麗がキレた。
 
 いつも一緒にいる俺には、麗が香織さんを母親のように慕っているのはすぐにわかった。
 香織さんは干渉の一切をしてこず、間違ったことをしても怒ることもない。麗が悪態をついても優しく宥める。宥められた後ほっとする表情も見ている。
 慕っている香織さんへの態度の悪さに我慢できなかったんだろう。

 麗の気持ちはわかる。
 でも、川端さんの苛立ちも俺にはわかる。
 好きな異性が居たことのない俺には恋心というものはわからないけど、人を慕う気持ちならわかる。
 命をかけて守ると覚悟を決めた存在が、自分以外の異性とあれだけ親しくしているのを目の当たりにしては…盗られた気分になるだろう。
 麗だって紫愛に嫉妬しているはずだ。
 香織さんと親しげに話す紫愛にあまり良い感情を向けていない。
 無意識なのかはわからないけど、麗はすぐ表情に出るからわかりやすすぎる。
 こういうわかりやすい人間が一番利用されやすい。

 喧嘩がヒートアップするかと思いきや、なんと麗は川端さんの気持ちに気がついていなかった。
 あんなにわかりやすいのに何でわからないんだ?
 此方を向くから頷いてやる。
 そこからは一方的に川端さんを責める。
 香織さんが言ってた通り、川端さんは頑張ってるだろ?そんな頑張ってる川端さんに頼りきってるのは俺達だ。流石に言い過ぎなんじゃないの?

 そんな時、紫愛が部屋に入ってきた。
 紫愛はずっと何が何だかわかっていない。
 麗は感情が爆発しすぎて泣き出す。
 川端さんはイラつきを抑えて美青年君と恋人なんじゃないかと聞く。紫愛は恋人なんかじゃないと否定しだす。
 この場はカオス。
 面白くなってきた。
 ニヤつきが抑えられない。

 いきなり紫愛が部屋から出て行き美青年君を連れて戻ってきて、本当は意思疎通ができて、なんと子供だと言い出した。
 驚いたけど、それなら納得。
 恋人に見えたそれらは全部子供への態度。
 突然紫愛が母親に見えた。

 絢音君は香織さんからの質問に色が見えると言い出した。
 どうやら見えている色は因子の色らしい。
 俺は黄色だと言われた。
 川端さんに、黄色なら土因子だと言われた。

 俺は土なのか…
 土で何ができるんだ?
 土なんて興味もない。
 当然知識もない。
 土でみんなを守るイメージがまるでわかなかった。
 火や風ならまだイメージできるのに!
 俺は魔法でも役立たずなのか…?

 そんな時、紫愛が優汰に土魔法で何ができそうかを問いかけた。
 優汰はタオルを土まみれにしてから土に変えた。
 この場の全員が訳がわからない。
 何でタオルが土になるんだ??
 優汰が土とは何ぞやと説明しだした。
 その説明はわかるようでわからないものだった。
 結果的に何でタオルが一瞬で土に変化したのかは謎のまま。
 優汰は砂も泥も単体では土じゃないと言うけど、俺にとっては砂も泥も土も全部土にしか思えなかった。

 そのまま麗が男だと勘違いされているというとんでもない話が発覚した。
 普通に可愛いのに何で男?
 まぁ言われてみれば確かに胸はないけど…
 どう見たって女の子でしょ?
 こっちの世界の奴等なんて所詮宇宙人なんだからわかんなくて当然か。
 話はどんどん進んで、カップはどうだとか話し始めた。
 胸の大きさの話だって俺達聞いてて良いのか不安になったのに、話を中断する様子もないし麗も平然としている。
 川端さんが出ていくと言ってくれて助かった。
 流れに乗ってさっさと外に出て一息つく。


 川端さんが出て来たところで、優汰に聞きたかったことを聞く。
 川端さんだって土の因子持ち。
 さっきの優汰の土を生み出すそれを見て驚いてたし、優汰の話も理解はできても納得はしていなかった。多分俺と同じ認識だろうな。他人からの意見や情報は多い方が絶対良い。
 足手纏いなんて絶対ごめんだ!
 土魔法をモノにしなければ!

「優汰、砂と泥の違いって何?」
「金谷さんさっきの俺の話聞いてなかったのぉ?
 砂と泥は粒子が違うだけ!」
「じゃあ元は何?」
「そりゃあ岩だよ!岩!
 それが風だったり波だったり水の流れだったりで削られてくの。
 シーグラスって知らない?
 海に落ちてる元はガラスの破片だったやつ。
 ガラス片って割れてすぐは素手で触るのも躊躇うくらい鋭くて危ないじゃん?
 でもシーグラスはさ、波に揉まれて石とか砂利とかとぶつかり合って角が取れて丸っこくなってるでしょ?
 あれと一緒。
 川とかにある石も丸っこいでしょ?
 岩が削り取られてった細かい方が砂と泥。」
「元は岩なら砂も泥も一緒ってこと?」
「違うよ!それは砂!と、泥!でしょ!」
「それは一緒。」
「違うよ!」
「何が違うの?同じ岩からできたなら一緒。」
「だからぁ!
 粒の大きさが違うんだってば!」
「粒の大きさはどれくらい違う?」
「大きさなんて知らないよ!」
 知らないのかよ!!!
 どれくらい違うんだ?
「砂浜にあるじゃん。砂!
 砂浜って言うくらいなんだからさぁ!
 そこにあるくらいのが砂だよ!
 泥はぁー……水に溶けたように見えるくらい細かいやつ!」
 優汰って馬鹿を演じてるだけかと思ってたけど、実は本物の馬鹿なの?
 なんだよそのざっくりした説明。
 説明になってないし!!
「優汰がさっき言ってた。
 土は砂と泥と微生物と腐植だって。
 合ってる?」
「合ってる合ってる!」
「じゃあ砂も泥も土でしょ?」
「だからぁ!砂は砂!泥は泥なの!
 単品じゃ土とは呼べないの!」
「なんでだよ!砂も泥も土の中に混じってんなら土に決まってる!」
「混ざり合わないと土とは言えないの!」

 話が通じない。
 腹が立ってきた。
 ロビーにあるみんなでご飯食べてる椅子が目に入る。椅子を掴んで引っ張り出す。

「じゃあこれは?土なの?」
「それは椅子!」
「元は木だろ?」
「だからさぁ!それもさっき言ったじゃん!
 椅子とか机だと土にしちゃったら怒られそうだからしなかったんだってば!」
「じゃあ土になるんだな?」
「なるよ!」

 じゃあこれも土だ。
 次に目についたのは机の上にいつも置いてある燭台。燭台を掴み

「じゃあこれは?」
「それは無理!」
「なんでだよ!」
「それは金属なの!何の金属かわかんないのに判断なんて無理!
 大きな括りで言えば金属は土には還らないの!」
「じゃあこれを砂や泥みたいにサラッサラの小さい粒にしたら?土の中に砂鉄とか金属は何も含まれてないの?」
「含まれてる!」

 なんだ。
 じゃあこれも土じゃないか。

「じゃあ優汰が土にならないと思うのは?
 プラスチックとか?」
「プラスチックも土に還るよ。
 長い年月がかかるだけ。
 金属も錆びる物は土に還る。
 埋めただけでは土に還らないのは陶器やガラスや発泡スチロール。」
 意外な答えが返ってきた。
 知らない情報だった。
 ここにプラスチックも発泡スチロールもあるとは思えないけど。

「わかった。
 川端さんは?優汰に何か聞きたいことある?」
「いや、金谷さんが大体聞いてくれた。」

 じゃあとりあえずいいか……



 全部土なのに、何故優汰はわざわざ一度分解して土に還すんだ?
 さっき自分でその土で野菜育てるわけじゃないって言ってたのに、そんな工程挟む必要ないだろ?
 態々わざわざ手間を増やしてどうするんだ?
 狙われる時は隙がある時だろ?
 工程増やして自ら隙を増やすのは馬鹿だろ?
 ……そうだ、優汰は馬鹿だった。



 俺なりの土とは何かの結論に至り
 満足していたら紫愛に部屋に呼ばれた
















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